11話 GW、遊ぶぞっ!③
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「ふっふへへへっ……」
「……何か今日の月菜、怖い」
その日の深夜、エヴァに呼び出しを受けた月菜はいつもの公園に集合していた。
集合してからも不思議な笑いをしている月菜に陽菜はドン引きしていた。
「……何か良い事があったのでしょうね。はいっ! 月菜さん。そろそろ現実に戻ってください!」
エヴァは月菜の目の前でパンと手を叩く。
「はっ!! 今、お兄ちゃんとアズマアイランドの入り口に居たはずなのに!?」
「アズマアイランド? エヴァ、何それ?」
「えーと確か、クラスの方から聞いた情報によると最近出来た遊園地みたいですね」
「遊園地? それ楽しいの?」
「えっ、陽菜、遊園地行った事ないの?」
月菜は驚いた表紙で陽菜を見た。
「うん、行った事ない」
「……あー、この話は後でしましょう。月菜さんが明日用事があるのでしたら、手短に話をしましょうか」
エヴァは話を割り込むようにして本題に入った。
「最近、よからぬ情報を学院から報告がありました。どうやらこの町に私たちと同じ目的でニブラを討伐している魔術師の方がいるみたいです」
「え、それは良い事なんじゃ……?」
月菜が素直に首をかしげると、エヴァはかすかに表情を曇らせた。
「いえ。問題は“誰が”その魔術師なのか、です。学院所属なのか、独立系なのか……あるいは、もっと厄介な――」
「……面倒な連中ってこと?」
陽菜の問いに、エヴァは静かに頷く。
「はい。味方ならいいのですが、同業者が増えるということは、私たちの行動が読まれる可能性も増える、ということです。それに――ニブラの動きも最近は少し不自然で」
「不自然?」
「……強くなってる、ってこと?」
「的確ですね、陽菜さん。はい。過去の型とは違う動きをする個体が出てきているという報告が学院で増えているんです」
月菜の心臓が、わずかに跳ねた。
「……そんなやつ、今日みたいに普通に出てきたりするの?」
「可能性はあります。とはいえ――今夜は反応なしです。ただ、明日からの連休、人が増えるのでニブラの出現率も上がるでしょう」
「……やだなぁ、せっかくのお休みなのに」
「だからこそ警戒が必要です。月菜さんは明日お兄さんと出かけるんでしょう? 事件に巻き込まれてはいけません」
その瞬間、月菜の顔が引き締まった。
「だ、大丈夫! お兄ちゃんに変なの近づけないよう、ちゃんと気をつける!」
「そこが少し心配なんですが……まぁ、月菜さんの家の付近はこちらも定期的に監視を回します」
「監視って……なんか恥ずかしい……!」
「安全第一です」
エヴァは冷静な声で言い切る。
「とにかく――見知らぬ魔術師に近づかないこと。向こうから話しかけられても返事をしない。ニブラの気配を感じても、一人で突っ走らない」
まるで不審者に気をつけるような言いようである。
「……ちゃんと守るよ。明日は絶対に台無しにしたくないもん」
月菜はぎゅっと胸の前で拳を握った。
「よろしい。では、今日のところは解散としましょう」
「え、終わり?」
「はい。月菜さん、明日寝坊すると遊園地を満喫できませんよ?」
「うっ……そ、それはダメ!! 帰る! すぐ帰る!」
「走ると転ぶよ?」
「転ばないもん!!」
ズテッ。
「……転んだね」
「い、今のはっ……地面が悪いんだよ!!」
陽菜は呆れ顔、エヴァは苦笑してため息をつく。
「……本当に大丈夫でしょうか」
「大丈夫だよエヴァ。月菜って、なんだかんだ強いし」
「身体が強くてもですね……色入れ空回りしないかが心配という話なんですが……」
二人の心配をよそに、月菜は若干膝を押さえながらも走り出す。
「明日は……ぜったい、楽しむんだからぁぁあ!!」
夜の公園に、元気だけは誰にも負けない叫びが響いた。
本当に――明日が、何事もなく過ぎてくれればいいのだが……




