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妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優
4月

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10話 魔法少女になった日⑫




「ん? あれ?」


 朝日が差し込む頃にタクローは目を覚ました。


「あっ、お兄ちゃん、おはよう!」


 タクローのもとには月菜が微笑んでいた。


「てか、何で俺、ソファで寝てるんだ?」


「きっと疲れてたんだよ。お兄ちゃん家事とかいつも頑張ってるから。たまには私が料理を作ろうか?」


「いや、大丈夫だ。問題ない」


 タクローとしては月菜が料理をした方が仕事が増えるのである。


「あ、それよりも今日はクリスマスイブだよ! サンタさんは来るかなぁ?」


「……月菜、サンタは……」


 サンタさんは存在しない。

 と口に出そうとしたが、止めておいた。


(ま、いずれはサンタがいないことぐらい分かるだろうな)


「よし、今日は終業式だ。これが終われば冬休みだぞ。明日は父さんが久しぶり帰ってくるみたいだし、母さんも休みみたいだぞ。なんか美味いものでも食べような」


「うん、楽しみ!」


 兄妹、仲睦まじく。

 タクローは朝食の用意を始めた。






―――――





「月菜さん、よく来てくれましたね」


 終業式も終わり、月菜が足早に訪れたのはエヴァ、陽菜宅であった。


「昨日の疲れは残ってない?」


「うん、大丈夫だよ。陽菜ちゃん」


「陽菜でいい。それよりも……」


 月菜がここを訪れた理由。

 それはーー


「月菜さん、巻き込んでなんですが今後の事について話したいと思います」


 エヴァは真剣な表情で月菜を見つめた。


「選択肢は2つあります。1つは昨日の事を忘れていつもの日常に戻る事です」


「も、戻れるの?」


「はい、記憶を操作する魔術で昨日の出来事を改竄します」


「でも、ニブラっていうのがまた襲ってくるんじゃ……」


「そこは学院の先生に連絡して月菜さんを陰ながら護衛させてもらいます。勿論、危害を加えるつもりはありません」


「じゃあ、もう一つは?」


「……このまま魔術師見習いとして私たちに協力してもらう事です」


「つまり、私、魔法使いになるって事?」


「いえ、魔法は魔術の最奥。魔法使いと呼ばれる人は世界に5人だけです」


「つまり、月菜は私と同じ魔術師見習いになるって事」


(陽菜ちゃん、まだ見習いだったんだ……)


「魔術師見習いになるとしたら陽菜ちゃんと同じく私の弟子となってもらいます。大丈夫です、これでも私結構凄いんですよ!」


「エヴァ、セールス下手……でも、エヴァの実力は本物だよ」


 陽菜は呆れた表情をしていた。


「どちらを選ぶのも月菜さんの自由です。どちらにします?」


「え、えーっと……」


(今なら普通の日常に戻れるチャンスだよね。あんな怖い思いをしなくて済む。でもーー)


 月菜の頭に浮かんだのは昨日の光景。

 ニブラに襲われ、重症を負ったタクローの姿だった。


「私…魔術師見習いになる!」


「え、本当ですか!? 自分で言っておいてなんですが、日常に戻っても良いのですよ?」


「今、日常に戻ってもまたお兄ちゃんを巻き込んじゃうかもしれない。それだけは嫌っ!!」


「月菜……」


「……そうですか。月菜さんがそこまで言うのなら、私も覚悟を決めないといけませんね」


 エヴァは真剣な表情のまま、そっと微笑んだ。


「ようこそ、月菜。今日からあなたも“見習い仲間”だよ」


 陽菜が満足げに頷き、月菜の手を軽く握る。


「で、でも、私……昨日みたいに怖いのは、やっぱり怖いよ……?」


「それは当然だよ。慣れろなんて言わない。私だってまだ怖い」


 陽菜が胸に手を当て、ふっと息を吐く。


「だから、私たちがついているから、月菜をひとりにさせない」


「陽菜……」


「月菜さん」


 エヴァは立ち上がり、棚の奥から小さな木箱を取り出した。


「これは見習い証と、最低限の魔術道具です。今日から正式にあなたを私の弟子として登録します」


 箱を開けると、昨日反応した淡い光を帯びた月のペンダントが入っていた。


「これ……昨日の……」


「あなたと共鳴した魔具です。持ち主が決まらないまま保管されていたものですが、どうやらあなたを選んだようです」


 月菜はそっとペンダントを指先でつまむ。

 優しい光がきらりと揺れた。


「……ありがとう。大事にするね」


「ただし」


 エヴァは急に真剣な顔つきに戻る。


「見習いになるという事は、危険と隣り合わせです。昨日のような事がまた起きるかもしれません」


「うん。それでも……お兄ちゃんを守りたいから」


「……強い子ですね」


 エヴァの声は、ほんの少し震えていた。


「では、見習い登録の手続きをしましょう。陽菜ちゃん、書類を」


「月菜、はいこれ」


 陽菜が黒いフォルダを手渡す。中には学院提出用の用紙が入っていた。


「名前を書いて、この下にサイン。それで正式に登録になるよ」


「え、こんなのでいいの?」


「まだ書類社会なんだよ、魔術界って」


「へぇ……そうなんだ……」


 月菜がペンを動かすと、ペンダントがぽうっと明るく揺れた。


「……っ!」


「問題ないですよ。これは『師弟関係の契約が確定した』ってサインみたいなものですから」


「あ、びっくりした……」


「よし、これで月菜さんは正式に私の弟子……」


 エヴァは胸に手を当て、優しく息をついた。


「改めて、よろしくお願いします。では月菜さん。今日の夜から訓練も始めますけど、まずは簡単なことから始めます。昨日みたいな戦闘にはならないので安心してください」


「う、うん……よかった……」


 月菜は胸を撫で下ろし、ペンダントを握りしめた。


(お兄ちゃんを守るために……頑張る……!)


 こうして月菜は魔術師見習い(魔法少女)へと進むのである。


 余談だが、月菜のうっかりですぐにタクローに魔法少女になった事がバレるのだが、それは少し先の話である。




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