9話 オカ研と日文研⑤
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「むむ、俺のセ○クスセンスが昨日、タクローが月菜のお着替えシーンを見たって感じた」
「それシックスセンスな」
なんで感じるんだよ。
怖いよ、お前……。
「いやぁ〜、昨日の夜さ。急に寒気がしてさ。『あ、タクローがまた月菜ちゃん関係で死にかけてる』って思ったんだよね〜」
「またを付けるな。死にかけてるも外せ」
「でも当たってたんでしょ?」
「……まぁ、否定できねぇけど……!」
オカルト研究部の部室。
俺は朝からショージの容赦ない口撃を受けていた。
ちなみにミアは隣で紅茶飲みながら話を聞いていた。
「……えっと……タクロー。昨日……なにがあったのよ?」
「言うなショージ!! 絶対言うなよ!!?」
必死に止める俺。
だが、ショージは──
にっこり笑った。
「――タクローが月菜ちゃんの下着を二回見たらしい」
「お前ぇぇぇぇぇぇえええええ!!!!!!?」
部室の机を叩いて立ち上がる俺。
ミアは「えっ!?えっ!?」と紅茶をこぼしそうになって慌てている。
というかお前のシックスセンスすげぇな!?
「た、タクローっ……!? それ、え、え、え……犯罪……?」
「違うから!!? 完全に事故だから!!?」
必死で否定する俺。
ショージは妙に落ち着いた口調で続けた。
「いやミア、これは事故であり事件であり事故なんだよ」
「同じこと二回言ってんだよお前!!」
「しかもねぇ……同日に二回というのが非常にポイント高い」
「高くねぇよ!!? 減点対象だよ!!?」
俺は頭を抱える。
ミアは顔を真っ赤にしながら、なんとか理解しようとしていた。
「で、でも……二回とも不可抗力だったんだよね……? でないと……でも、そんな……」
「なんで俺がでもタクローならやりかねない枠みたいになってんだよ」
「いや〜、タクロー、貞操観念ゆるいから」
「ゆるくねぇよ!! お前より堅いわ!!」
いつも通りの地獄の言い合いが始まったところで――
ガチャ。
「むー? なんか賑やかだと思ったら……」
名前が覚えづらいで有名な部長が部室に入ってきた。
「で? 今度は何のバカ話だタクロー。説明してみろ」
「いや部長よ、これはほんとにバカ話なんで説明したくねーよ……」
「よし、事情を聞こう。タクロー、前へ出ろ」
「なんで軍法会議みたいになるんだよ!?」
ショージが得意げに口を開く。
「昨日、妹さんの着替えを――」
「お前言ったらぶっ飛ばすぞ!!!?」
ガシィッ!
俺はショージの口を無理やり手でふさいだ。
「んむっ!? んんむー!!?」
「喋らせるかァ!! もう十分拡散されたわ!!」
だが部長は腕を組んで言った。
「……なるほど」
「いや、まだ何も話してねぇだろ!?」
「お前が止めるということは、本当に見たんだな?」
「推理能力高すぎんだよ!!?」
「ふむ……タクローの妹は美少女だと聞く。なら――」
部長は咳払いし、真面目な顔で言った。
「この件は慎重に扱わねばならん」
「いやなんでそんな重要案件扱いなんだよ!?」
「タクロー……妹を泣かせたのか?」
「違うっ!! 泣いたけど違う!!」
「どっちなのだ?」
「事故だよ!!!」
「なるほど、それで妹さんの下着姿はどうだったのだ?」
「んなもん、言えるかぁっ!!」
だが、そこで――
コン……コン……
「?」
俺たちが振り返ると、窓の外に――
月菜・陽菜ちゃん・田中さんの三人がへばりついていた。
「…………えっ」
「…………見てた……?」
「…………見てたわね……?」
三人の顔、特に月菜の顔はとても怖かった。
「お兄ちゃん……?」
月菜の声が低い。
俺は冷や汗を流しながらゆっくり振り向いた。
「……あの……月菜さん?」
「なんでオカ研でそんな話になってるのかな?」
「いや俺のせいじゃねぇよ!? 主にショージ!!」
「ショージさん……?」
にこっ、と笑った月菜。
その背後に黒いオーラが見えるのは気のせいじゃない。
「話があるんだけど?」
「やめてェェェェェェ!!??」




