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妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優


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9話 オカ研と日文研③







―――――





「…………」


「…………」


 これはフィクションなのだろうか?


 現場は風呂場。


 よくあるシチュエーションとして風呂場の扉を開いたら女の子が居たってのがよくあるとは思うのだが、今まさにその光景が俺の前に広がっていた。


「お、お兄……ちゃん?」


 そう、我が妹京田月菜が白のブラに手をかけていた。


「……とりあえず……警察署行って自首してくるわ」


「それはダメェ!!」












――――――




 遡る事数時間前。

 オカ研の盗聴を終えた三人は帰路に着こうとしていたのだが……


「……っ、ニブラの気配っ!!」


 エヴァがニブラの気配を探知したのである。


「エヴァさんっ!」


「二人とも、行きますよ」


「はいっ!」


「分かった」


 月菜と陽菜はペンダントを空に掲げて、エヴァは一枚のカードを取り出した。


「「シャイニーパワー・オンっ!!」」


「……セット」


 三人は光り輝き、魔法少女の姿……厳密に言えば魔装姿になった。


「そういえば何でエヴァさんは変身する時の掛け声が私たちと違うんですか?」


「……まぁ、色々あるのですよ」


 魔法少女事情は難しいらしい。


「無駄話してないで行くよ」


 陽菜は二人を置いてニブラの元へ飛んでいった。


「あ、待ってください!」


「陽菜、先に行かないでよー!」


 二人も陽菜の後を追っていった。








―――――




「居たっ、ニブラ」


 陽菜は黒い人の様な姿をしたニブラを発見した。


「陽菜、早いよ。もっと私たちに合わせてよ〜」


「そうですよ。師である私を置いていってはいけません!」



 学校から少し離れた商店街の裏路地。

 闇の裂け目のような影が地面に渦巻いている。


 月菜が息を呑む。


「あれ……ニブラの瘴核が露出してる……!」


「厄介ですね。活性化しています」


 エヴァの言葉と同時、黒い影が形を変える。

 蠢く四脚獣のような影――ニブラ。


「来るよっ!」


 陽菜が前に出た瞬間、影の触手が一気に三方向へと伸びる。


 エヴァはカードを払って前へ。


「《バリア・カレイド》!」


 七色の膜が触手をはじき返す。


「月菜ちゃん! 今です!」


「はいっ! 《クレセント・レイ》!」


 月菜の月の弦のような鋭い光線

 しかしグリムレイスは怯んだ様子を見せず、一気に陽菜へ跳びかかった。


「なめないで!」


 陽菜の蹴りが、獣の顎を吹き飛ばす。


 影が崩れたその中心――青白い“核”が見えた。


「瘴核が露出しています……! 今!」


「私がいく!」


 陽菜がジャンプ、剣を高く構え……


「《ブレイジング・レイ!》」


 灼炎の直線斬撃が瘴核を粉砕した。


 影は悲鳴を上げ、煙となって消える。


 静寂。


「……おつかれ様です。二人とも」


 陽菜が肩で息をしながら振り返る。


「陽菜ちゃん、危なかったです……!」


「でもカッコ良かったよ!」


 二人が陽菜に抱きつき、陽菜は照れくさく目をそらす。


「……まぁね。うん、今回はわたしの勝ちかな」


「何の勝負ですか」


「え? なんとなく」


 いつも通りのやり取りに、エヴァはほっとしたように息をつく。


(……しかし、今夜の活性化は異常。瘴核が露出した状態で出現するなど……嫌な兆候ですね)


「エヴァさん? どうかしました?」


「……いえ、帰りましょう。タクローさんに心配されるますよ」


「うっ……それは……お兄ちゃん、バレたら大変……!」


 三人は光に包まれ、変身を解いた。


 そして――。


 それぞれが自宅へ帰る頃には、すっかり日が沈んでいた。






―――――




「ふぅ、汗かいちゃった。早くお風呂に入ろっと」


 帰宅した月菜であったが、まだタクローは帰ってきていない。

 恐らくショージあたりに捕まってどこかへ連れ回されているのであろう。

 母も恐らく残業。


「なら夕飯は私が準備……したらお兄ちゃんに怒られるかな」


 先日、卵焼きを黒炭化してから再度タクローから料理はしないよう注意されていた。


「私もエヴァさんや陽菜みたいに料理上手になりたいなぁ…」


 隠れ蓑にしている日本文化研究同好会では一応日本料理を作る等の活動はしている。

 二人は作る専門で月菜はもっぱら食べる専門なのである。


 タオルを肩にかけ、湯気の漏れる風呂場へ向かった。






―――――



 同じ頃――。


「面倒ごとばかり押しつけやがって……」


 月菜が言う通り、タクローはショージに付き合わされ魔法少女グッズを買いに付き合わされていた。


「そんな好きならアイツが魔法少女になればいいのにな……いや、それはダメだな」


 自分の想像を即座に否定しつつ帰宅。


「月菜ー? 洗濯物出し忘れてるなら今のうち出しとけよー?」


 返事がない。


 (風呂場の電気ついてる……先に入ってんのか?)


 何気なく扉に手をかける。


(でも鍵が――)


 ガチャッ。


「…………」


「…………」





―――――





 謎の沈黙が洗面所に流れる。

 俺の目の前で、月菜がブラに手をかけた状態で固まっていた。


 白。

 なんというか、清楚なやつだ。


「い、いや、そうじゃなくてだな!! まず鍵をかけろよ!」


 俺は慌てて視線を逸らしながら叫んだ。


「えっと……鍵かけるの、忘れちゃった……」


 月菜は舌をちょこんと出して「てへ」と笑う。


 ……いや、可愛いけどさ!?

 だからってこれはアウトだろ、心臓に悪いわ!!


「それに……お兄ちゃんになら別に見られても……いい、けど……」


 月菜がもじもじしながら視線を泳がせる。


「べ、別に今のお気に入りじゃないから……その……ちょっとだけ恥ずかしいけど……」


「いや、そこを強調するなよ!? 恥ずかしいなら余計に鍵かけろ!!」


「うぅ……それはその通りだけど……」


 月菜は胸元を押さえながら、しゅんと肩を落とす。


 なんというか……

 怒るに怒れないこの庇護欲全開のしょんぼりポーズは反則だろ。


「……まぁ、とりあえず」


 俺は深くため息をつく。


「ほら、もうとっとと入れ。風邪ひくぞ」


「……うん。ごめんね、お兄ちゃん」


 月菜は小さく会釈して、そっと浴室の扉を閉めた。


 カチャン、と鍵の閉まる音。


「……いや最初からその音を聞かせろよ……」


 ぼそっと呟いて、俺は洗面所の壁にもたれかかった。


 つい最近まで小学校だったのに今や中学生。

 某キャラクターがプリントされている下着を着けていたのが今やあんな下着を身につけているんだな。


  洗濯物で実物を見たことはあったが、実際に着ている姿を見ると……いや、考えるな俺。

 

 その時――


 浴室の中から、月菜の慌てた声が聞こえた。


「あっ、シャンプー切れてる……! ど、どうしよう……!」


「いやどうしようって……ちゃんと確認してから入れよ……」


「お兄ちゃん……お願い、取ってくれない……? タオルで隠してるから!」


「いやだからそういう問題じゃねぇんだよ!!」


 結局――

 扉越しにそっとシャンプーを渡したのである。



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