表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優
7月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/139

19話 大きいのが好きですか? 小さいのが好きですか?④






―――――





「ショージ……ちゃんと俺の顔ちゃんと付いてるか?」


「安心しろ、人顔はそんな簡単には取れぬ」


 月菜からの強烈な裏拳を喰らい、顔がとれてしまったかと思ったが無事であったらしい。


「お兄ちゃんも悪いんだよ。こっちに来るから……」


 え、これ、俺が悪かったの?


「いやー、すみませんね。三人で密談してたら急にタクロー先輩たちが来て隠れてしまったのですよ」


 てへっ、と星菜ちゃんは下を出した。


「密談って、一体何を話してたんだ?」


「それは乙女の秘密でーす♪」


 まぁ、十中八九魔法少女関係の話だろうな。

 多分。


「乙女の秘密……ね。それなら追求はしないけど」


 俺は腫れ始めた頬をさすりながら、出口の階段の方へ視線を向けた。


 一刻も早くここを立ち去りたい。自分の「うなじ汗フェチ」という深淵なる煩悩を本人(妹)の前で語ってしまったのだ。この場に漂う気まずさは、もはや物理的な質量を持って俺の肩にのしかかっている。


「悪い、ショージ。戻るぞ」


「おいおいタクロー、逃げるのか? 目の前に獲物……じゃなかった、うら若き乙女たちが三人も揃っているんだぞ。しかも、さっきお前が言ってた『汗ばんだ肌』が、これでもかってくらいコンディション整ってるじゃないか!」


「黙れ。火に油を注ぐな」


 ショージの無神経な発言に、月菜の肩がピクリと跳ねた。


 ふと見れば、陽菜ちゃんは顔を伏せたまま、乱れた襟元を必死に整えている。……さっきの「ひゃんっ!」という声の主は、間違いなく彼女だったはずだ。


 ーーその時、屋上にいたずらな風が吹き抜けた。


「……あっ」


 星菜ちゃんの長い髪がふわりと舞い上がり、彼女の白いうなじが露わになる。


 そこには、俺が熱弁した通りの――初夏の熱気に火照り、薄らと汗をかいた肌に、数束の後れ毛が吸い付くように張り付いている神秘があった。


 さらに、彼女が使っているであろう清楚な石鹸の香りが、風に乗って俺の鼻腔をダイレクトに突き抜ける。


「…………」


 俺は、石化した。

 さっきまで「誤解だ」と弁明する準備をしていた脳細胞が、本物を前にして一瞬で機能を停止したのだ。


「……お兄ちゃん? なに星菜ちゃんのうなじを凝視してるの? もしかして、さっき言ってたこと……ホントなの?」


 月菜の声が、氷点下まで凍りついている。


「ち、違う! これは反射だ! 生物学的なリアクションなんだ!」


「いやーん、タクロー先輩にあたし見られてますよ♪」


 星菜ちゃんは小悪魔のような表情で体をくねらせていた。


「ほう……。タクロー、お前の『うなじフェチ』と『匂いフェチ』が合わさると、これほどまでにキモい顔になるんだな。勉強になるぜ」


 ショージがこれ幸いとスマホのシャッターを切ろうとする。


「あはは! タクロー先輩、鼻の下伸びてるよ? あたしのうなじ、そんなに美味しそうだった?」


 星菜ちゃんが俺の顔を覗き込み、わざとらしくクスクスと笑う。


 だめだ、この空間は俺にとって毒気が強すぎる。


「ショージ、今度こそ帰るぞ。月菜、陽菜ちゃん、……あと星菜、変なこと喋って悪かった。忘れてくれ!」


 俺はショージの首根っこを掴み、逃げるように屋上の扉を開けた。


「あっ、待ってお兄ちゃん! まだ話は終わってないよ――!」


 背後から聞こえる月菜の鋭い追及を、俺は重い鉄扉の向こう側にシャットアウトした。








―――――




「あら、帰って来たの? そのまま早退でもよかったのにーーて、何でタクローそんな死にそうな目をしているの?」


 教室に戻ると落ち着きを取り戻していたミアがいた。


「妹に自分のフェチバレしたんだよ。そんな落ち込むことはないだろうに」


「それはフォローにはならないぞ」


「アンタたちは一体何をしていたのよ……」


 ミアはやれやれといった表情をしていた。


 さて、帰ったら月菜にどう弁明しようかな……





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ