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妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優
7月

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19話 大きいのが好きですか? 小さいのが好きですか?③







「ったく、教室で変な話すんなよな」


 ショージを黙らせるために学校の側溝に叩き込んでやろうかと思ったが、警察のお世話になるのは勘弁なので、とりあえず屋上へと連行してきた。


「おっ、今日の屋上は随分空いているな。いつもは

リア充共がきゃっきゃウフフと領土を主張しているのに」


「そこそこ暑くなってきたから、外に出る奴が減ったんだろ」


「まぁな。だが、やっぱ女子は夏服が一番だよ。薄着こそ至高!」


 こいつと会話していると、どうしていつも内容がこっちの方向にスライドするんだ?


「タクローも正直になれよ。お前だって女の子に興味がないわけないだろ?」


「興味がゼロとは言わないが、それを教室で大声で話そうとは思わないだけだ」


「今は屋上、二人きりの密閉空間……つまり、どんな禁断のトークをしても許される聖域だ! さぁ、タクローの深淵なる性癖をさらけ出せ!」


「まるで俺が特殊な性癖持ちみたいな言い方するなよ……」





ーーーーー





「……ちょうど良かったね。月菜ちゃんのお兄ちゃんの『本性』が知れるよ」


 先客の三人は、ダクトの陰に身を潜め、獲物を待つハンターのように息を殺していた。


「だから、私の友達の友達の彼氏さんだってば!」


「月菜、友達が一人増えてるよ。……それよりも、どうやってあの二人はここに来たのだろう?」


 陽菜が張った認識阻害の結界は、物理的な壁ではないが、凡庸な学生が入り込めるものではないはずなのだ。


「うーん……実はタクロー先輩たちは何か特殊な能力を持ってるとか?」


「そんなのないよ。お兄ちゃんはただの、ちょっと無神経なお兄ちゃんだよ」


「月菜、星菜。今のうちに透過の魔術を使ってここを離れる」


「えー、やだ! 今から面白そうな話が始まるんだよ?」


「そ、そうだよ。妹としては、お兄ちゃんの歪んだ性癖を把握して、今後の対策を練らなきゃいけないし……!」


 陽菜は、もはや好奇心に勝てそうにない二人を見て、深いため息をついた。


「……わかったよ。言えば満足なんだな?」


 タクローが観念したように息を吐くと、隠れている三人の間に電流のような緊張が走った。特に妹の月菜は、握りしめた拳にじっとりと汗をかいている。


「いいか、ショージ。俺はな……『夏の暑さで火照った女子の、うなじから漂うシャンプーの匂い』が、たまらなく好きなんだ」


 静寂が屋上を包み込んだ。

 乾いた風が吹き抜け、フェンスをカラカラと揺らす。


「…………は?」


 ショージが、魂の抜けたような声を上げた。


「……え、いや。俺が期待してたのはパンストのデニール数とか絶対領域の黄金比であって、そんな……そんな文学的というか、ガチっぽいフェチじゃないぞ……」


 言い出しっぺのショージが、あからさまに引き気味だ。


「聞いておいて引くなよ! ふとした瞬間に甘い香りが鼻をくすぐる、あの瞬間の破壊力がわからんのか!」


 タクローが意外な熱量で力説を始めたその時、物陰の温度は別の意味で沸点に達していた。


「……今の、聞いた? 月菜ちゃん」


 星菜がニヤニヤしながら、茹でダコのように真っ赤になった月菜の肩を小突く。


「ま、まさかお兄ちゃん、夏場にそんな気持ちで私のうなじを……!?」


「いや、月菜に対してドキッとしたわけではないと思うよ、流石に」


「まぁまぁ、それよりまだ続きがあるみたいだよ♪」


 ショージがニヤリと笑い、次の質問を投げかける


「よし、タクロー。お前のマニアックなこだわりは理解した。じゃあ、もっと根本的な好みはどうなんだ? 年上と年下、どっちが攻め時だ?」


「急に普通な質問に戻るなよ……」


「お前、確かお姉さん系に弱いよな? 年上の余裕に甘えたい、バブみを感じたい派か?」


「えぇーーもがっ!!」


 思わず裏返った声を上げそうになった月菜の口を、陽菜が即座に手で塞いだ。


「月菜! 声が大きい、バレる!」


「ふふっ、タクロー先輩はお姉さん系がタイプなんだ。メモメモ……」


 星菜の目がいたずらっぽく輝く中、タクローたちは出口へと歩き出した。


「……ふぅ、そろそろ教室に戻るぞ。これ以上話すと俺の尊厳が死ぬ」


「えー、もっとこう、フェチの深掘りをしようぜぇ……」


 二人の足音が遠ざかる……かに思えたが、タクローがぴたりと足を止めた。


「……? なぁショージ、なんか今、こっちから月菜のシャンプーの匂いがした気がするんだけど」


「「「!!!」」」


 三人の背中に、氷水を流し込まれたような戦慄が走る。


「……気のせいか? いや、でも……」


「ホントだったら流石の俺も引くぞ。お前、ついに幻嗅まで……」


「お前だけには引かれたくないわ!」


 タクローがじりじりと、三人が潜む大型ダクトの裏へと歩み寄る。


 わずか数センチの壁の向こうに、自分の匂いを正確に嗅ぎ分けた兄がいる。月菜の心臓は、ドラムを叩いているかのように激しく脈打っていた。


「(ちょ、ちょっと……近すぎ……っ!)」


 狭い隙間に美少女三人がすし詰め状態。そこに、星菜が悪魔の微笑みを浮かべ、月菜の脇腹に指先を這わせた。


「(ひゃんっ……!?)」


 声にならない悲鳴が月菜の喉を駆け抜ける。逃げ場のない密着状態で、星菜の指先が敏感な部分を執拗になぞる。耐えきれず月菜が身をよじると、その身体はさらに陽菜へと強く押し付けられた。


「(……ん、月菜、動かないで。……変なところに、手が、あたって……っ)」


 陽菜の熱い吐息が耳元にかかり、月菜の体温は限界を超えた。


 混ざり合うシャンプーの香りと、じっとりと滲む汗の感触。狭い空間に、甘く濃密な熱気が充満していく。


 一方、ダクトのすぐ外側。


「待て、ショージ。今、確かに布が擦れる音が――」


 タクローがダクトの隙間を覗き込もうとしたその時。


 パニックに陥った月菜が、羞恥と焦燥から、隣にいた陽菜の『とある柔らかい場所』をギュッと掴んでしまった。


「ひゃんっ……!」


 ついに、陽菜の口から抑えきれない嬌声が漏れた。


「……誰だ!?」


 タクローが一気にダクトの裏を暴く。

 そこには――顔を真っ赤にし、制服を乱し、互いの身体を絡ませ合うようにして固まっている三人の美少女の姿があった。


「「「…………あ」」」


「月菜!? それに陽菜ちゃんと……星菜ちゃんまで、なんでここに……」


 タクローの視線が、火照った肌や、必死に脚を閉じようとする月菜、そして呆然とする陽菜へと向けられる。


「……お、お兄ちゃんの、エッチ!! 絶滅しろおおお!!」


 月菜の渾身の裏拳が、タクローの顔面にクリーンヒットした。




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