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妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優
6月

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18話 負の転換⑥






―――――





「エヴァさん!」


「エヴァ!」


 遅れて、月菜と陽菜が現場へと駆け込んできた。


 体育館裏には、つい先ほどまで戦闘があったことを雄弁に物語る痕跡が残っている。

 砕けた地面、歪んだフェンス、そして空気に残る嫌な魔力の余韻。


「お二人とも……もう舞台発表はよろしかったのですか?」


 エヴァはいつも通り冷静な声で問いかける。


「それは大丈夫。それより――」


「……戦闘があった?」


 陽菜が鋭く周囲を見回した。


「はい。ですが、戦ったのは星菜さんです」


「佐々木星菜が……? それで、あの少年は?」


「陽菜ちゃんの予想通り、ニブラでした。

 ただし……あのタイプは、私も初めて見ましたね」


「やっぱり……」


 月菜は唇を噛む。


「星菜ちゃんは大丈夫だった?」


「……いえ。私が到着した時には、かなり深手を負っていました」


「……あの星菜が?」


 陽菜の声が、わずかに揺れた。


 彼女は星菜と一度、拳を交えたことがある。

 だからこそ分かる。星菜の実力は、本物だ。


 その彼女が“負けた”。


「星菜ちゃんは、どこなの?」


「先ほど、その場を去りました。

 治療を申し出ましたが……頑なに拒否されまして」


「えっ!? なんで!?」


「『魔術師は嫌いだ』と。

 その魔術師に治療されたら、負けたことになる……そう仰っていました」


「意味わかんないですよ!」


 月菜は完全に混乱していた。


「……特級魔具を使ってるくせに、なんでそこまで?」


 エヴァは一瞬、言葉に詰まり――そして、苦い表情を浮かべる。


「……一つ、心当たりはあります。

 ですが、それは――お二人には話せません」


「そんな……」


「何故?」


「国家機密、です」


「えぇ……!? 隠し事、多すぎませんか!?」


「正確には、知らない方がいい情報ですね」


 エヴァはそう言って、話題を強引に切り替えた。


「さぁ、後片付けをしますよ。 文化祭は、まだ終わっていませんから」


 その言葉に、月菜と陽菜は何も言い返せなかった。






―――――





「はぁ……俺も月菜ちゃんや陽菜ちゃん、星菜ちゃんみたいな妹ほしかったなぁ……」


 お化け屋敷の再開まで時間があり、

 俺、ミア、ショージの三人で紫苑祭をぶらついていた。


「ショージ、その三人が妹でも、アンタ確実に嫌われるわよ」


「だが、それでもいい!」


「いいのかよ!?」


 そんな馬鹿話をしていた、その時――


『嘘つき!! 今日は大事な記念日なのに、別の女と文化祭を回るなんて!!』


『ち、違う! この子は昔からの知り合いで、たまたま――』


『だったら、なんで手を繋いで歩いてるのよ!!』


『えー、まだ元カノと切れてなかったの?

 いい加減、断捨離してくれない?』


『……もういい。別れてくれ』


『そんな……そんな……』


「お、おお……修羅場」


 いや、呑気に言ってる場合じゃない。


『……浮気は、許さない』


 女性の手には、はっきりとした刃――カッターが握られていた。


『あなたを殺して、私も死ぬ!!』


「待て待て待て!!」


 昼ドラじゃねぇんだぞ!?


「おい、タクロー! 止めよう!」


「無理だろ!? 装備ゼロだぞ!」


「大丈夫だ。問題ない」


「問題しかねぇ!!」


『――そこで何をしている!!』


 幸いにも、通りかかった体育教師ゴリマッチョが即座に割って入った。


 女性は取り押さえられ、悲鳴と嗚咽を上げながら連行されていく。


「くっ……ここで止めてたら、逆に惚れられたかもしれないのに……」


「俺には、お前が刺される未来しか見えなかったぞ」


 二次元じゃねぇんだよ。


「浮気……最悪」


 ミアは、別の教師に庇われている女子生徒を見て、ため息をついた。


「でもさ、流石に凶器はアウトだろ」


「みっともないのよ。女の子を大事にできない男は、最低」


「俺は大事にしてるけど?」


「アンタはまず、女心を勉強しなさい」


「あの子、大丈夫なのか?」


「……良くはないわね。停学、最悪の場合は退学」


 なんか物騒な感じだなぁ。

 月菜、巻き込まれてなければいいけど……



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