表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/28

プロローグ



「お兄ちゃん、今日は急用ができたから先に帰るね!」


 中高一貫の紫苑学園(しおんがくえん)に通う俺たち兄妹。名前は、俺、京田琢郎(きょうだたくろう)、15歳。そして、妹の京田月菜(きょうだつきな)、12歳だ。


 月菜は、今年から晴れて俺と同じ学園に通うことになった。中学校と高校が一緒になった大きな学園で、毎日のように賑やかだ。紫苑学園は、ここらの地域では有名なマンモス校で、生徒数が非常に多い。そのため、俺たち兄妹は普段一緒に通学していることが多かった。


 それにしても、月菜が同じ学校に通い始めてからは、毎日が新しい発見の連続だった。兄妹としてはもちろん、これから先の学校生活でも、互いに色々と助け合っていけるだろうと思う。


 普段は月菜と一緒に帰ることが多いのだが、時々、今日のように月菜が先に帰ってしまうこともある。


 「今日は急用ができた」なんて言われると、何だか寂しい気分になるが、月菜には何か大切な仕事があるんだろうなと思って、気にしないようにしている。

 その理由を俺は知っている。

 月菜は実は、魔法少女なのだ。

 いや、こう言うと誰もが「え?」という顔をするだろうが、これは本当に事実だ。


 魔法少女って、あのアニメでよく見るような衣装を着た、かわいい女の子たちが悪党と戦うあれだ。

 俺は、ある日、月菜がその姿に変身するところを目撃してしまった。それからというもの、俺は月菜が魔法少女として活動していることを秘密にしているが、心の中ではとても驚いている。


―――――



 今から1ヶ月ほど前のことだ。その日の夜、俺は目を覚ました。深夜のことだった。時計を見ると、ちょうど午前1時を過ぎたところだった。

 何となく喉が渇いていたので、リビングに行ってお茶でも飲もうかと階段を降りていった。そのとき、ふと玄関前でモジモジしている月菜の姿を見かけた。

 普段ならもう寝ている時間だが、月菜は何やらそわそわしているようだ。


「よし、みんな寝ているよね……うぅ、恥ずかしいけどやらなきゃダメだよね……」


 月菜が独り言を呟いているのを聞いたとき、俺は少し驚いた。何をしているんだ?

 そのまま階段の途中で立ち止まって、月菜の様子を静かに観察していた。

 月菜は少し顔を赤らめながらも、しっかりとした足取りで玄関のドアを開けると、そのまま外に出て行った。

 夜遅くに外に出るなんて、何かあるのか? いや、まさか……彼氏のところに行くつもりなのか?

 それとも、パ○活でもしに行くのか?


 どうしても心配になった俺は、そっと後をつけることにした。月菜が何をしているのか、気になってしょうがなかった。


―――――


「ここなら誰も来ないよね」


 月菜がたどり着いたのは、近所の路地裏だった。人通りはほとんどなく、周囲の家々の明かりも消えていた。

 あぁ、やっぱり……これはパ○活なのか?!

 月菜がお金に困っているなら、俺が少しでも手助けしてやるぞ! と心の中で焦りを感じながら、さらに静かに足を進めた。


 すると、月菜は一度周囲を見回してから、突然、深呼吸をした。


「よし、【シャイニーパワー・オンっ!!】」


 その瞬間、月菜の体が光り、私服から薄黄色を基調としたドレスに変わった。

 俺はその光景を目の当たりにして、思わず声を上げそうになった。

 これが魔法少女だ……まさか本当に……

 アニメで見たことがあるあの光景と、まるで同じだった。


「うぅ、やっぱりこの姿は恥ずかしいよぉ。でも、この町を守るためには頑張らないとね!」


 月菜は少し恥ずかしそうに言ったが、その目はしっかりと前を見据えていた。

 そのまま、月菜は空に飛び立っていった。

 俺はその後ろ姿を見送りながら、しばらく呆然と立ち尽くしていた。


 どうやら、うちの妹は魔法少女らしい。そして、その衣装は思っていたよりも恥ずかしがっていたようだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ