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夕陽が沈む国のレプセント  作者: violet
未来に向って
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変革へのステップ

レーダン商会は、皇妃の庇護で急成長した商会である。宝石から嗜好品まで多くの商品を扱い、他国の商品も輸入していた。

隠し通路で繋がっていた館は、商会の暗部を扱う所であった。

調べるうちに、皇妃だけではなく、多くの貴族達との繋がりも分かった。

(つぶ)すべきではない。

皇家の手として使うべきだとわかっているが、モードリンを襲った、それが絶対に看過できない。


「切るぞ」

アンセルムが意味することを、イリオスも分かっている。

横からファントマ・マーノンが差し出した資料をアンセルムが手に取る。

皇妃の公務も(とどこお)ったままである。

戦後処理、戴冠準備、内政改革、やらなければならない事は大量で十分な睡眠が取れない日々が続いている。


コンコン。

シャード・セブリエに誘導されて執務室に入ってきたのは、モードリンだ。

「殿下、お忙しいでしょうが少し休憩されませんか?

お茶の用意をしてきましたの」

応接セットに茶器をひろげ、まだ温かいスコーンや焼き菓子を器に盛る。

茶の香りが広がる頃には、仕事をひと段落した執務室のメンバーが集まって来る。

皇太子アンセルムと、第2皇子イリオス、副官ファントマ・マーノン伯爵子息、ハンセン・メルデニエ公爵子息、そして数人の事務官と武官。彼らが皇太子の側近達である。


「兄上、庭園の花が咲き始めました。

モードリン嬢を案内されてはいかがですか? 気分転換したら仕事の効率があがりますよ」

イリオスの言う通りなのは分かっている。


「そうだな、30分の休憩としよう」

アンセルムはモードリンの手を取ると、ソファーがから立ち上がり扉へと向かう。


南の庭園に出れば、少し早めの春の花が咲いている。

花の香りに交じる恋人の甘い香り。

アンセルムは身を寄せて歩くモードリンに見惚れてしまう。

東屋で隣り合って座れば、モードリンのドレスに花影が映る。


「セリアとチェイザレ様は、2週間後のレプセント公国の戴冠式に出席したら、旅に出ると言ってます」

アンセルムもガイザーン帝国代表として臨席することになっている。

モードリンとセリアはレプセント王ユージェニーの妹だ。

数日前に、チェイザレが内密で訪ねて来ていた。ガイザーン帝国を出国するにあたり、シェルステン王国との関係を示唆して来たのだ。

「それは寂しくなるな」

アンセルムとチェイザレが密約したことを、モードリンにもセリアにも話すことはない。


手を繫ぎ、ベンチで寄り添えば、言葉が途切れ途切れになる。

見つめ合って唇を合わせ、息を交わらせれば、感情が沸き起こる。

「そろそろ戻りませんと、時間ですわ」

モードリンがアンセルムの胸にもたれて、肩を寄せる。

アンセルムは立ちあがり、モードリンに手を差し出す。

モードリンがアンセルムを見上げて微笑む、それだけで心が温かくなる。


アンセルムはモードリンを馬車寄せまで送り、シャードが護衛に付くのを確認すると、執務室に戻った。


「兄上、顔色が良くなってますね。

僕達は仮眠を取らせてもらいました」

そう言って近寄るイリオスの顔色も良くなっている。


「たしかに、休憩は必要だった。集中力がよくなっている。

まずは戦後処理から片付けてしまおう」

アンセルムは自分の椅子に座ると、執務机の上の書類を手に取った。


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