ホルグブロウ王国の終わり
イリオスは苦戦をしながらも、ホルグブロウ軍を走破した。
そこには屍しか残ってなかった。ホルグブロウ軍兵士が倒れるのは死んだ時だけだからだ。
イリオス率いるガイザーン帝国軍は、勢いのまま王都に向かい、王宮に突入した。
「きゃああ!」
「うわぁ!」
王宮に仕える騎士達は、ガイザーン帝国兵に斬られて倒れ込む。
イリオスはガイザーン帝国騎士達が斬り開いた道を歩いて行く。周りには斬られて痛みに呻くホルグブロウの騎士達。
王宮の警備の騎士は痛みを感じて、生きて倒れている。
イリオスは、国境近くで戦った兵士達との相違に考えていた。
王宮の騎士は、貴族だから麻薬を投与されなかった?
この国は奴隷制度がある。ホルグブロウ軍の人数は、自国の奴隷だけの人数ではない。併合した国の市民までもが、麻薬を投与されていたのだろう。
ホルグブロウ王は謁見室を思われる部屋にいた。
絢爛豪華で、富と権力の象徴のような部屋である。
「誰だ! お前達は!」
玉座に座り、剣の訓練などしたことがないような太い身体の王が叫ぶ。
自国軍の敗戦の知らせは届いていないのだろうか?
イリオスでさえ呆れてしまう。
イグデニエル王国に出兵して、手薄になったホルグブロウ王国が狙う国など簡単に考えられたはずである。
麻薬に頼り、近隣諸国を陥れてきた安易な勝利の結果だろうか。
ブレーンは他にいることを思わせる愚鈍な王である。
「必要ないな」
イリオスの言葉で、数人のガイザーン帝国騎士が、ホルグブロウ王に向かって走る。
ヒュン!
イリオスの前に引き出されていたホルグブロウ王の首が転がった。
「王族、重臣を引っ張ってこい」
その中に、麻薬による人心掌握の案をだし、指導してきた人間がいるであろう。
父王から、ホルグブロウ王国に対する権限を許されている。
麻薬が蔓延するホルグブロウ王国は、新しい統治体制が必要であろう、と判断されたのだ。
さほど待たずに、イリオスの前に王族と、重臣と呼ばれる高官の貴族達が集められた。
イリオスは、第2王子と呼ばれる自分より年輩の王子の視線が気になった。
それは、イリオスを警護する騎士達も気がついたらしく、第2王子を拘束し、別室に連行した。
イリオスもその後に続き、別室で話をきくことにした。
「そうです。僕です。」
第2王子は片足を引きずって歩く。
あの足では苦労したに違いない、イリオスは想像する。
「王族である僕を、皆が蔑んだくせに、僕が勝利をもたらすと手のひらを返したように寄ってくる」
ハハハ、と第2王子は笑う。
「それで麻薬か!」
イリオスが声を荒げても、第2王子は覚悟をしているようだった。
「あまりに有能な草だったよ。この国もあまり好きじゃないんだ」
第2王子の様子は、ホルグブロウ王国の得だけを狙ったのではないと思わせた。
「そうか」
イリオスは、それだけだった。
モードリンは、ホルグブロウ王宮に向かっていた。
麻薬畑は焼失した。それを遠征隊司令官であるイリオスに報告せねばならない。




