イグデニエル軍の対戦相手
色の土になっている。
農民の姿は見えず、この領地が兵士の進軍で甚大な被害を受けたことが窺い知れる。
セリアは馬のスピードを落とすことはなかったが、涙が止まらなかった。
今は勝ちに行く。その為に、自分達は兄が安心できる場所にいなければならない。
全ては、勝った後で迫る問題となるであろう。
その頃、モードリンはホルグブロウ王国に侵入していた。
麻薬の栽培地に着いたが多くの畑があり、火を点けたとしてもすぐに消されるだろう、と思えた。
自分の護衛として付いて来た騎士を含め、少ない人数で完了させねばならない。
ユージェニーは、イグデニエル王国と対戦していた。
後方の監視からホルグブロウ軍が目視できる距離まで迫っていると報告がはいり、
逃げるタイミングをはかっていた。ホルグブロウ軍がレプセント軍にたどり着く時点で、レプセント軍とガイザーン帝国軍は横へと流れていく。
「なんだ、これは!」
突然現れたホルグブロウ軍に、イグデニエル王国軍は驚くが、ホルグブロウ軍が襲いかかってくるから、戦うしかない。
その戦いで、ホルグブロウ軍の異様さは目立っていた。
斬っても殴っても、ホルグブロウ軍は倒れない。
イグデニエル王国にホルグブロウ王国から、連絡が入っていたわけではなく、ホルグブロウ王国が独自に、イグデニエル王国と戦っているレプセント、ガイザーン帝国軍を後ろから襲おうとしたようだった。結果的に、レプセント、ガイザーン帝国軍は避けて逃げ、ホルグブロウ王国軍は、残ったイグデニエル王国軍と対することになったのだ。
「どういうことだ!?」
エルモンドは、総司令官に詰め寄っていた。
想定外の兵士の損傷に、エルモンドは焦りを隠せない。
イグデニエル軍がホルグブロウ軍と戦っている間に、レプセント、ガイザーン軍は休養をとり、軍の再構築をしているはずだ。
ルドルフ達による正確な情報を獲たユージェニー達と、ホルグブロウ軍が参戦することを知らなかったエルモンドの差は大きい。
「火を撃て!」
斬っても倒れないホルグブロウの兵士に、
エルモンドは焼き尽くそうと考えた。
だが、その火はイグデニエル軍を苦しめるごとにもなった。
強風がイグデニエルに向かって吹いたのだ。
ホルグブロウ兵士を燃やす火は、イグデニエル軍にも襲いかかった。
エルモンドにとって、レプセント軍は精鋭部隊であっても、兵士の数で圧倒的に勝利のはずだった。
それがガイザーン帝国と合流して戦力強化となり、苦戦を強いられていた。
そして、ホルグブロウ軍である。
「殿下!火が迫ってきてます」
強風に煽られて、火はイグデニエル軍をも襲ってきていた。
「どうか、撤退を判断してください」
将軍がエルモンドに許可をせまる。
ここを退けば、王都外周の街があるのだ。
そこを戦場にするわけにはいかない。
そう思っても、火の勢いは収まらない。イグデニエル軍のテントにも飛び火している。
この僕が負ける?
握りしめた拳が、ギシギシと音がしそうである。
エルモンドは、判断するしかなかった。
「この地を捨てる! 水が豊富な地域まで撤退する」
認めたくないが、エルモンドは前線を下げるしかなかった。




