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夕陽が沈む国のレプセント  作者: violet
未来に向って
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戦いの中で

『二人でガイザーン帝国に向かいます。ご武運を祈っております。

セリア、ケイトリア』

手紙を机に置くと、セリアとケイトリアはテントを出る。

ここにいては、ユージェニー達の負担になってしまう。自分達は戦闘が出来ないだけでなく、護衛に騎士を回すことになるのだ。

監視の目は外からの急襲に備えているから、二人の姿は陣営から出るまで気がつかれなかった。


「殿下!お二人が馬で出て行かれました!」

ガイザーン帝国軍の騎士がテントに飛び込んで来た時、誰よりも早くテントを飛び出したのはルドルフだ。


「ドワルガー卿、二人を頼む!」

後ろからユージェニーの声がかかる。

誰もが、二人が足手まといになるのを避けて出て行ったのは分かっていた。

だが、陣営から出るのを、イグデニエル側が監視しているのは間違いない。

後方に逃げたとしても、ホルグブロウ王国軍に遭遇する可能性もある。

現在、レプセント軍、ガイザーン帝国軍は、イグデニエル王国軍と対戦中で、後方からホルグブロウ王国軍が迫って来ているのだ。


「ルドルフならば、二人を正しく誘導するでしょう」

チェイザレが、ユージェニーとアンセルムに言い切る。それほど、チェイザレにとってルドルフの信用は大きいのだ。

会議に参加していたルドルフは、今回の作戦を知っている。

セリアとケイトリアを、一番安全なルートで連れ出すはずだ。


「ホルグブロウ王国軍はキノコで体調が悪い者が多くいたとしても、進軍してくるのは間違いない。

麻薬に侵された軍だ。

兵士の身体が痛んでいたとしても、わからず進んで来る。そして崩れ落ちるのは速いだろう」

アンセルムは、騎士達に指示をする。

「できるだけ、ホルグブロウ王国軍をひきつけるのだ。

前からイグデニエル王国軍、後ろからホルグブロウ王国軍が迫って来たところで煙幕を作る。

ガイザーン帝国は西に全速で逃げろ」


ユージェニーが続ける。

「レプセント軍は東に逃げるのだ。煙幕が消える前に我々が消える」


「さすれば、イグデニエル王国軍とホルグブロウ王国軍が衝突する。

麻薬に操られ、痛みを感じないホルグブロウ王国軍は、死に絶えるまでイグデニエル王国軍と交戦することになる。

イグデニエル王国軍が圧倒的数で有利であっても、すでに我らと交戦して弱っているところにゾンビのようなホルグブロウ王国軍だ。かなりのい痛手になるだろう」

ホルグブロウ王国軍とイグデニエル王国軍を戦わせようとしているのだ。

イグデニエル王国軍のエルモンド王太子が気がついたとしても、ホルグブロウ王国軍の方は麻薬で判断能力が落ちている可能性が大きい。

そのまま戦闘に突入するはずだ。


ホルグブロウ王国軍の判断力があるかどうかは、体調が悪い兵士が多くても進軍してくるかどうかで、判断することができる。



セリアとケイトリアに追いついたルドルフは、一路ガイザーン帝国に向かう。

もう迂回路で他国を通行したりはしない。

なにより早くこの戦場を離れ、ガイザーン帝国領に入らねばならないのだ。

ホルグブロウ王国は近隣小国を巻き込んでいるはずだ。

セリアとケイトリアをイグデニエル王家だけでなく、ホルグブロウ王家も欲しがるだろう。

シェルステン王家のように。

夜も開けようとしている。


空が山の頂上から明るくなっていく。

陽が登ってきたのだ。


夜通し駆けてきた馬の足を止めて、セリアは振り返った。

後ろにしたイグデニエル王国の地が、朝陽で照らされていく。

涙が、頬をつたって落ちる。


ケイトリアも馬を止め、ルドルフが戻って来てセリアの横に並で景色を見る。

「セリア嬢、止まっていられません」


セリアは頬の涙を拭うと、馬をまた走り出させた。

もう、振り返らない。



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