表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夕陽が沈む国のレプセント  作者: violet
未来に向って
62/91

イグデニエル陣営

「殿下!」

お下がりください、と総司令官がエルモンドを奥に追いやろうとする。

レプセント軍が突入してきているが、数では圧倒的多数なのだ。それでいて、押されているのはありえない。

「どういうことだ? こっちは3万の兵だぞ」

エルモンドの視界にも、軍内部で問題が起きているのが確認できる。


貴族子弟を徴兵したのは、貴族の王家への忠誠を見る為だった。訓練期間もなく戦場に配置したのは、貴族子弟ならば、幼少のころから武術の訓練を受けているからだ。

それが裏目にでた。

「くそっ」

エルモンドも剣を手に取り、馬に乗ろうとして総司令官に止められる、

「危険です!おやめください」


「総司令官、この状態で僕が士気を奮い立たせねばどうする!」

エルモンドは総司令官を払いのけ、騎乗すると馬の腹を蹴る。


エルモンドを乗せた軍馬は、最後尾から前線へと向かう。

「勇敢なるイグデニエル軍よ!続け!!」

剣を振り上げ、声をあげたエルモンドは、前線の歩兵隊に飛び込みレプセント軍と剣を交える。

実戦の経験はないが、最高の師匠に剣術を習ってきた王太子である。

エルモンドを追って、守るように騎士が囲む。

後方から飛び出して来たのが王太子とわかると、イグデニエル軍に活気が出て来る。


ザシュッ!

ブラウン・シェラドール公爵子息は剣を受けて、左腕から血が吹き出す。

王太子に向かったブラウンだったが、仲間が次々と斬られて、ブラウン自身も刃をあびた。

タイミングを狙ったとはいえ、イグデニエル陣営を切り崩していくのは

「こっちだ!」

声のする方を振り返れば、向かって来る数頭の馬。

延びた手に身体ごと馬上に引き揚げられ、ブラウンを抱えた男は馬のスピードを上げてイグデニエル陣内を駆け抜ける。

進行の邪魔になる兵を馬上から斬り捨てて進むのは、戦い慣れた姿である。

ブラウンを助けたのは、イグデニエル軍に潜伏していたガイザーン兵である。

同じように数名が助けられている。


ブラウン達を乗せた馬と反対に、数騎がイグデニエル軍に突入していく。

「よくやった」

先頭を駆ける男が、短い言葉をかけてすれ違う。


その男はアンセルム・ガイザーン、一直線にエルモンド・イグデニエルに向かう。

ガガーン!!

重い音がしてアンセルムが振り降ろされた刃を、エルモンドが受け止める。


「殿下!」


両方の守護騎士が叫ぶ。


「殿下?」

いぶかしげに言ったのはエルモンドだ。


「アンセルム・ガイザーンだ」

にやりと笑って、アンセルムがさらに剣を振るうと、エルモンドを守る騎士が斬られて馬から落ちる。

カンカンッ!

騎士が打ち合う音が響き、イグデニエル軍とガイザーン軍の戦闘になっている。


ガイザーン帝国軍が宣戦布告し、レプセント軍に合流した情報はあったが、王太子自ら出撃している情報はなかった。

エルモンドは、どうして?、という疑問が先にたった。


「モードリンは私のものだ」

アンセルムの剣は、躊躇なく振り降ろされる。


かろうじて剣先をさけたエルモンドの目が見開く。

「お前がモードリンを攫ったのか!!」

アンセルムの誘導にのってしまったエルモンドが、大きく剣を振り上げる。

そこをすかさずアンセルムに斬りつけられた。

エルモンドは避けきれず、手綱で受けたが脇腹をかする。


「攫ったのではない!助け出したのだ!」

アンセルムが横から剣を振るうのを、馬が突進してくる。


「殿下!」

エルモンドの加勢がアンセルム達を囲う。

アンセルムが舌打ちをして、馬の踵を返すと騎士達も続く。


ガイザーンの騎士が活路を開き、アンセルムが続く。

アンセルムもエルモンドも悔しい思いを残した。


もう少しで斬れた、とアンセルムは思うが、イグデニエル軍をもっと減らさないと勝機はこない。


脇腹を押さえながら、エルモンドは剣で敵わないと悟る。

しかも、モードリンはガイザーン帝国にいるのだ。

あの男が!



ここで、あの男の首を取れば!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ