イグデニエル王国軍の戦闘
アンセルムは、自分のテントに戻って仮眠を取ろうとしたが、興奮して眠れない。
戦争に慣れているわけではないが、前線に出るのは初めてではない。
戦いで興奮しているのではない。
王太子エルモンド、麻薬に思考を奪われていても、モードリンを側妃にして側に置こうとした。
エルモンドは、絶対にモードリンを奪い取りに来るはず。
そして、王太子とモードリンの婚約はまだ解消になっていない可能性が高い。
決着する前に、王太子が毒で倒れ、前レプセント辺境侯爵とモードリンが、犯人として拘束されたからだ。
優しいモードリンは、王太子が麻薬に侵され、婚約解消は本意ではなかった、と知ったら、どうするだろうか?
どうやって殺そう?
戦いに紛れて、殺すしかない。
モードリンにばれないよう。
今まで、歯牙にもかけなかったが、こうなったら全力でたたき潰しに行く。
ユージェニーもチェイザレも寝れないでいた。
イグデニエル王国に勝ったとしても、ホルグブロウの問題が残る。 ホルグブロウにとって、レプセントは大きな邪魔であろう。
そして、朝日が登ると共に、戦闘が再開される。
チェイザレも、いち騎士として参戦をしている。
レプセント軍には、客人をおいておく余裕はない。
ユージェニーは、先頭にたち突進攻撃していく。
けっして、安全な所にいるわけではない。
太陽が頂点に登る頃、イグデニエル軍に大きな変化が起きる。
陣営が崩れ始めた。
圧倒的多数のイグデニエル軍であったが、軍人でない貴族子弟を徴集していたことで、規律を守れない者が多数いた。
指揮官に従えない者、昨日の戦闘を経験して逃げ出す者まで出ていた。
そこに同調したのが、アンセルムがイグデニエル軍に潜ませていたガイザーンの軍人達とブラウン・シェラドールだ。
イグデニエルの内部から切り崩しにかかる。
イグデニエルの崩れた陣に、突進してくるのはユージェニー。
魔獣討伐にも連れて行く軍馬は、何者も恐れず、凄いスピードで突入する。
ユージェニーの剣から逃げようと、前線に駆り出された低位貴族の子弟が逃げ出す。
「うわぁぁ! イヤだ!」
捨て石のような使われ方に、元々戦意が低い彼らは戦場放棄する。
「何をしてる!前線に戻れ!」
逃げ出した彼らを、指揮官が切りつけたことから、イグデニエル軍は崩れた。
便乗して、潜んでいるガイザーン軍人もイグデニエル軍内で剣を振るう。
戦闘中であるため、誰もが興奮状態にあり冷静な判断の出来ない者もいる。
それをガイザーンは狙ったのだ。
ユージェニーが斬り込んできている、それが戦争に慣れていないイグデニエル軍内で、混乱を起こしているのだ。
ブラウンは、王太子のいる陣営に向かった。
イグデニエル王国軍の乱れに乗じて、ユージェニー率いる先陣隊以外に、突入してくる者があった。
アンセルムである。
王太子エルモンドの首を取る、そのためにアンセルムは、突入してきたのだ。




