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夕陽が沈む国のレプセント  作者: violet
ユージェニー・レプセント
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2通の手紙

シェラドール公爵は帰りの馬車に乗り、どっと疲れが押し寄せてきて、座席に深く背を預けた。

今朝早くに、貴族議会の臨時招集の知らせが来た時に、生きて帰って来れない覚悟をしたのだ。

嫡男のブラウンに、公爵を譲位する手続きを急遽行なった。 


この数ヶ月の王太子の行いは、浅はかでとても王太子教育を受けた者の行動ではなかった。


だが、今日の王太子は違った。王族らしい自信にあふれ、レプセント辺境侯爵令嬢への愛情があるかのように思えた。

まるで、何ヶ月かの時を戻ったような感覚であったが、貴族子弟の徴集、それがレプセント辺境侯爵軍との戦争を意味していた。


レプセント侯子は領土に戻ったのだろう。 

バレンティーナの手紙は手にしただろうか?



シェラドール公爵が貴族議員会議から、邸に帰る頃、ユージェニーは王都に向けて馬を走らせていた。

すでに、軍を起こしフェングル男爵領を制圧したことは、反乱軍として王家に報告が走っているはずだ、と考えていた。

今日の夕方には、王家に報告が届くだろう。


王家は、レプセント軍を反乱軍とし、制圧に来る。

謀叛人として父が晒されているという現実に怒りが込み上げてくる。

これまでレプセント家は、王家の忠臣として長年仕えてきた。

その結果がコレだ。

王国軍3万とレプセント軍200では大きな差であり、圧倒的に不利である。

王家がレプセント家を潰しにきている以上、やらねばならぬ。


バレンティーナ・シェラドールの手紙は、ユージェニーの胸ポケットに入っている。

何年も婚約者であったが、今が一番近くに感じる。


フェングル男爵領の制圧の情報が回っているせいか、それ以降は表立って通行を認めない領主はいないが、街道ががけ崩れで通行不可で、迂回せねばならない所はあった。

ユージェニーに取って、時間は何よりも貴重であるが、がけ崩れを故意と決めるわけにいかず、迂回路を通行するしかなかった。

王都に向かう軍は、想定以上に日数がかかっていた。


その間に、バレンティーナから2通目の手紙が届いた。

『ユージェニー様、お怪我をなさってませんでしょうか?

モードリン嬢は、拘束された夜、王宮から何者かの手引きで逃走したのですが、行方も協力者もわかっておりません。

王宮前の広場で晒されている辺境侯爵の遺体は、何者かが火矢を放ち焼失しました。まるで荼毘(だび)のようです。

遺骨は、貴族議会で預かって保管してます。

バレンティーナ・シェラドール』


鳥の足に結ぶ手紙は薄紙1枚がやっとだ。伝えるべき情報に精一杯の気遣い。


ユージェニーは、手紙を握りしめた。

シェラドール公爵家でも探せないモードリンと協力者。

そして、父の遺体は燃やされた事で晒される事はなくなった。まるでそれを狙って火を放ったようだ。


父も妹もいない王都に、急ぐ理由はなくなった。

だが、進軍を止める理由はない。


「ユージェニー様、ガイザーン帝国軍の使者と名乗る者が現れました!」

それは、ユージェニーが待っていたものだった。

使者は、ファントマ・マーノン、王太子の側近だ。

すぐにファントマと面会し、ユージェニーはガイザーン皇太子からの親書を受け取った。


『モードリンは助け出し、我が手にある。

我が国は、王族であるケイトリア・レプセントの探索の為に進軍し、ユージェニー・レプセントと協力関係にある』

それから、とファントマは小さな袋を取り出した。

「モードリン嬢より預かってきました」


箱の中には、モードリンが父から預かったレプセント家当主の指輪があった。

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