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夕陽が沈む国のレプセント  作者: violet
ユージェニー・レプセント
53/91

王都に至る道

王都に行くまでは、いくつかの他領を通過せねばならない。

全ての領主が友好的とは限らない。

この機会に、王家、レプセント辺境侯爵家、もしくは両方に恩を売ろうとする者もいるのだ。



フェングル男爵領の通行を申請したユージェニーに対して、男爵の返答は、

『魔核の10年間の専売権を要求する』

だった。


一刻も早く王都に向かいたいユージェニーには、交渉の時間などない。

拒否して強硬に通行すれば、王家に(かしず)き、通り過ぎた後、後方から攻撃される可能性がある。


「女子供には手を出すな!」

ユージュニーの手があげられ、進軍を強行する。

ユージェニーと側近数名が、フェングル男爵邸に向かった。



フェングル男爵邸の館の中から、男爵が引きずりだされた。

男爵の顔は、恐怖に震えている。反対にユージェニーは表情一つ動かさない。ユージェニーも側近達も返り血でどす黒くなった軍服だ。

「助けてくれ!」

強気で要求したことなど、忘れたかのように男爵は懇願して(すが)ろうとする。

ザッシュ!

ユージェニーが刀を一振りすれば、男爵は血しぶきをあげて、倒れた。

「欲をかかねばいいものを」


不安の種を残すぐらいなら、領地を吸収して自領としていくしかない。

蜂起が成功しても失敗しても、こういう要求をする領主は危険因子である。自分の有利になるように、いつでも裏切り、寝返る。


次いで連れてこられたのは、まだ10代の嫡男である。父親と違い、覚悟をしているのか、抵抗はしていない。

ユージェニーは彼を見つめ、一瞬逡巡(しゅんじゅん)したものの、刀を鞘に納めた。

「来るか?」


「はい!アーガソン・フェングルです」

アーガソンはユージュニーの前にくると、片膝をついて礼をする。

それから、立ち上がると後ろに控える家令らしき男性に指示をする。

「僕が留守の間は、母上と姉上に指示を仰ぐように。領民を守ることを最優先するのだ」


時間に余裕はない。ユージェニーはフェングル男爵邸を出ようとして、アーガソンに聞いた。

「どうして、私と来る気になった?父親の(かたき)だぞ?」


アーガソンは戸惑うことなく答えた。

「父は、母や姉にも手をあげる人でした。だが、押し入ってきたレプセント軍は、使用人であっても女性を安全な部屋に入れていたからです」


「そうか」

それだけ言うとユージェニーは馬に飛び乗り、駆け始めた。

その後を側近が追う。さらにその後をアーガソンが追いかけた。

アーガソンの馬術では、レプセント軍の精鋭に着いて行くのが精一杯なのだ。アーガソンの馬術は貴族の子弟として優秀な部類だが、レプセント軍とは比べ物にならない。


ユージェニーは後ろを必死で付いてくるアーガソンに振り返る。

後ろから、ユージェニー達を襲う素振りはない。たとえ襲われても返り討ちになるだけだが。


ユージェニーだって分かっている、強行手段は怨恨を生むことを。

王家と同じことをしてはいけない。正道などない、だが信念はある。


このやり方では、人は付いてこない。

恐怖で支配しても、信頼を得ない。

だが、今は時間が勝負なのだ。父が亡くなり、妹の生死が不明なのだから。

ファングル男爵は見せしめでもあった。

レプセント軍を利用しようとすればどうなるか、それを知らしめたのだ。


ユージェニーは先行した隊に合流するべく、馬を飛ばした。


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