表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夕陽が沈む国のレプセント  作者: violet
セリア・レプセント
46/91

セリアの逃走計画

部屋に戻って来ると、セリアは隠してあった袋を取り出す。

チェイザレのおかげで、ほとんど使わなかったが、今こそこのお金を使う時だわ。

屋敷を出る時に兄から渡されたお金の入った袋。現金だけでなく、換金性の高い宝石も入っている。

あんな話を聞いて、この王宮にいられるはずもない。

兄ユージェニーの戦死を願い、何らかの手を打とうとしている王と王太子。

兄にこの危機を伝えて、注意を(うなが)さねばならない。


その問題のケイトリアはまだ眠ったままだ。

ケイトリアの目が覚めたら、すぐに逃げる算段をする。ケイトリアを連れて、荷物は持てない。

この王宮は警備が厳しく、逃げるのも難しい。

王宮ではなく、離宮とか別荘とかに移動したい。


セリアは考えて、手紙を書いた。

汚れたタオルを見て知っている王太子に、少し大袈裟に手紙を書いた。

『侍女達は誰かの指示で、母と私の世話を放棄するだけでなく、危害を加えようとしているようです。

せっかく招いていただいた王宮ですが、安心して過ごすことが出来ません。

どうか、静かで安心できる場所で母の介護をしたい、という願いを叶えていただきたいです。

セリア・レプセント』


宛先をチェイザレでなく、王太子にしたのは、王太子の信用を得る方が王宮から出やすいと判断したからである。


王と王太子は、チェイザレに知られたくないと密談をしていたが、本当にチェイザレは全く関係してないのか?

 

チェイザレを信じたい気持ちは大きいが、ここに連れてきた事が罠だったのなら?


チェイザレと結婚したいと思ってた。

チェイザレを置いて、逃げるのか?


現実問題は、意識のないケイトリアを一人で連れて逃げるのは、不可能に近い。


悩んだセリアは、チェイザレに出会った自分の運を信じることにした。


そして、チェイザレにも手紙を書いた。

『恋人としての話があります。』

こう書けば、人払いもしやすいだろう。


チェイザレは返事の代わりに、夜遅くに本人が来た。

ケイトリアの介護は侍女に任せて、セリアを外に誘う。

『忙しくって、一人にしてしまった。悪かった』

チェイザレは、開口一番にそんな事をいうから、セリアは、大丈夫と言う代わりにチェイザレの腕に飛びついた。


『寂しくさせて、怒ってるのかと思った。恋人を解消すると言われるかと、心配した』

セリアの様子にホッとしたように、チェイザレは言った。


なんだかその姿が可愛くって、セリアは、やっぱりこの人がいい、と思うのだった。


「誰もいない所に二人で行きたい」

セリアがそう言えば、チェイザレは期待したようにセリアの手を引いて、王宮の庭の奥に連れて行く。


ふと見上げると、夜空の星が輝いて、どこで見ても星は綺麗だな、と思う。


庭の暗闇の中に、セリアを連れて行ったチェイザレは、セリアを抱きしめて、口づけをしてくる。

セリアに他者の気配を探る能力はないが、こんな事をしていれば、監視者がいてもごまかさせるだろう、とセリアは計算したが、チェイザレは本気のようだ。

深くなる口づけに、セリアはチェイザレを引き離した。

「ちょっと、待って。話があるの」


「これ以上に、大切な事はないだろう」

チェイザレは、もう一度セリアに口づけしようとして、セリアに拒否された。


「話があるって言ってるのが、わからないの?」

完全にセリアが主導権を握っている。


セリアは迷い込んだ部屋で聞いた話を、チェイザレにした。

そうして、チェイザレが出した結論は、

「夫人の意識が戻る前の方が、父上達も油断していて、逃げ出しやすい」

という事だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ