シェルステン王国
シェルステン王国に入ったのは4日後で、そのままシェルステン王国の王都に向かった。
そして着いたのは、城だった。
「ねぇ、チェイザレ、これ屋敷ってサイズじゃないわよね?」
レプセント辺境侯爵領の居城だって、もう少し小さい。
家に着いたとチェイザレが言うから、馬車から降りたら、城だったのだ。
チェイザレとルドルフが貴族だろうと思っていたが、言葉使いや行動から貧乏貴族だと思っていた。
チェイザレとルドルフを確認した衛兵が敬礼をするのだ。
唖然とするセリアの手をチェイザレが握る。
「俺達、恋人になったんだよな? 押しかけ奥さんになってくれるんだろう?」
からかうようにチェイザレが言えば、セリアは後ずさる。
「あの・・。貧乏貴族の次男か三男で、傭兵の仕事をしながら放浪しているのかと思ってたから」
「あはは!」
ケイトリアを運び出そうとしていたルドルフが笑いだした。
「よかったな、チェイザレ。お前の肩書ではなく、お前本人を好いているらしい」
ルドルフは馬車からケイトリアを抱き上げると、城に入って行く。
すでに連絡がついていて、ケイトリアを寝かす部屋の準備は出来ているようだった。
「両親には嫁を連れて行くと連絡をしてある。今更、逃げれると思うなよ」
チェイザレが引きずるようにセリアを、城の中に連れて行く。
「ご両親は、ここで働いているの?」
使用人であって欲しい、と願いながらセリアは確認する。
。
、
。
「ああ」
チェイザレの答えに、セリアはホッとしたがすぐに打ち砕かれる。
「王と王妃の仕事をしている」
ええええええ!
「この人、この言葉使いで王子様!?」
「声に出てるぞ」
苦笑いしながら、チェイザレはグイグイとセリアを引っ張って行く。
「次男だがな。まず両親に事情を説明せねばならん、部屋に案内するのはその後だ」
「はぁ、良かった。チェイザレが長男だったら、この国どうなってるの、って心配するとこだったわ」
もう今更不敬罪もないだろう、とセリアはいつもの調子で話す。
「ハハッハ!これは面白いな」
ルドルフとは違う笑い声がして、セリアは声のする方に顔を向ける。
「兄上、こんなところに来られるなんて」
チェイザレが兄上と呼ぶという事は、王太子なのだろう、とセリアは腰を落としドレスの裾をつまんでカーテシーをする。
「3年ぶりに戻ってきた弟を迎えに来たのだが、これはこれは、可愛い令嬢ではないか。顔を上げよ」
王太子に声をかけられて、セリアは顔を上げるがカーテシーをしたままだ。
辺境侯爵令嬢として、マナーは徹底的に身に付けさせられた。母や姉の美貌に劣るというだけで、セリアも人並み以上に美しく若い令嬢である。
「ほお、美しいな。愚弟にはもったいない。楽にしてよいぞ」
王太子の許可が出て、セリアはカーテシーをとく。
セリアを観察していた王太子は、セリアが高位貴族の作法が身に付いていると判断する。
こちらだ、と王太子が歩みを進めれば、チェイザレとセリアはその後に従う。その周りを護衛兵が囲み、これは王城で間違いない、とセリアは溜息をつきたくなった。
王と王妃が揃っていたのは謁見室ではなく、王家のサロンだ。
得体の知れない娘をサロンに入れるなど、危険すぎるとセリアでさえ思う。謁見室と違い、サロンでは距離が近い。
こんな息子がいる王家というのが、少しわかった気がする。自分が知る王族たちとは、この国は違うらしい。セリアはチェイザレが第2王子と聞いた時に考えた事がある。 この人は他国の情報を集める為に、各国を回っていたのではないか? それは、王を見て確信に変わる。
ここで身分を隠そうとしても無駄だ。自分には母親を守らねばならないのだ、とセリアは覚悟して本名を名乗る。
「セリア・レプセントと申します」
足先にまで神経を集中して、美しいカーテシーを披露する。
「これは、美しいな」
王が感嘆の言葉を口にし、王妃、王太子が同意する。




