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夕陽が沈む国のレプセント  作者: violet
モードリン・レプセント
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ガイザーン皇宮

馬車の中で、モードリンは母親に注意をされていた。

皇宮で皇帝陛下との謁見なのに、ドレスを汚してしまったからだ。

「皇宮に着いたら、ドレスを用意してもらいますから、すぐに着替えなさい」

「はい」

平民の子供を助けようとしたことを怒られはしなかったが、皇帝との謁見があるのにドレスを汚したのは怒られてもしかたない。モードリンも素直に頷く。


「馬車の窓から、あの子が飛びだすのが見えたの。貴族の娘としてあのような場所で、馬車から降りる危険は分かってます。でも、助けたかったの」

モードリンは唇を噛み締めて、声を出した。

「何もしてあげれなかった。貴族って民から搾取するだけの存在なの?」


「平民の子供は救護院に運ばれるのも、難しいわ。

治療費が払えないと診察を受けれない。この国は大国だけど、全ての国民を豊かにすることは難しい」

母親のケイトリアは生まれ育った国を評価する。

「それは、どこの国も同じです。皆が豊かは難しいですが、皆が安心して暮らせる国であるように我々貴族がいるのです。

僕もあの子を助けれるものならと思いました」

ユージェニーがモードリンを庇うように言うと、ケイトリアは微笑んだ。


「貴方達を誇らしく思うわ」

声を殺して泣くモードリンをケイトリアが抱きしめた。

その様子を末っ子のセリアが見ていた。



皇宮に着くと待っていた警護兵に、謁見の控室に通された。

ケイトリアが侍女にモードリンの着替えを言うと、すぐに替えのドレスが用意された。

装飾のない質素なドレスは誂えのようなフィット感はないが、モードリンの美貌と最初からつけていた宝飾を際立させ、帝王との謁見でも問題なかった。


着替えから戻ったモードリンは、母親に付き添ってくれた侍女を紹介する。

「お母様、この侍女がドレスのサイズ調整をしてくれたの、とても手際がよかったの」


「まぁ、さすが王宮に勤めるだけはあるわね。

ありがとう」

モードリンには別室で礼を言われたが、ケイトリアにも礼を言われて侍女は、頬を染めて深く礼をした。

血で汚れたドレスで参内した客に驚いたし、替えのドレスを提供する皇家の対応にも驚いた侍女だったが、それだけの高位で力のある客であると考えていた侍女である。

それが礼を言ってくるなど、驚くばかりだ。高位貴族は、侍女のことなど見下している者が多いからだ。


「さすが、私のケイトリアだな。侍女まで(たぶら)かすとは」

ノックもなく控室の扉を開けて入って来たのは、ガイザーン帝国皇帝コーデルと皇太子アンセルム、第2皇子イリオス。


全員が立ちあがり礼をすると、よい、と一声かけてコーデルは控室のソファーの空いている席に座ると、侍従達が慌てて、アンセルムとイリオスの座る席を用意した。

「相変わらずですのね」

溜息をついてケイトリアが頬に片手を添えた。


「君限定だよ、ケイトリア。麗しい従妹殿」

ケイトリアがコーデルの求婚を断って、数ある縁談の中からイグニデル王国のレプセント辺境侯爵家に嫁いだのは有名な話である。レプセント辺境侯爵家と魔核を取引きする為の政略結婚である。

ケイトリアの美貌は有名であったので、国内外からの縁談が多くきていたのだ。


満面の笑顔を浮かべる父王は、アンセルムもイリオスも初めて見る姿である。それほどレプセント辺境侯爵夫人ケイトリアは特別ということだろう。

たしかに美しい夫人である。それより間近で見るモードリンの美しさにアンセルムは息を飲んでいた。

この美しさに、平民の子供にも躊躇なくかけよる優しさ、悪くない。

だが、イグニデル王太子と婚約が決まった報告に来たのだ。

そうことでしか帰郷もできないのが政略結婚である。

この美しい令嬢も、もう二度と会うことは叶わないのかもしれない。

そう思うと父王の笑顔が分かる気がするアンセルムだ。


イグニデル王太子の婚約者になる教育も施されているのだろう。何もかも兼ね備えた令嬢である。

辺境侯爵令嬢で、ガイザーン皇帝と母親が従妹という地位も血筋も申し分ない。

無意識に自分の妃としての条件を考えていることに気づいて、アンセルムは内心で苦笑いした。


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