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夕陽が沈む国のレプセント  作者: violet
モードリン・レプセント
27/91

事件勃発

お茶会は無事に終わり、軍がイグデニエル王国に侵攻していても国内状況が変わることはなった。

侵攻軍から送られてくる情報と、物資に関係している部署以外は、通常の生活だった。


アンセルム皇太子が指揮する侵攻軍は国境を超えると、まっすぐにイグデニエルの王都に向かうのではなく、国境に隣接する領地を制圧していった。

レプセント辺境侯爵領は、ガイザーン帝国と接していない。だからガイザーン帝国とレプセント辺境侯爵領に繋がる地域を制圧したのだ、

これで、レプセント辺境侯爵領をガイザーン帝国に併合できる。


モードリンはデビアナとの接点を皇妃に隠すために、手紙のやり取りはメルデルエ公爵家を通すようにした。

メルデルエ公爵家では、次男が皇太子に追随して侵攻軍に従軍している。

皇家の血筋のメルデルエ公爵家は、他国王家の皇妃が皇家で必要以上の力を付けるのをよしとしていない。

皇帝は皇妃を大事にしているが、皇妃を政治のパートナーとして扱うのは一部分である。

皇妃の国の港を必要としていた時期があったが、新しい海路の開発によって、自国の港で十分になったせいでもある。

皇妃の国の重要性が少なくなると、皇帝は皇妃を政治から遠ざけた。

皇妃の公務は、社会福祉関係だけとなったのだ。


「お待ち下さい」

メルデルエ公職家から派遣されている侍女が、モードリンの手を止めた。

モードリンは手にしていた紅茶のカップをテーブルに戻す。


「モードリン様、そのケーキを調べます」

侍女は、モードリンの前に置かれているケーキに手を伸ばす。


フォークを手に取り、半分に切り分けケーキの断面を注意深く観察すると、横で見ているモードリンにも金属の輝きがみて見て取れた。 針のようだが、5ミリぐらいの長さである。

幼稚な手であるが、インパクトは大きく、もし食べていたら口の中や内臓を傷つけていただろう。


「ひっ」

皇宮から付けられている侍女が、金属片を見て、両手で口元を押さえ、引きつった声をあげる。

「衛兵!」

すぐに部屋の外の護衛の騎士を呼び、金属片の入ったケーキを見せる。


「レプセント辺境侯爵令嬢にお怪我は!?」

騎士は、モードリンに確認をする。には

「食べる前に侍女が気づいてくれたので、食べてません。よく気づいてくれました」

モードリンが褒めれば、侍女は物静かに答えた。

「たまたま何かが光ったように見えたのです」

ケーキの切口で金属片が光を反射したのだろう。

 

侍女の答えを聞いて、騎士の一人が走って部屋を出ていく。

厨房の実行班を捕まえるためか、上司に報告のためだろう。

「事故でない可能性がありますので、安全のために、私が室内で警護いたします」

残った騎士の判断は当然であるから、モードリンも頷いて許可をする。


事故でない可能性、モードリンはその犯人を思いやっていた。

なんと愚かな。


小さな金属片だから、気が付かず食べると思っていたのか、幼稚な手だ。

食べてしまえば、内臓に傷がつき、痛みに苦しんでも原因は分らないと考えたのか?

命までは取られないが、脅しとして十分に役に立つ。


報告を受けた騎士団長が駆けつけてきた。

それから程なくして、皇帝がやってきた。犯人もそこまで考えてなかったかもしれなない。

「モードリン嬢、無事か?」

「ありがとうございます。食べる前に気が付きましたので、大丈夫です」

モードリンが立ち上がり礼をしようとするのを、皇帝は片手で制してソファに座ったままでいいと言う。


皇帝が出てきては、事故であってもとことん追求される。

「騎士団長、彼女は皇族として扱うのはわかっているだろうな」


「はい、陛下。護衛の任の時に周知しております」

騎士団長が答えれば、皇帝も満足そうに頷く。

「犯人に権力があっても、全ての捜査を許す。決して取り逃すな」

皇帝も、謁見の時の皇妃の言葉を覚えている。


「はい」

騎士団長が強く答えるのは、他にも思い当たる事があるのかもしれない。


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