表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夕陽が沈む国のレプセント  作者: violet
モードリン・レプセント
19/91

国境への道

シャードとゲーリックが西の塔に忍び込めたのも、ジェイコムが牢を脱走できたのも、王宮の警備が手薄になっているからである。


王都のレプセント辺境侯爵邸から逃走した、辺境侯爵子ユージェニー、辺境侯爵夫人ケイトリア、辺境侯爵令嬢セリアを探索する為に、王都につめている兵士、騎士が動員されているから、王宮の警備が手薄なのだ。


「夫人は間違いなくガイザーンに向かうだろうから、ガイザーンに行く街道は、重点的に警備されている。

我々は迂回をした方が安全だろう。

令嬢の傷の治療もしたいが、王都付近では無理だ」

馬車の馭者席で、シャードとゲーリックは計画を練る。

そして、モードリンを奪取し迂回してガイザーンに向かう事を書いた手紙を、鳩の足に付けて飛ばす。

受け取りは、ガイザーン王太子アンセルムである。

王太子暗殺未遂でレプセント辺境侯爵とモードリン嬢が拘束された事は、昨日の事件直後に文を送ってある。


馬車を暴走させると目立つので、道行く馬車に紛れての移動である。隣国との国境まで2日かかる。

モードリンを宿で休ませたいが、それで足が付く可能性が大きい。

とにかく国境を超える事が最優先である。

シャードとゲーリックがモードリンに説明すると、モードリンも了承する。


この2年余り、シャードとゲーリックは密かにモードリンの状況を探っていた。美しい姫君、知性豊かな王太子妃になるだろう、という認識であった。

だが、傷が痛いだろうに泣き言も言わず、家族が行方不明だと伝えた時は、王家に捕まっていないと僅かに微笑んだ、その哀しい笑みにシャードとゲーリックは心打たれた。

満身創痍の父親が、自分を逃がすために騎士達に斬りつけられたのを見ているのだ。シャードとゲーリックもレプセント辺境侯爵は存命していないと思っている。

モードリンにはどれほど辛いだろう、と思うがこの状況でもくじけないモードリンの強さを見ていた。


途中の村に寄った時に丈の長いマントを買って、モードリンの破れたドレスを隠すように着せてある。

男であるシャード達が女性の衣類を買って目立つ危険があるので、苦肉の策だ。


馬車を止めてシャードが村の店に入っている間、モードリンは車窓から村の様子を見ていた。

王都と領地しか知らないモードリンにとって、驚くことばかりだ。

レプセント辺境侯爵領は、豊かな大地と、魔核の収入で経済は発展しており、領民達も恩恵を受けている。

それに比べて、この村は外で遊ぶ子供達の手足の細さが目に付く。


いつか王妃になると思ってた。

けれど、国の姿を知っていなかった。こういう民が国を支えているのだ。

畑を(たがや)し、子供を産み育てる。

男達は兵役につき、様々な工事にもかりだされる。

もし戦争になったら、最大の被害をうけるのは、こういう民達だ。

男達は徴兵され戦争の前線に配置される、大地は荒され、女子供が蹂躙(じゅうりん)される。


戦争になったら、最小の被害で最大の勝利を得て短く終わらせるのだ。そうでないと民が苦しむばかりだ。


モードリンは王太子の婚約者という地位から離れて、改めて国を知る。




一夜明けた王宮では、王がモードリンの逃走と、レプセント辺境侯爵の死の報告を受けていた。


解毒して体力が戻った王太子エルモンドは西の塔に来ていた。

「護衛は何をしていた!?」


そこには、破れたドレスの端切れが散らばり、部屋の中は物が散乱している。明らかにモードリンが抵抗していたと思われる様相だった。そして、斬られて死んでいる男が3人倒れていた。


「王太子殿下の許可を得ているという令嬢が、この男達を連れていました」

確認のために塔から出た兵士が、恐る恐るという表情でエルモンドに報告する。


エルモンドは唇を噛み締めた。

モードリンを側妃にする為に、この西の塔に隔離したのだ。

それをメイリーンが男達に襲わせようとした、もうメイリーンを可愛いと思えなくなっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ