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夕陽が沈む国のレプセント  作者: violet
モードリン・レプセント
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王家の陰謀

レプセント辺境侯爵ジェイコムと息女モードリンは、王宮に婚約解消の話し合いの為に登城していた。

ジェイコムは王との会見に臨み、モードリンは控室で待っていた。

その目の前にいるのは、王太子エルモンドである。


「モードリン、機嫌を直してくれよ。

辺境侯爵令嬢を側妃とは、言い過ぎたと思っている。正妃でないと公務も支障がでるしな」

これならいいだろう、とばかりにエルモンドが溜息をつきながら言う。

正妃と側妃では王族としての予算が大きく違う。そういうこともあって、エルモンドはメイリーンを正妃にしかったのだ。

モードリンは辺境侯爵令嬢で実家の支援があるが、メイリーンはそれが望めないので、メイリーンが望むドレスや宝飾を与えるには正妃の予算額が必要なのだ。


「殿下、側妃にも正妃にも私はなりません。

どうぞ、恋人のご令嬢とお幸せにお過ごしください」

モードリンは動揺することもなく答えるのが、エルモンドを苛立(いただ)たせる。


「すでに結婚式まで三カ月を切っているのだ。今更中止になど出来ない。

各国要人の出席も、結婚外交も国のメンツがかかっている!」

平静なモードリンと対照的に、エルモンドは怒りを隠していない。

「婚約者を裏切ったのは、殿下です」

溜息をつきたいのはこっちよ、と態度にはしないがモードリンは思う。

こんな人ではなかった、3カ月前までは二人で国の未来を語っていたのにとも思う。


バン!

「モードリン!」

興奮したエルモンドがテーブルを拳で叩いた。カップやソーサーが大きな音を立て、カップは倒れて紅茶が床に流れ落ちる。

側に控えていた侍女二人がかけより、床を拭き後始末をする。その様子を見て、モードリンはワゴンのポットを手に取り新しいカップにお茶を注いで、エルモンドの前に置く。

モードリンがお茶を淹れるのは、エルモンドとモードリンが二人でお茶会をしていた時のくせだ。


モードリンも護衛も、片づけをしている侍女の方に注意が向いていた。


「う・・」

声がした方を振り向くと、エルモンドが紅茶のカップを持っていて口から血を流していた。

カップは手から落ち、エルモンドはテーブルに倒れ込んだ。


「きゃあああ!!」

叫び声をあげたのは侍女だ。

「医者を!」

護衛が王太子の身体を抱き起して、気道を確保している。

モードリンは、状況に驚いて言葉もでなかった。


「王太子殿下がレプセント辺境侯爵令嬢のお茶を飲んで、血を吐かれて倒れました!」

侍女の叫び声に、人が集まって来る。

謁見室から王とレプセント辺境侯爵も駆け付けた。


「モードリン嬢を王太子暗殺未遂で拘束しろ!侯爵もだ!」

王が大声で駆け付けた兵士に指示をする。


「私ではありません!」

モードリンが拘束に抵抗しようとしたが、ジェイコムは首を横に振った。

「ここは魔獣の生息地だと思え」

ジュエコムも拘束をされていた。レプセントの騎士であるジェイコムが王宮の兵士に後れをとるはずがない。わざと抵抗しなかったのだ。

この部屋から逃げ出したとしても、王宮に出仕しているすべての兵士や騎士を相手に逃げ切れるはずもない。


魔獣の生息地で一人はぐれたら・・・

レプセント騎士団の訓練の中で、生き残る為にする訓練、モードリンは思い出す。

体力温存が最優先だ。

機会を待ち、生き残る方法を考える。


王太子の浮気による婚約解消が、王太子暗殺未遂に塗り替えられる。

全ての責をレプセント辺境侯爵家にかぶせて、王家に吸収するためだ。


駆けつけた医師がエドモンドに解毒剤を飲ますのを見て、王家の芝居だと確信する。

まるで、お茶に入っていた毒を知っているように解毒剤が用意されている。

この会見が王家の陰謀であったのだと、ジェイコムとモードリンが悟った時は手遅れだったのだ。

エドモンドとモードリンの仲が良かった時のお茶会で、モードリンがお茶を淹れていたのを利用されたのだ。

モードリンが自分の迂闊(うかつ)さを(なげ)いても遅い。


ジェイコムは王宮地下の貴族牢に、モードリンは西の端にある塔の部屋に押し込まれた。


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