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夕陽が沈む国のレプセント  作者: violet
モードリン・レプセント
13/91

王太子の愚行

謁見室には、王と王妃、王太子がいた。

そしてユージェニーは、自分の考えが甘かったと判断した。

王は王太子の愚行を(いさ)めると思っていたが、それは間違いだった。


「レプセント辺境侯爵令嬢が婚約者という地位にことかいて、王太子の公務の邪魔をしていると聞いている。

他にも王太子妃として恥ずべき行動があることも聞いているが、レプセント辺境侯爵家は我が国にとって重要な家系である。王太子の妃として側妃を遇したい」

王の言葉は、モードリンには理解できない話であり、即座に対応したのはユージェニーである。


「妹が公務をするようになったのは、王太子殿下からの要請で、それは陛下も認可された事です。

最近の公務を(おろそ)かにされているのがどちらかは、誰がみても分かっているはずです。

ましてや、妹の恥ずべき行動とはなんでしょうか?

妹には侍女や護衛が常に一緒なので、それが何であっても否定する証拠はあります」

怒りを隠すこともなく、ユージェニーの声は低い。

王太子が男爵令嬢に入れ込んで、連れ歩いているのは有名だ。王太子妃の公務だけでなく、王太子の公務のいくつかはモードリンに任せて、遊ぶ時間を作っているのだ。


「モードリンが男達と密室に(こも)っていると、目撃者がいる」

王太子エルモンドが、モードリンの恥ずべき行為を言う。


「その目撃者とは誰ですか?

先ほども言ったように、モードリンが一人になる(すき)はありません。

殿下の公務を請け負っているのですから、時間もありません」

軍の将校であるユージェニーがエルモンドを(にら)めば、エルモンドは反論できずに拳を握る。


「まさか、目撃者というのは殿下の恋人と言われているマークス男爵令嬢ですか?

立ち入り禁止区域で、男達と大声で騒いでいたご令嬢ですよね?」

ユージェニーはここぞとばかりに、エルモンドにたたみかける。


「だまれ! 王太子への非礼である。

レプセント辺境侯爵家の総意としていいのか」

王が王太子を(かば)うように、ユージェニーを非難する。


「はい、そう思っていただいて結構です」

それまで黙って話を聞いていたモードリンが返事をした。

「2~3日のうちには、父が領地から王都に到着する予定です。改めて婚約解消の話をさせていただきます。

結婚式まであと3か月だというのに、側妃などと言ったのは王太子殿下です。結婚を推し進める事はできません」


「どういうことだ!

側妃に納得したのではなかったのか!?」

モードリンの反応に驚いて、王はエルモンドを見た。王はエルモンドから、モードリンが側妃として結婚すると聞いていたのだ。

王家にとって、レプセント辺境侯爵家を失うわけにいかないのだ。


「モードリン!

お前は僕のいう事を聞いていればいいんだ!

今までも、ずっとそうだったじゃないか!」

子供の頃から、モードリンは王太子であるエルモンドに反抗はしなかった。

婚約が決まった時も、公務をするように言った時も、はい、と常に王太子の意に沿っていた。


「私は男性と密室にいたことなど、ありません。

殿下は私ではなく、その目撃者を信じているということが、結婚は無理だと証明してます」

高位貴族令嬢は美しい令嬢が多いが、その中でもモードリンは美貌の母に似て格別に美しい。

モードリンは薄い色のレースのドレス、アクセサリーは真珠だけ。

それはモードリンの美しさを引き立て、(はかな)く清楚である。


エルモンドは、モードリンに見惚れてしまう。

モードリンは自分の言う通りになると思っていたし、モードリンが自分から離れるなど考えていなかった。

だから、メイリーンを妃に望んだ時に、モードリンを手放すことなく側妃にすると言葉が出たのだ。

「モードリン!」


モードリンはエルモンドに答えることなく、視線だけを動かしたがすぐに無視をして優雅に立ちあがった。

エルモンドの視線を惹き付けて、自分の美貌を見せつける。

エルモンドがモードリンに未練が残るように、少しでも苦しませたかった。

エルモンドの恋人の男爵令嬢に負けているところなどない、後悔するがいい、とモードリンは決別する。


同じく立ちあがったユージェニーが下がる礼をする。

「王家にもレプセント辺境侯爵家にも、有意義な時間ではありませんでした。

不名誉な虚言で妹を側妃にするなど、レプセント辺境侯爵家の王家への信頼は無くなりました。

父が改めて謁見させていただきます」

ユージェニーが腕をだすと、モードリンがエスコートをされて謁見室を出ようとする。


王家とレプセント辺境侯爵家の決裂ともいえる謁見で、王が扉を守る衛兵に二人を止めるよう指示を出そうとして、王妃が止めた。

「陛下、これ以上の醜態はおやめください」


モードリンは振り返ると、王妃に一礼をして謁見室を出た。



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