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章機能使ってみたのです!
「ヒッヒッヒ」
そこは平和とは程遠い場所となっていた。
さっき会った冒険者の人達が道に倒れており、
そこで笑っている黒いケモミミ男が1人。
クリファが剣に手をかけながら話しかける。
「この街で喧嘩はご法度ですよ」
「あ?」
「警備隊のクリファです。武装を解除して……」
「なんだぁ、韋駄天じゃないのか」
「韋駄天?」
「そいつと拳で話し合いがしたくてな」
「聞いたことがない名前ですが」
「ああ、ここではジェットだっけか」
背筋が凍るような気配が漂う。
「……私が相手だ」
クリファが剣を抜きつつ、答える。
「悪い事は言わねぇ。やめとけ」
「なぜ?」
「ジェットも俺には勝てない。
つまり、そういうことだよ」
「あの方といっしょにするな」
「まあ確かになぁ?あんな雑魚の仲間にされては……」
「死ね」
おそらくは本気の斬撃。
刃が届くスレスレで、ジョーカーが余裕そうに避ける。
「おっと、意外にやるね」
「ふざけるなよ」
怒気を帯びた声が響く。
「2対1でもいいんだぜ?」
「私だけで十分、下がってて」
「あ、はい」
大人しく下がることにする。
「じゃあ、次は俺からいくか」
「キーン」
剣と拳がぶつかり合う音が響く。
怖っ、巻き込まれないようにしよ。
「スタッ」
横から突然気配を感じて振り返る。
騒ぎを聞いてやって来たのか、
ジェットが刀のような物を片手にそこにいた。
「ちょっと行ってくるね」
と言った彼女の姿はもうそこにはなく……
「クリファ、落ち着きましょう?」
「ジェット様!?」
クリファの横にいた。
「お、やっと来たか。遅いじゃねぇか」
「本がいい所だったので」
「ハッハッハッ。それならしょうがねぇ」
「私のクリファが迷惑かけたみたいですね」
「私の……」
クリファが何か悶えている。
「ああ、何も聞かずに斬りかかってきて
なぁ」
「それは後で叱っておきます」
「違います!だってこいつ……」
「こいつは自分からは手出してないのよ」
「え?」
え、ぼくの足元で転がってるこいつらも?
「ちょっとスペードの悪口言っただけなのになぁ」
あー、そういうことか。
「許してくれないかな、ジョーカー」
「俺が何しに来たかも全部聞いてたくせに白々しいなぁ。オエッ」
ジョーカーが口からナイフを吐き出す……?
まあ異世界だし、そういうこともあるか。
クリファの口が更に大きく開いた気がしたが。
「クリファ、レイ。転がってるの連れて逃げて」
「分かりました。ほら、クリファも」
「いや、でもジェット様が」
ジェットが右腕についた腕輪のスイッチを入れる。
「カチッ」
目が赤く染まり、左手の指先から勝手に血が流れる。
「吸血鬼であり最速の人狼ねぇ。
雑魚とはいえ武器は使うかぁ」
「同じ種族として速度で勝てている事を教えてくれてありがとうございます」
そして、ジェットの姿が消えた。
「あ゙ぅ」
「えっ」
こちら側にジェットが吹き飛ばされてくる。
え、見えなかったんですけど。
「よくもジェット様に傷を……」
「そいつが攻撃してきたからなぁ」
それも見えなかったんですけど。
「許さない」
「やめとけ」
「ドサッ」
いつの間にか横にいるジョーカーがクリファの腹を蹴り飛ばす。
もちろん、見えなかった。
「お前もやってみるかぁ?」
「え、ぼくですか?」
「おう」
これ無理では?
「……友達になりません?」
友達になるの
「いつでも構ってくれるってことかぁ?」
「友達になってくれるならいいですよ」
「いいよぉ、なら殺しはしないから本気でこいよぉ」
「よかったぁ」
フフフ、案外チョロいな。
「何がだよ」
「友達になってくれて」
思ったよりいい人で本当によかった。
「カチッ」
友達の頼みなんだ。
本気で相手をしてあげよう。
「紫色の目……吸血鬼じゃないのかぁ?」
……正体バレてないな、ヨシ!
「ぼくの名前はレイです」
「俺の名前はジョーカーだぁ」
次の瞬間、ジョーカーが足を一歩踏み出すのがはっきりと見えた。