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第25話

いらっしゃいませ


「さぁ!行くわよ!」

いつも通りの格好。

光沢の無いガントレットが新調されたこと以外は。

「靴は?」

「あ、履く」

ズボンの上からあの靴を履く。

腰までしっかりと皮1枚で作られ、太腿や膝などに甲羅や鉄製の板が仕込まれている。骨盤周りには衝撃吸収に優れた何か、ゼリーか綿の様な何かで少し盛り上がっている。

他の冒険者、フィニュに比べると不格好に思えてくる。内側に着込んだ服のせいか。

そのせいで不自然に盛り上がっている。

本人は全く気にしてないので、何も言わない。

「暑いわね」

「何枚か脱いだら?中の服」

「零着シートって残ってたかしら」

「何それ」

「暑い時に使われる正規品の商品よ」

「布?また着込むの?」

「この布に刻まれた魔術陣が魔力に反応して冷気を生成してくれるのよ」

そう言いながら厨二チックな柄を見せられる。

「ふーん…熱中症にならないならいいか」

ラニャの歩き方を指摘しつつ歩く。

不自然、こんな歩き方に見えてるのか。

「重くないの?」

ラニャの目線はこの国特有の靴の太腿辺りを捉えている。中にある鉄製の板の事を言っているのか。

「こんなもんじゃないのか?」

「そう、それ安くてなんの術式も刻まれてないから素の重さなんだよね」

「なるほど」

筋力強化が発動していた為、全く気が付かなかった。


「ラニャ〜」

フィニュの声が聞こえる。

どうやら集合場所とは、門の近くらしい。

「今日はよろしくお願いします」

商人が頭を下げる。その間従者と思わしき人物が睨みを聞かせる。

「こちらこそよろしく、この隊の隊長を務めるフィニュです文句が有れば言ってください」

「ラニャです」

「しばらくの間お願いします」

そういって、馬車の操縦席に座る商人。

従者に促されるままに目線をやると「乗ってください」馬車へ乗り込むよう指示される。

乗るとかなり広かった。

半分以上埋まってはいるが、それでも、五六人が寝泊まりするには申し分ない広さだ。

魔力の歪みを少し感じるが不快になるほどでも無い。段取りを再確認している間に少し馬車から顔を出すとちょうど門を出てた所まで来ていた。


「暫くは問題無さそうですね」

ファクラがそう言うと、眠そうに欠伸をする。

「警戒は怠らないようにな」

ヤックがキリッとそう言うと装備の再確認を始めてそれをフィニュにも促す。

「えー私は何度も確認したからなぁ〜」

フィニュがヤックから離れるとラニャと会話を始める。目のあった俺とヤックが黙々と装備品の手入れや情報交換を行って暇を潰す。



「ヤックどう思う?」

「うーん…無いな」

いつの間にか寝ている3人を見て、溜め息をつく。

警戒どころか起きてすらない。

「外の空気吸った方がいいんじゃないか?」

「そうだな、なんの動きも感じられないし」といいつつ2人を守れるよう移動しているヤックをみて、面倒見がいいなと感心する。


「……なんの話だったけ」

ヤックの声に微塵も変化のない馬車に違和感を感じ始める。「起こしてくれるか?」

ヤックが無言で頷くとファクラの口元を押さえ付け、体を揺らす。


「フィニュとその連れを頼んだ」

無言で頷いたファクラが一瞬俺の方を凝視する。

何となく頷くと、頷き返される。


「……」しっかりと馬車は道を走っている。

森の中での戦闘音もその気配も、怪しく思える場所も見当たらない。至って普通の旅路だ。


「問題はなかった」

「そう……お腹が減ったわ」

昼食にはまだ早いだろうが、護衛という仕事を考えたら早い方がいいだろう。

「食える時に食べた方がいいな」

ファクラがそれに同意するとラニャも賛成し、そのまま昼食を交代で食べる事になった。

耳を澄ませれば…商人と従者の笑い声が聞こえる。

…あれこんなんで護れるのか?やばく無いかこの配置。

色々出遅れそうな場所に押し込められた事を自覚した頃にはもう随分と時間が経っていた。


お疲れ様でした。


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