第20話
いらっしゃい
山の麓に休憩所はあった。
ラバル王国はこの山の先にあるという。
その道を塞ぐように6人が立ち塞がった。
「あいつら弱いから大丈夫だよ」
ラリャに耳打ちすると「あんたにとっては、でしょ?」と耳打ちされた。
「盗賊か山賊か路頭に困った冒険者か…どれだ?」
商人が声を張り上げると山に隠れていた1人が商人に向かって弓を引いた。
「おじさん!」
声を張り上げるラリャを横切り毒矢を凝固で受け止めると、ラリャは商人を馬車の中に引きずり込んだ。
「ナイス判断、後は馬も守って欲しいけど、最優先はおっちゃんで」
立ち塞がっている6人と対峙する。
「逃げるぞ!」
森の中から突然の命令。
道を塞いでいた男たちは慣れた手つきで森の中に姿を眩ませた。
「追ってもいいが、どうする?罠の可能性も十分に有るが」
「いや、いい…助かった」
馬車含めて全てが無傷。
敵の損失は毒矢1本だけ、こっちの戦利品は無し。
「あんな逃げ腰の山賊初めてみた」
「ありゃ最近噂になってる盗賊だな」
「噂?」
「不意打ちを防げば撤退する盗賊がいるって噂知らねぇか?」
「知らないわ、スレイブも知らないでしょ?」
「知らん」
「昼飯狩ってくるんだろ?さっきのもあるんだ、奢ってやるから離れねぇでくれるか?」
「本当ですか!」
「あぁ、ちょっと待ってな」
五分くらい馬車の外で警戒を怠らずに待っていたらサンドイッチを手渡された。
「山菜のローストサンドだ、美味いぞ」
「ありがとうございます」
1.5人前有りそうな大きさのサンドイッチ。
「美味しぃ」
「いただきます」
「なんだそのいただきますよってのは」
「癖?……よく分からない」
「そうか、まぁなんにせよ残すなよ」
馬の世話に向かった商人の後を追い掛けるラリャ。
昨日遅刻して浮いた金から今日の昼飯代に当ててくれたんかなとのんびりと空を眺めながら考える。
「ラバル王国の城壁が見えてきたぞ」
商人の一声で顔を上げると数人の冒険者が馬車を避けて後ろにある森を目指している。
その冒険者の特徴は靴とズボンの境目がない靴を履いていることである。ラリャの靴は長い靴ではあるが、流石に腰まではない。
「横に広い城壁だな」
「確かにあの町と比べたら低いね」
「あの城壁は分厚いんだ、恥のねぇ様、覚えておきな」
「へぇー」
「しかし、この草原はいつ来ても凄いな」
「私は2回目ですけど、やっぱりこの草原を歩く気にはなれませんね…」
「この草原に何かあるのか?」
「あー、毒を持った昆虫が大量に潜んでいるから、今の装備で足を床に付けると大変だよ」
「…あの馬は大丈夫なのか?」
「あの馬はラバルで生まれたから毒とか虫に強い耐性があって、確か商人たちの間で凄い人気なの、商人さんに聞いた方が確実よ」
「いや、今の説明でだいたい分かったから」
話しているうちに門の前まで着いたらしい。
「世話になったな、報酬の薄金貨2枚だ」
「はい、確かに受け取りました」
「じぁ、冒険者ギルドに行こう」
「ん?」
冒険者ギルドにきて最初に受けたのは、ナサルバの街へ向かう商人の護衛。
要するにあの町へ帰るついでに稼ぎをする。
「依頼が最短で明後日だって、どうする?」
「…もう夜になるから宿屋を探さないと」
「それは大丈夫、それよりご飯食べに行こ」
ラリャに連れられて向かったのは食堂。
予想の斜め上を行く卵の代わりに野菜に包まれたオムライスを食べて宿屋に向かう。
宿代と夕食代で合わせて半銀貨二枚の出費。
「1部屋で本当にいいのか?」
「私の家のベットとそう変わらないし大丈夫!」
乙女として終わってるんだろうなと、失礼な事を考えている事を自覚しながらベットに横になる。
「さて、明日は靴を買いに行くわよ」
「了解、それとおやすみ」
「?私も寝るわ」
お疲れ様でした




