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苔の海に溺れた人へ  作者: 朝川 椛
第三章 苔のフィールドワーク
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その12

(ち、千奈津!)


 助けを求めて千奈津を見ると、千奈津が慌てて妹尾を咎めに入る。


「ちょ、ちょっと何迫り出してんのよ。そういうのはちゃんと二人の時にしなさいよ」


 それ論点がズレてるよ、と杏梨は内心で千奈津へツッコむも、妹尾がますます顔を寄せてくる。


「杏梨ちゃん」

「ご、ごめんなさ……、きゃっ!」


 謝ると同時に、足元にあった何かで滑り、尻餅をついた。


「だ、大丈夫?」


 妹尾の焦った声が聞こえてくる。


「大丈夫。何かが足の下に。それで滑っちゃって……」


 解放された右手で足を滑らせた木の根の辺りを探ると、布とビニールの間のような感触のものがあった。尻下しりさがからぐいっと引き抜いてみる。


「それ!」


 手に持ったものを見た途端、千奈津の目が大きく見開かれた。


「え?」


 指摘されて、杏梨は自らが持っている物を確認する。それは紫色をした薄地のパーカーだった。


「美穂のだわ! 美穂のパーカー!」

「ええ!」


 杏梨は千奈津の言葉に目を剥く。


「なんでこんなところに……」


 まじまじと見つめながら呟くと、千奈津が掠れた声をあげる。


「やっぱりあの森宮って先生……」

「そ……」


 語尾を濁す千奈津の言おうとしていることがわかり、否定しようとした時だ。


「僕が、どうしました?」


 洞穴の入口から、森宮がひょっこりと顔を出した。


「も、森宮先生!」


 杏梨は驚いて咄嗟にパーカーを隠す。どうやら森宮は洞穴内の微妙な空気に気づいていないらしい。柔らかな笑みを見せてきた。

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