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素晴らしいこの世界の片隅で。

雨があがったら

作者: ニチニチ

ざあざあ。

ざあざあざあ。


雨は降り続いている。

僕は、ひとり雨宿りをしている。

 

 

 


懐かしい匂いがした。

 

 


 

僕は、懐かしさの欠片に触れたくて、あたりを見回す。

 

 


昔、小さかったとき。

傘を持っていきなさいと言われても、面倒で持っていかなかった。

結局、雨が降ってしまって、よく適当に雨宿りをしていた気がする。

 


昔は不便だった。

今のようにコンビニもなくて、都合よく傘は売っていなかった。

 

昔は不便だった。

今のようにケータイもなくて、都合よく迎えに来てもらえなかった。

 

 

時折、昔の不便さをいとおしく感じる時がある。

でも、きっとそんな日々は二度と来ないだろうことも知っている。

 

 

 

土。

草。

濡れたコンクリート。


ワックスがけをした、教室の床。

音楽室。

体育館。

 

美術室。

図書室。

少しいいなって思っていた女の子。

 

 


 

やっぱり、どこからか湿った懐かしい匂いがする。

 

 


 

僕はどうしてもその欠片に触れたくて、雨の中、傘もささずに歩き出した。

大人になってしまった僕は、昔みたいに探し物が得意じゃなくなった。

 

 



それでも、懐かしさの正体を確かめたくて、探し歩く。

 

 

 

しばらく探してみたけれど。

やっぱり僕には、それが何なのかは分からなかった。

はっと気付いたとき、憂いで膨らんだスーツが身体にまとわり付いていた。

 

 


 

雨があがったら。

きっと、またその欠片は遠くにいってしまいそうな気がする。

 



 

そして。


 



またいつもの日常に。

何事もなかったかのように、ただただ戻っていく。

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