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猫耳少女は森でスローライフを送りたい【WEB版】  作者: yocco
第一章 猫耳獣人に転生した私と森の仲間達
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09 お薬づくり

 ケットシーを見送って、もらった草笛用の葉っぱを飾り棚に大切に飾っておく。


 ……またあうって、約束したものね。


 その後、私はその足でテーブルに向かい、食器を流しに運んでから洗い物を済ませた。


 そして、余ったベリーは、ボウルに入れて砂糖を振るって置いておく。

 そう。ジャムの下準備よ。

 これは、シラユキとの約束だしね。

 もしかしたら、同じ精霊だから、サラちゃんも好きかもしれないし!

 うん、これはしばらくこのままおいておけばいいわ!


「今日はチセは何をするんだい?」

 私の頭の上に乗っているスラちゃんが尋ねてきた。


「この間、薬草を摘んで来たでしょう?」

「ああ、水汲みのときだね?」

 そうそうと私は、スラちゃんが頭から落ちない程度に頷く。


「あれと、もう一つの材料でお薬ができるらしいの。それを作って、村に行って売りたいのよ」


「売る? この家食べ物あるじゃないか」

 スラちゃんが、わかんないとでもいうようにプルンプルン揺れる。


「さっきのパンケーキ、一人当たり卵二個使うのよ? みんなで合計六個も使っちゃったの」

「えっ! そんなに!?」

 よっぽどびっくりしたのか、スラちゃんが私の頭の上で、ぴょんと跳ねる。


 ……落ちないでね(汗)


「だから、お薬を売ったお金で、卵とかを買いたいのよ」

「なるほど」

 うんうん、とスラちゃんが頷いている気配がする。


 そこでだ。

 もう一つの材料というのが、『スライム酸』なのである。

 要は、スラちゃんに、お口からピュッてしてもらう。


 ……唾液みたいなものかな、それって。


 と思うのだけれど、私の頭の中にある製薬知識が、それで正しいと言っているのだ。

 そして、唾液とは別の器官で作られているらしい。別物ということである。

 うん、ちょっと安心。

 さて、唾液云々で悩んでいないで、必要なことをお願いしましょうか。


 私は、調剤道具が並ぶ区画に、スラちゃんを乗せたまま移動する。

「あのね。スラちゃんって、お口からピュッて『スライム酸』を出せる?」

 歩きながら尋ねてみる。


 ……この説明でスラちゃん、わかるかしら?


 すると意外。

「もちろん! それはスライム達の最大の攻撃方法、特技だよ! 僕だってできるよ!」

 どこにする〜! とそれは嬉しそうに、今にでもスライム酸を吐き出しそうにする。


「待って、待って! そこでスライム酸を出されて私にかかったら私が痛いわ!」

 私は慌てて、スラちゃんを作業台の上に移す。

 そして、近くにあったビーカーを手に取って、スラちゃんの目の前に置く。


「この中に、ピュッって半分くらいまで入れてくれるかな?」

 そうお願いすると、えっへんとばかりに胸を張っている様子のスラちゃん。

「任せて!」

 すう、と息を吸うと、スラちゃんのお口から、ピュ、ピュ、ピュ、とビーカーの中目掛けて、無色透明のスライム酸が吐き出される。


 そこで一旦スラちゃんが一休みしている。

 私が渡したのは、前の世界だったら五百mLの容量のビーカー。

 その半分を満たすというのは、スラちゃんにはちょっと、重労働みたいに見えた。


「スラちゃん、私は他の作業をしているから、スラちゃんは、ゆっくりスライム酸を溜めてくれてて大丈夫よ? 一生懸命やってくれて、ありがとうね」

 私が声をかけると、スラちゃんが、ほわわわ、と緩んだ顔になる。

「チセ優しい〜♡  僕、チセが僕のスライム酸が必要になる時までに、頑張って準備するからね!」

 そしてスラちゃんはまた、ピュ、ピュ、ピュとスライム酸を溜め出した。


「じゃあ、私は材料が溶けやすいように、粉末にしないとね」


 材料は、癒し草と、苦味取りの実と、中和の葉。

 まず、材料に熱を加えないように注意しながら乳鉢で粉末にして、と。

 順番に粉末にしたら、別の小鉢に入れておく。

 次に、粉にした癒し草を綺麗なビーカーに入れる。


 さて、そろそろスラちゃんは……、と思って彼のいる方を見る。

 すると、えっへんと自慢げに笑っているスラちゃん。

 彼の前には、スライム酸が半分まで満たされたビーカーがあった。


「スラちゃん、ありがとう♡」

 ちゅ、と彼のほっぺたのあたりに感謝のキスをしたら、もともとピンク色のスラちゃんの色が、ちょっと濃くなった。

「も、もう用事は済んだよね。僕は寝るんだからね!」

 ぷるぷるぷる、と震えてから、ぴょんぴょんと飛び跳ねてソファの方に行ってしまった。


 ……照れちゃって、可愛いんだから!


 照れながら移動するその後ろ姿を見送ってから、私は作業を再開することにする。

 スライム酸を扱うから……と探すと、手の防護にミトンと、防護用のメガネまであった!


 もともと、この世界にあったのかしら?

 まあ、謎は尽きないけれど、ありがたく両方装着する。


 ガラス棒を持って、そのガラス棒にスライム酸を伝わせながら癒し草を入れたビーカーに少しずつ移す。

 全て移し終えると、スライム酸に癒し草が全部溶けて、濃い緑色の透明な液体になった。

 そこに、苦味取りの実の粉を入れると、液体は透明な黄色に変わった。


 最後に、粉末にした中和の葉を入れる。

 すると、液体は透明な黄色からオレンジ色へと、風邪シロップのような色に変わった。


 あとは、その時の出来によって、お水で調整(薄める)んだけど……。


【初級ポーション】

 詳細:濃いんじゃない? お腹痛くなりそうだよ。


 ……やっぱり、鑑定の主はスラちゃんのような気がしてきた。

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