朝食2
リオは朝食を食べ終えると食品棚を漁って、瓶に入れた保存食の動物の干し肉をもぐもぐと食べ始めた。
味がよく染み込んでいる干し肉は噛めば噛むほど美味しい、冬には絶対に必要なタンパク源だ。「あ、そうそうこれ母さんからな」
すっと、カバンから取り出したのは瓶詰めされた木苺のジャム、そして、オレンジを輪切りにて液体に漬け込んだもの。
ジャム伸びんと比べて結構大きいものだ。
それらを机の上に並べた。
「ん、なにこれ」
「果実酒だってさ、オレンジので皮も使ってるらしい」
お酒……、まだ未成年のファレナになんてものを渡すんだ。
「ファレナもうすぐ誕生日だろ、それと成人祝い」
「確かにもうすぐ18歳だけど、まだ早くない」
この国の成人は18歳だ。お酒も飲めれば、特殊な乗り物にも乗れるらしい。
成人だと決まっているが大抵の人は成人より前に飲んでしまうらしいが、ファレナは生まれてこの方飲んだことは1度もない。
ゼラニウムに酒を飲むと背が縮むと教わっていたからだ。ただでさえ、背の低いファレナにとっては嫌な印象でしかない。
「まだ成人してない俺でもこっそり飲むくらいだし平気だって」
「悪いヤツ……」
「姉ちゃん、お酒僕も飲みたい!!」
そう言いながら、果実酒の瓶を手に取るフラン、しかし果実酒は取り上げられてしまう。
「まだダメです。フランも小さいんだから、背が大きくなるために成人になってから飲みなさい」
フランは“わかった”と不服そうにしていた。
この村の水は井戸水しかなく、足りなくなれば森にある川で水を組む。
それも雨が降ればどちらもたまるもの。
降らない時期は保存飲料で漬け込んだ果実酒やフルーツの果汁で喉を潤す。
そういう風に生活してきた。今となっては魔宝具も発展してきて、雨を降らせる魔宝具もあるらしいので困ってはいない。
リオからもらったジャムと果実酒は食品棚にへと移動させた。本当は地下蔵に入れておきたいが、それは夜になってからで良いだろう。
食品棚から袋に包まれた食品を取出す。
「おばさんにありがとうって言っておいて、これお返し」
リオの目の前にその袋を置く。
「なんだこれ……」
リオが中身を確認すると、白くて四角い物体。
適当に切られ手サイコロ状になった物がオリーブオイルに漬けられている。
「フェダーチーズって言うらしくて、サラダとか入れて食べるといいわよ」
もぐもぐとオムレツを食す。山菜の香りが口いっぱいに広がりとても美味しい。
「初めて聞いたんだけど……、どうやって作んの」
リオがまじまじと観察をすると、
「教会で頂いたものなんだ、お供え物の中に入ってて、実際食べたけど美味しかったよ」
フランが答える。
教会は勉強だけでなく宗教的な教えもあるらしく供物をお供えする風習がある。
まず神様に頂いてもらってから、みんなで平等に分ける。そうすると、不幸な子供たちも救われるだろうという教えらしい。
孤児院ともに経営している協会にとっては食品問題を少しでも解消するための方法でもあるらしい。
「そっか、教会にちゃんと通って偉いなぁ」
フランの頭を撫でながらニシシッと笑いかけるが、フランは頭をぐるぐると回されて目が回っている。
「リオ兄……、ちょ、やめ、」
そう言われてパッと頭から手を離すと、フランはいそいそと髪の乱れを整えていた。
ごくんと最後の一欠片の肉を飲み込み、もう1枚と干し肉に手を伸ばす。
「……あんた食べ過ぎじゃないの、そんなんでいざってとき動けなかったらどうすんのよ」
相棒が動けないので話にならない。
この時期は1番、動物や魔獣の被害が多い。冬眠から覚めたり食べ物を求めて動き出す。
そのため村の被害は避けられないのだ。
「動けるってぇの、俺の武器は結構なスタミナいるし、食わねぇとやってけねぇの」
2枚目の肉を取りだしもぐもぐと食べ始める。
心配だ……。
十分くらいで朝食を食べ終え、食器を片付ける。
フランが用意してくれたので片付けはファレナの仕事になる。そうやって、当番制にして家事を分担しているのだ。
食器洗い用の桶に水をため皿をすすいでいく。
「ねぇリオ兄、」
「……ん、どした、」
「今日は何するの??」
あー、上を向きながら顎を抑える。
「んー、柵を治して、仕事して、そっからは特にやることねぇけど」
「じゃあ、久しぶりに洞窟行こうよ」
「お、いいぜ、昔はしょっちゅう行ってたのに……今じゃあ全然行かなくなってんだよなぁ」
洞窟と言っても、森の外れにある洞窟で昔は秘密基地として扱われていた。
魔獣なんかはいたりするが大人しい為、襲っては来ない。そのため、暗くて狭い場所の訓練にはもってこいの場所である。
「洞窟で訓練すんの?」
皿をすすぎならがら、ファレナが聞くと、少しむくれるフラン。
「いや、訓練じゃなくて、遊びだよ。」
「じゃあ、約束な。この家まで迎えに行くから待ってろよ」
「うん!」
拳同士をぶつけ合い、約束を交わす。
フランには寂しい思いばかりさせているため、リオとの遊びの話は凄く嬉しいのだろう。
リオとフランが話している間に皿を洗い終えてファレナも仕事に行く準備をする。
2人がまだ話しているので、ファレナは自分の部屋に向かい、真剣を取りに戻る。
ベットの横の壁に立てかけてある真剣は、手作りの鞘に入った状態で結構使い込まれているのだろう、少し傷が入っていた。
「よしっ」
剣を手に取り部屋を後にするとそのまま玄関の壁に引っ掛けたカバンを腰にまく。
このカバンは、剣を固定する役割などもになっているので、鞘を固定する。
ガリガリ……
玄関のドアの外からドアを引っ掻く音が聞こえる。ドアを開けると、ベルベッドの帰還だった。
玄関に置いてある布でベルベッドの足元や口元を綺麗にしてから、家の中に入れた。
ベルベットは満足気にフランたちの元へと歩いていく。
ファレナも出発の準備を終えて外に出ようと空きっぱなしになっていた扉に手をかける。
「リオー、そろそろ私行くねー」
奥からリオの「あいよー」という返事が聞こえる。
ファレナは1歩外に出た