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最強エルフとスキルを失った冒険者  作者: 霧野夜星


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第九十八話 戦神襲来

 カーナは燃え盛る大量の火を放ち、それらが逃げる魔導皇帝ヘルモーズに一斉に向かっていく。


「ぎああああああああ!」


 超高温の火が半径二十メートル以上の規模になり、魔導皇帝ヘルモーズを飲み込む。そして一瞬で魔導皇帝ヘルモーズは灰になって消滅した。


「ピエーーーン!」


 魔導皇帝ヘルモーズより先に飛んで逃げたフレースヴェルグは、カーナの火系最上級魔法の余波を受け、翼の一部が燃えて地面に落下し倒れる。


「す、凄い火の魔法ね」


 エリス将軍の所から戻って来たアンナが、カーナの魔法を見て驚く。彼女は長い間生きているが、これほど強力な火の魔法を見たのは初めてだった。


「ああ、俺の想像を越えていた」

「凄いニャ! カーナ!」

「修行をして身に着けた力じゃないから、そんなに褒められても困るんだけどね」

「それで敵のボスを倒したから、これで戦いは終わりか」

「いえ、あの白い鳥はまだ生きてます」


 ハクレイはフレースヴェルグから魔力の波動を感じとっていた。生物が魔力を発生させているということは、生きているということだった。


「あの白い鳥、Sランクモンスターのフレースヴェルグだっけ」

「京也、ちょっといい?」

「ん? 何だ?」

「あの子、もふもふじゃない?」

「は?」


 カーナはフレースヴェルグの毛並みに興味があるようだ。


「この前、言っていた私が乗るモンスター、あの子がいいかも」

「まじか? あの鳥はさっきの奴の配下じゃないのか?」

「ヘルモーズとかいう奴はもういないんだから、今は自由の身じゃないかな」

「じゃあ、ちょっと近くに行ってみるか」


 京也達は離れた場所で倒れているフレースヴェルグの所まで飛んで行く。


「ピエーーン」

「うん、敵意はないみたいだな」


 京也はハクレイから降りて、やけどで動けないフレースヴェルグに近づく。敵意察知に反応がないので、彼はフレースヴェルグに敵意がないことがわかった。


「アンナ、回復を頼む」

「はーい」


 アンナはフレースヴェルグに近寄り、回復魔法を発動する。


「エクストラヒール!」


 動けなくなっていたフレースヴェルグの体が暖かい光に包まれ、翼のやけどが治っていく。


「ピエーーーーン!」


 やけどが治ったフレースヴェルグは元気よく鳴く。そしてカーナの前に移動して頭を下げる。


「えっ? これは?」

「カーナの従魔になりたいんでしょ。ほとんどのモンスターは自分より強い者には従うからね」

「さっきの火の魔法でカーナの実力を認めたということか」

「ピエーーーーン!」


 フレースヴェルグはその通りだと言ってるように元気に鳴く。


「やった! それじゃあ、これからよろしくね」

「ピエーーン!」


 カーナは魔物使いの称号を手に入れ、Sランクモンスターフレースヴェルグを従魔にした。


「カーナ。この子に名前をつけてあげたら、きっと喜ぶよ」

「そうね……」


 カーナはフレースヴェルグの名前を考えている。その時、


「むっ!」


 京也の敵意察知に反応があり、その方向を見る。すると空中に一人の男が浮いているのを発見した。


「誰かいるぞ!」

「ほう、俺の存在に気付いたか。気配は消してたんだがな」


 そう言って豪華な鎧と槍を持った男が空中から降下して地面に着地し、槍をフレースヴェルクへ向ける。


「さて、そのフレースヴェルグは俺の討伐対象なんだ。倒させてもらうぞ」

「なっ、そんなことはさせないわ。この子は私の従魔になったんだから」

「そっちの事情は関係ない。俺は異常能力値モンスターを倒しに来たんだからな」

「駄目っ!」


 カーナは全身から全力の魔力を放出して、それを大量の火に変換する。


「この子を倒すと言うのなら、私が相手になるわ」

「ふん、やれるものならやってみろ」

「フレイムブラスター!」


 カーナが放った猛烈な勢いの大量の火が鎧の男の全身を飲み込む。


「やったニャ!」

「カーナの魔法で倒せない奴なんていないよ!」


 ニャオウとアンナがカーナの本気の魔法を見て勝利を確信する。


「うおりゃあっ!」


 だが鎧の男は生きていた。彼は気合を入れて、自分を飲み込んでいた火を吹き飛ばした。


「なっ」

「こいつ、生きてるぞ」

「つっ、こいつは驚いた。これほどのダメージを受けるのは二百年ぶりだ」


 カーナの魔法を受けても、鎧の男は少しのダメージしか受けていなかった。


「そうか、こいつ、火に耐性を持ってるのか」

「じゃあ、無属性魔法ならいけるはず!」


 カーナは再び全力の魔力を全身から放出して身にまとう。


「無駄だ。この戦神インドラに、そんな魔法は効かんぞ」

「戦神だと!」


 京也は以前、竜の谷で戦った戦神アレスのことを思い出した。


「戦神だか何だか知らないけど、私の全力なら!」

「待て、カーナ。駄目だ!」

「えっ?」


 京也に止めらめ、カーナは魔法の発動を止める。


「奴が戦神なら、神族の領域を持ってるはず」

「神族の領域って?」

「すべての攻撃ダメージを九割カットする神族が持ってるスキルだ」

「九割! そんなの反則でしょ!」

(私の魔力、十三万が九割カットされたら一万三千。それでもかなりのダメージだと思うけど)

「ほう、人間のくせによく神族の領域のことを知ってたな。だがそれだけじゃないぞ。俺はすべてのダメージを半分にする金剛のスキルを持ってるからな」


 戦神インドラは神族の領域と金剛のスキルで、カーナの魔法のダメージを95%カットしたのである。


(一万三千からさらに半分、つまり魔力六千五百のダメージしか与えられない)


 カーナはなぜ自分の魔法で戦神インドラを倒せなかったのか理解できた。


「お前達がグレーターデーモンとヨルムンガンドを倒したのを見ていた。そしてそこのフレースヴェルグを倒せば、三体の異常能力値モンスター討伐の依頼は完了だ」

「ピエーーン」


 フレースヴェルグはカーナの陰に隠れ、弱い声で鳴く。


「確かにお前の魔力は凄かった。神界にもこれほどの魔力を持つ者はいない。神界に連れていけば、異常能力値のことが何かわかるかもしれ……」

「ふざけるな!」


 京也は戦神インドラの言葉を聞いてカーナの前に立ち、戦神インドラと対峙する。

「今度は俺が相手だ。勝手なことはさせん!」

「キョウヤ」


 カーナは京也のことを頼もしく感じる。


「お前がグレーターデーモンを倒したのも見ていた。あの光の投擲技は見事だった。ん? そういえば、あの技はどこかで見たような」

「戦神アレスのスパイラルクラッシュだろ」

「そう! それだ! むっ? 何でお前がアレスの必殺技を使える?」

「俺が戦神アレスを倒したからだな」

「バカな! アレスも神族の領域を持ってる。人間ごときに倒せるはずがないだろ」

「神族の領域は神族の領域で相殺できる」

「!」 


 戦神インドラは京也の言葉を聞いて、とっさに槍を構えて警戒する。


「お前、何者だ?」



 次回 銀の竜殺し VS 戦神インドラ に続く

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