第九十七話 業火のエルフ VS 魔導皇帝ヘルモーズ
魔導皇帝ヘルモーズはフレースヴェルグに下降するように指示し、地面に近づくとフレースヴェルグの背中から飛び降り、フルーレ国軍の前に着地する。フレースヴェルグは魔導皇帝ヘルモーズより少し後方に着地して、翼をたたんで大人しくしている。
「何だ? 奴は?」
「わからん。だが、強い魔力を持ってるみたいだ」
「それより後ろの白い鳥はフレースヴェルグじゃないか?」
「あのSランクモンスターの奴か!」
アイアンゴーレム部隊を壊滅させた最前線にいる兵士達は、魔導皇帝ヘルモーズとフレースヴェルグの姿を見てざわついている。
「よくもやってくれたな。下等な人間の分際で」
魔導皇帝ヘルモーズは全身から強大な魔力を放出して身にまとう。
「あいつ、何かする気だ!」
「私が障壁でみんなを守るよ」
魔導皇帝ヘルモーズが魔法で攻撃するのか、物理で攻撃するのか、カーナが注意深く見ている。カーナは現在、物理と魔法、両方同時に防ぐスキルは持っていなかったので、どちらでもすぐに展開できるように準備していた。
「火竜召喚!」
魔導皇帝ヘルモーズは地面に五つの巨大な魔法陣を作り出し、そこから五体のレッドドラゴンを召喚した。
「うわわわわ! ドラゴンだー!」
「レッドドラゴンか!」
「ご、五体も!」
目の前に現れた五体のレッドドラゴンに兵士達が恐怖する。
「モンスター召喚か?」
「魔法障壁!」
カーナは魔法障壁を広範囲に展開して兵士達を守る。
「ブフアアアア!」
五体のレッドドラゴンは同時に口から火のブレスを吐き出した。だがカーナの魔法障壁によって、その火のブレスを防ぐことができた。
「さすがカーナニャ!」
「すごい魔法障壁ですね。こんなに広範囲なのは見たことがありません」
「アンナ! エリス将軍に俺達がしんがりを務めるから、全軍撤退するように話してきてくれ」
「わ、わかった!」
カーナの肩に乗っていたアンナは、空を飛んで後方にいるエリス将軍のいる場所に向かう。
「俺達はもっと前に行くぞ! 奴の注意を引き付けながら、まずドラゴンを倒す」
「私も行くよ」
魔導皇帝ヘルモーズは、兵士とアイアンゴーレムが戦っていた場所の先にいるので、京也達は前方へ移動する必要があった。
「ああ、魔法発動妨害はオフにしてるから、カーナは魔法で左の二体のドラゴンを頼む。俺は右の二体をやる。ニャオウは真ん中を頼む」
「了解」
「わかったニャ」
ハクレイに乗った京也とニャオウは空を駆けて最前列に向かって飛んでいく。カーナも飛行魔法でその後を追う。
「全軍! 撤退!」
エリス将軍はアンナが到着する前に撤退命令を出す。それを聞いた兵士達は急いでこの場から走って撤退を始める。
「エリス将軍!」
「アンナさん。やはり来ましたか」
フルーレ国軍が撤退を始めた後、アンナが後方にいたエリス将軍の元に到着する。
「私が言う前に撤退命令を出すなんて、さすがの状況判断ね」
「やはりキョウヤさんは撤退するように言ってましたか」
「うん。しんがりはまかせて撤退するように言ってたよ」
「キョウヤさんが奥の手を使えば、あの敵を倒せるんですよね」
「ふふふ。さすが、わかってるねー」
「はい。キョウヤさんの強さを信頼してるので、撤退を決めることができたんですよ」
「なるほどね。じゃあ私はキョウヤの所に戻るわ」
「では私も撤退します」
エリス将軍もこの場から撤退を始め、アンナは京也達の所へ飛んでいく。
「サンダーストーム!」
「マジックジャベリン!」
「コールドストームニャ!」
魔導皇帝ヘルモーズがいる最前線に向かって飛んでいる京也達は、五体のレッドドラゴンに向かって魔法を発動する。
「ガアアアアア!」
「ゴアアアア!」
京也達の魔法が命中した五体のレッドドラゴンは、彼等のそれぞれの一撃で倒れた。その隙に最前線にいた兵士達は急いで撤退する。
「なっ、次の戦いに投入する予定だったレッドドラゴンが全滅だと! むっ!」
魔導皇帝ヘルモーズは、レッドドラゴンを倒した京也達を目視する。
「き、貴様か! グレーターデーモンを倒したのは!」
魔導皇帝ヘルモーズは怒りながら全身に強大な魔力を放出して身にまとう。一方の京也達は魔導皇帝ヘルモーズの前に着地する。
(兵士達が撤退する時間稼ぎをする必要があるな)
「お前は何者だ!」
京也は戦いの前に魔導皇帝ヘルモーズに話しかける。
「ふん、よく聞け! 我こそが魔導皇帝ヘルモーズ! この大陸を統一し支配するため、神から力を与えられた絶対的支配者だ!」
「魔導皇帝ヘルモーズ? 聞いたことないわね」
「これから大陸全土に響き渡る名だ。まあ、この場で死ぬ貴様等には関係ない話だがな」
「あーはいはい」
カーナは魔導皇帝ヘルモーズの脅しに何も感じてないようだ。
「ちっ、それより貴様だ!」
「は? 俺?」
「支配者の目のスキルで見ていた。貴様がグレーターデーモンを倒したのをな!」
支配者の目とは、従魔の見たものを自分も見ることができるスキルである。魔導皇帝ヘルモーズは南の古城に居ながら、配下のアークデーモンの視界を通じて京也の戦いを見ていたのである。
「グレーターデーモンは俺が最初に召喚して強化した優秀な悪魔だった。それを貴様が……絶対ゆるさん!」
「モンスターを強化? そんなことができるのか?」
「神から与えられし支配者のスキルだ! 貴様等凡人には使用も理解もできないだろう」
(結構おしゃべりな奴だな。だいぶ時間を稼げた)
撤退したフルーレ国軍は、この場からかなり離れることができた。
「あー、私も質問があるんだけど、あなた、火の魔法を無効化するスキルとか持ってない?」
「むっ、そうか。お前が火の魔法でヨルムンガンドを倒した魔法使いか。フハハハ! 無効化スキルなどなくても、エルフ程度の魔法で我が魔法障壁を突破できるわけないだろ」
「じゃあ、突破できるかできないか、試してみましょうか」
そう言ってカーナは全身から全力の魔力を放出する。その魔力の強烈な波動によって周囲の大気と大地が震えだす。
「なっ! バカな!」
「す、凄い……今まで感じた魔力を遥かに越えている」
京也と魔導皇帝ヘルモーズが、カーナの全力の魔力を近くで感じ驚いている。
「今まで本気の魔力を使う必要がなかったからね。これが魔力65535の力よ」
「魔力65535だと! そんな魔力があるわけが……」
(カーナの魔力はここまで凄かったのか。俺がカーナの魔力の半分って言ってたのは間違ってた)
京也は手加減していたカーナの魔力が、彼女の全力の魔力だと勘違いしていた。
「さらに私は魔法強化のスキルを持ってるから、ここから二倍の威力の魔法が使えるの」
「は? 65535の二倍……魔力十万以上だと!」
魔導皇帝ヘルモーズはその桁違いの魔力の値が信じられなかったが、目の前のカーナの魔力を見て、それを信じるしかなかった。
「魔法障壁を展開するならご自由に」
カーナは全身にまとっている魔力を超高温の大量の火に変換する。
「うああああああ!」
魔導皇帝ヘルモーズは絶望し、この場から逃げようとする。後ろにいたフレースヴェルグも魔導皇帝ヘルモーズを乗せずに飛んで逃げ出していた。カーナは逃げようとする魔導皇帝ヘルモーズを狙って火系最上級魔法を放つ。
「フレイムブラスター!」
次回 戦神襲来 に続く




