第九十五話 銀の竜殺し VS グレーターデーモン
カーナは人差し指の先に魔力を集中させて、いつでも魔法を放てる状態になる。
「いや、止めた方がいい。軍と一緒に行動してる時は、勝手に戦うのはまずい」
「私が敵を倒した方が被害が少なくなるとしても?」
「うーん。それは難しい判断だな。でも、もし不測の事態になった時、後で責任問題が発生するかもしれない」
「あー、自分勝手な行動でほかの人に被害が出たらまずいものね。わかった。なら今は止めとく」
そう言ってカーナは指先に集中させてた魔力を消す。
「もちろんカーナの先制の魔法攻撃をエリス将軍が認めてくれれば、何も問題ないんだけどな」
「さっきの作戦会議で、私達はグレーターデーモンとヨルムンガンドを担当するって決まったんでしょ。ならその通りにしましょ」
「そうだな。じゃあ、敵軍の位置は確認したし、いったん戻るか」
京也達はこの場では戦わず、加速スキルを使ってフルーレ国軍の陣に戻ってきた。
「エリス将軍、敵の場所を確認してきました」
「お疲れ様です。さすが速いですね」
「敵軍の位置は、ここからだいたい五キロの辺りでした」
「ありがとうござます。偵察部隊よりキョウヤさん達に頼んで正解でした」
ハクレイの加速スキルのおかげで、フルーレ国軍は正確な敵の位置情報を手に入れることができたのである。
「罠と柵の設置はもうすぐ終わるので、なんとか間に合いそうです」
「ああ、作戦のことで、ちょっと聞きたいことがあるんですが」
「はい。なんでしょう?」
「最初に俺やカーナの魔法で、先制攻撃するというのはどうでしょうか」
「はい。それは私も最初に考えました。ですがお二人には敵のSランクモンスターとの戦いに専念してもらって、確実に倒して欲しいんです。グレーターデーモンとヨルムンガンドは、通常より強い変異種だと報告がありました。私達ではとても倒せないでしょう。でもほかのモンスターなら私達だけでも倒せます。あの二体を倒せるのは、キョウヤさん達しかいなんいです」
「なるほど、納得しました。そこまで考えてるんですね」
「二体のSランクモンスターを倒した後は、キョウヤさん達にもほかのモンスターとも戦ってもらうことになると思います」
「了解しました。俺達はそのように動きます」
その後、ディザストーム軍を迎え撃つ準備が完了する。京也とニャオウはハクレイに乗って最前列にいて、そのとなりにカーナが立っていて彼女の肩にアンナが乗っている。
「グレーターデーモンは俺達が必ず倒すぞ」
「わかったニャ!」
「じゃあ、ヨルムンガンドは私にまかせて」
「私もついてるから、何にも心配いらないよ」
カーナとアンナが一緒にいるのは、京也の魔法発動妨害を使うとアンナの魔法も使えなくなるからである。京也と一緒にいるハクレイとニャオウも魔法が使えなくなるが、ハクレイは高速移動担当で、ニャオウはいざという時、邪神化でルミナスドラゴンになって京也と共に戦えるので、一緒に行動することにしたのである。
場面は王都に向けて進軍中のディザストーム軍がいる場所に変わる。
「しかし遅いな。アイアンゴーレム」
「それはしかたありません。移動が遅い代わりに攻撃力と防御力は高いですから」
ディザストーム軍のグレーターデーモンとアークデーモンは、背中の翼を広げて空中に浮きながら話している。
「まあいい。王都を破壊するのに役立ってもらおう」
「そういえば、王都を攻める作戦はあるんですか?」
「そんなものはない。力押しで何とかなるだろ……」
グレーターデーモンはそう言いながら、ナンブの街で戦った戦神パラスアテナのことを思い出していた。
(人間にも強いのがいるのは確かだ。油断せず、作戦を立てるか)
グレーターデーモンは王都ヴェスタを落とす作戦を考える。
(石化魔法は駄目だ。あれはMPを使いすぎる。一度、町全体に使ったら次の魔法が使えなくなる)
グレーターデーモンは魔力は異常能力値だったが、最大MPは通常のグレーターデーモンと同じなので、何度も広範囲に魔法を使うことはできなかった。
(となると、やはりヨルムンガンドが城壁を壊し、全軍で王都内に侵入するしかないな。あの槍の女戦士が出てきたら、魔力が枯渇してもあれを使うしかない)
グレーターデーモンは何か強力な奥の手を持っているようだ。
「グレーターデーモン、どうかしましたか?」
「いや、何でもない……ん? あれは……」
空中を移動しているグレーターデーモンは、前方で布陣しているフルーレ国軍を発見する。
「人間達の軍だ。俺達を待ち構えていたか」
「王都の城壁を頼って戦うと思ってましたが、まさか出てくるとは」
「ああ、この平原では隠れる場所がない。ここでは一方的な戦いになるだけだろ。愚かだな、人間どもは」
グレーターデーモン達は、自分たちの勝利を何も疑わず進軍していく。
場面は京也達が待機してるフルーレ国軍の陣に戻る。京也達も前方に迫ってくるディザストーム軍の姿を確認していた。
「どう、キョウヤ。グレーターデーモンは見つけられた?」
「うーん。グレーターデーモンみたいのが二体見える。いや、体の大きさが違うような気がするが……」
京也はすでに望遠眼のスキルを使い、ディザストーム軍が接近して来るのを確認していた。だがグレーターデーモンらしき存在が二体見えたので、すぐに接近しなかったのである。
「グレーターデーモンが二体いるの?」
「わからん。小さいほうはアークデーモンかもしれない。もうちょっと近づいてくれば、はっきり見えるんだが」
「なら少し待った方がいいかもね。どっちもグレーターデーモンじゃないって可能性もあるし」
「そうだな、なら今のうちに……ラグナヴァリス、槍モード!」
京也はハクレイに乗ったまま腰の神剣ラグナヴァリスを抜いて、剣の姿から槍の姿に変化させる。
「それが錬金したラグナヴァリスの力?」
「ああ。剣と槍を合成させたから、どっちの姿にもなれるんだ」
「変形する武器って、いかにも男の人が好きそうよね」
「ロマン武器って奴だな。ん?」
京也はカーナと話をしながらディザストーム軍の方を見る。
「ん、やはり大きい方がグレーターデーモンか」
二体いるデーモンのうち、体が大きな方がグレーターデーモンだろうと京也は推察した。アークデーモンとは以前戦ったことがあり、小さい方がそのアークデーモンだったことを確認できたからである。
ちなみにゲームであるレジェンドワールドでは、グレーターデーモンとアークデーモンは色が違うだけの姿だった。
「よし、敵が魔法を使う前に接近するぞ。ハクレイ、頼む」
「はい。加速!」
ハクレイは加速のスキルを発動し、ディザストーム軍に向かって空を駆けて突き進む。京也、ニャオウ、ハクレイはとてつもない速さでグレーターデーモンに接近する。
「むっ! 何だ?」
グレーターデーモンは猛スピードで接近してくる京也達に気付く。その京也はハクレイに乗りながら、槍状態の神剣ラグナヴァリスを投げる体勢になる。
(デーモンというくらいだから光属性に弱いとみた)
「シャイニング・スパイラルクラッシュ!」
次回 業火のエルフ VS ヨルムンガンド に続く




