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第〇〇九話 神界の女神

 Cランクパーティ赤き烈風の女性冒険者の一人に、京也は仲間にならないかと誘われた。


「え? ええと……」


 いきなりの勧誘に戸惑っている京也だったが、赤き烈風のほかのメンバーが先に口を開く。


「ちょっと待って。彼と私達では実力が違いすぎるわ。私達は彼の足手まといにしかならないわよ」

「そ、それはそうかもしれないけど、彼がいれば私達はもっと上のランクに上がれるでしょ」

「でもそれは私達の力ではないわ。借り物の力でランクが上がっても、あとで痛い目をみることになるよ」

「……」


 京也を誘った女性冒険者が、仲間の言葉に言い返せないでいる。今のやり取りを黙って聞いていた赤き烈風のもう一人のメンバーが京也に話しかける。


「悪いな、キョウヤ。こっちから誘っておいてなんだけど、そういう訳だから」

「ああ、気にするな。それより俺はあれで地上に帰るけど、君達はどうする?」


 京也はこの部屋の奥にある魔法の力で宙に浮いた青色のクリスタルを指さす。そのクリスタルはレジェンドワールドにもあった地上へ瞬間転移できる「帰還のクリスタル」だった。


「私達も帰るわ。そうだ! あなたにはマンティコアから助けてもらったし、ご飯でもおごらせてよ」

「それはいい案ね。それでさっきのもなかったことにしてね」

「ああ、わかった」


 こうして京也と赤き烈風の三人は地上へ帰っていった。



 場面は神界の神々の城の一室に変わる。


「うーん。どうも上手くいかない」


 赤い髪の女神が、水晶玉が組み込まれた何かの装置に手をかざしながら作業をしている。そこへ青い髪の女神がやってきた。


「何が上手くいかないの?」

「あっちの世界から強い人間を呼びたいんだけど、どうもシステムに不具合が多くて困ってます」

「ああ、邪神を倒す人間を呼ぼうとしてるのね」

「そうです。邪神ベルザインを倒す英雄を呼びたいんです」


 赤い髪の女神は、違う世界の地球という星の日本という国から英雄を呼ぼうとしていた。彼女は日本のゲームクリエイターに、この剣と魔法の世界のことを夢で見せて同じような世界観のゲームを作らせることに成功した。そのゲームこそ「レジェンドワールド」である。赤い髪の女神はレジェンドワールドで強いキャラの能力をそのままでこちらの世界に呼び出し、自分が管理してるこの世界の敵である邪神ベルザインを倒させようとしていたのである。


「でも呼ばれた人間はいい迷惑よね。彼等からみたら誘拐されて、今までの生活を奪われ、命をかけて戦えって言われるんだもの」

「そのことなら考えてあります。まず邪神ベルザインを倒せたら元の世界へ帰るか、こっちに残るか選んでもらいます。もちろん帰る時は、こっちに呼んだ時間に戻して帰ってもらいます」

「ふーん。でも邪神を倒せずに死んじゃったらどうするの?」

「その時は、呼んだ時と同じ時間に自動的に元の世界へ戻るように設定してあります。彼等は夢の中で戦ったという記憶しか残りません」

「へー。色々考えてるのね。で、その英雄はもう呼んでみたの?」

「まだですよ。不具合が多すぎて修正が間に合わないんです」


 赤い髪の女神はまだプレイヤーを呼んでないと思っているが、彼女の知らないところで、すでに英雄召喚は始まっていた。だがその英雄召喚には不具合があり、京也はスキルや所持品がすべて消滅してしまったのである。


「こちらの世界に呼び出すシステムに不具合があって、さらにプレイヤーがこちらの世界で使うスキルの調整もまだ終わってないんです」

「そんなんで邪神ベルザインが復活するまでに英雄を呼べるの?」

「わかりません」

「まあ、間に合わなくても人間達が滅ぶだけだし、よくあることよ」

「私が管理する世界でそんなことさせません。絶対、最強の英雄を呼んでみせます!」


 赤い髪の女神は、また水晶玉が組み込まれた装置を操作し始めた。



 場面はフルーレ国の水の街セレスの冒険者ギルド内に変わる。そこの巨大な掲示板の前に京也が立っていた。


「Cランクの盗賊団討伐依頼があるな」


 その依頼書には参加希望者は今日の午前十時までに、二階の第一会議室に集まるように書いてある。


「複数の冒険者で討伐するのか。雷魔法も手に入れたし参加してみるか」


 京也はまだ対人戦に抵抗があったが、これがこの世界のルールなのだと思いながら参加することを決断する。


「まだ少し時間があるな。少し買い物でもしてくるか」

 

 今は午前九時なので、京也は冒険者ギルドを出て近くで食べ物や雑貨の買い物して時間をつぶしてから、午前十時の十五分前に冒険者ギルドに戻り、二階の会議室へ入る。


「もう集まってるのか」


 会議室には多数の椅子と机が並んでいて、そこに十人くらいの冒険者が座っていた。京也も適当に空いている椅子に座る。


「あいつ銀の竜殺しじゃないか?」

「ああ、ソロでレッドドラゴンを倒した奴だ」

「だがCランクだろ」

「まだギルドに登録して日が浅いんだろ。あいつはランクで判断しないほうがいい」


 京也の姿を見てほかの冒険者達がひそひそ声で話している。すると会議室に冒険者ギルドの男の職員が入っていた。


「これだけ集まったか。お、轟雷の四剣もいるじゃないか」


 轟雷の四剣というのはBランク冒険者四人のパーティーの名前である。このCランク盗賊討伐依頼はCランク以上なら受けられるので、Bランクの冒険者も参加していた。


「それと……銀の竜殺しか。これは頼もしい」


 ギルド職員は京也のことを見ながらそう話す。


「後は皆Cランクだな。うむ。この戦力ならいけるだろう。では今回の詳細を説明する。先日、森の中を移動中の商人の馬車が十五人程度の盗賊団に襲われ、品物と商人を奪われた。同行していた護衛任務を受けたCランクの四人パーティは盗賊団に勝てる見込みがないと判断し逃げ出した」

「マジかよ!」

「依頼人、見捨てて逃げ出したのか!」


 ギルド職員の話を聞いていた冒険者達がざわついている。


「話は最後まで聞け。彼等はその後、ひそかに引き返し盗賊団をつけてアジトを発見した。そのおかげで盗賊団のアジトを発見できた。よって今回は商人を救出して盗賊団を壊滅させるのが目的だ」

「なるほど、無理に戦って全滅するより、いったん引いて商人を助けるチャンスを作ったのか」


 ここまでの話を聞いていた轟雷の四剣の一人はそう考える。


「いや、今回は運よく商人達が殺されなかったが、手荒い盗賊だったら彼等は皆殺しになってただろ」

「確かに護衛対象を放置するのはギルド規約違反だ。彼等にはそれなりの処分が下されるだろう。だが最悪の状態は回避できた。商人もCランクパーティも全滅して盗賊団のアジトもわかならいままだったら、さらに被害者がでることになっていただろう」


 残された商人達は、身代金を払うから命だけは助けてくれと盗賊達と交渉していた。そのおかげで今回は殺されずに済んだのである。

 ギルド職員はさらに盗賊団の隠れ家の場所や賞金首の盗賊の情報を冒険者達に教えている。


「盗賊団のほとんどが戦士タイプだが、魔法使いも一人いるらしいから注意してくれ。それと具体的な作戦はアジトの現場を見てから決定する」


 会議が終わり、参加する冒険者達は水の街セレスの北門に移動する。そこに大型の馬車が二台用意されていて、京也も馬車に乗り込み盗賊のアジトへ出発する。


「あんたが銀の竜殺しか。俺達は轟雷の四剣だ。あの竜との戦いは見ていたよ」

「どうも」

「まあ、見ていたといっても速すぎて倒した後の姿しか見てないんだけどな」

「あんた本当にCランクなのか? ソロでドラゴンを倒すCランクなんて聞いたことがない」


 轟雷の四剣のもう一人の金髪の男が二人の会話に入ってくる。


「俺は冒険者ギルドに入ったばかりだからな」

「やはりそうか。ならギルドに入る前は何をしてたんだ? どうやってその力を得た?」

「んー、修行(レベル上げ)かな」


 京也はゲームのレベル上げで強くなったとは言えないのでなんとかごまかす。


「修行でそこまで強くなれるのか?」

「きっと師匠が凄いんだろ。世を捨てて森で暮らしてる伝説の剣豪とか」

「ま、まあ、そんな感じかな」


 京也が適当に話を合わせていると、馬車が目的地に到着した。そこは盗賊のアジトから少し離れた森の中の道だった。



 次回 盗賊団との戦い に続く

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