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最強エルフとスキルを失った冒険者  作者: 霧野夜星


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第八十九話 新たな戦神

 神界の神々の城の一室で、女神アフロディーテが地上世界を調べる巨大な装置を操作している。そこへ青い髪の女神がやって来た。


「主神はまだ眠ってたわ。あの様子じゃ、しばらくは起きないでしょ」

「それは少しホッとしました。こちらは少しまずいことになってます」

「まずいこと?」

「はい。地上世界のことを色々調べてるんですが、異常能力値のモンスターの存在を確認しました」

「ああ、前にエンシェントドラゴンが強くなってたってやつ?」

「はい。現在わかってる異常能力値のモンスターは三体、グレーターデーモン、ヨルムンガンド、フレースヴェルグです。その三体は現在フルーレ国にいるようです」

「ふーん。それはフルーレ国は災難ね。それでその三体がエンシェントドラゴンみたいに普通より強くなってるのね」

「はい。恐らく人間達には対応できないくらい強いです」

「それってまずくない? フルーレ国が滅ぶかも」

「すでに手は打ってあります。戦神の一人に地上世界に行ってもらってます」

「なるほど、それなら安心ね。それで何で異常能力値のモンスターが出現したか理由はわかったの? 例の次元転送装置の不具合のせい?」

「それは違います! 次元転送装置は地上世界のモンスターには干渉してません。たとえどんな不具合が次元転送装置にあっても、モンスターに何かが起きるわけないんです」


 次元転送装置と地上世界のモンスターは、システム的に完全に切り離されているので、次元転送装置の不具合が原因ではないと女神アフロディーテは考えていた。


「それじゃあ、原因は別件か」

「邪神です! 絶対、邪神のせいです!」

「証拠はあるの?」

「ないですけど……絶対に邪神のせいなんです!」

「わかった、わかった。それで異常能力値のモンスターというのは、ほかにもいるの?」

「まだわかりません。今、世界管理装置で検索してますが、まだ三体だけしか見つかってないんです」

「そうか。あっ、もうひとつ質問。異常能力値のモンスターって言ってたけど、異常能力値の人間はいないの?」

「それもわかりません。今は地上世界のモンスターを検索中なので、人間の検索までは手が回らないんです」

「そっか。それじゃあ、色々わかるまで、まだ時間がかかりそうね」



 場面はフルーレ国のナンブの街に戻る。街の城壁の前にいるグレーターデーモンが降伏勧告した後、人間達の様子を見ている。


「降伏だと?」

「アイツら、ディザストーム軍とか言ってましたよ」

「グレーターデーモンは強そうだが、俺と神竜の牙が相手すれば、なんとかなるだろう」


 グレーターデーモンの降伏勧告をアイン将軍とアーサーは聞く気はないようだ。するとグレーターデーモンはさらに叫ぶ。


「我らが主、魔導皇帝ヘルモーズ様は寛大なお方だ。降伏すれば、お前等に奴隷の身分を与えるだろう」

「奴隷だと!」

「ふざけるな!」

「降伏などするものか!」


 グレーターデーモンの言葉を聞いた兵士達が怒り出す。


「ふー、やれやれ。ヘルモーズ様の命令だから仕方なく降伏勧告したが、下等な人間が状況判断などできるわけないか……まあいい。では攻撃するとしよう」


 グレーターデーモンが戦うことを決め右手を上げる。その直後、地震が起きる。


「何だ?」

「地震か?」

「でかいぞ!」


 その地震がしだいに大きくなっていく。


「うおおおお!」

「これは……ただの地震じゃない」

「ふふふ、行け! ヨルムンガンド!」


 その時、ナンブの街の城門の下の地面から巨大な蛇が現れ、城門を粉々に破壊した。さらに城門付近の城壁も一緒に破壊している。


「うわああああ!」

「へ、蛇だ! 巨大な蛇に城門を壊された!」

「あんなのどうやって戦うんだ……」

「フハハハハ! ヨルムンガンド! いいぞ、もっと壊せ!」


 この場に現れた巨体な蛇はヨルムンガンドだった。ヨルムンガンドは神話に出てくる巨大な毒蛇で、体長は百メートルを越えていて全身が白いうろこで覆われている。


「なんてことだ。城門がこうも簡単に……」

「ヨルムンガンドってSランクモンスターですよね」

「ああ。これでSランクが二体か。これはまずい気がする」


 アイン将軍とアーサーは、ディザストーム軍の戦力を見誤っていたことにこの時点で気付く。


「よし、全軍、攻撃開始せよ!」


 グレーターデーモンの号令により百体のドラゴニュートが空から、二百体のワーウルフは破壊された城門と城壁から街の中に侵入する。


「ブフアアアア!」

「うわああああ!」

「魔法だ! 魔法で攻撃しろ!」


 ドラゴニュートは空中から火のブレスを吐き出して兵士達を攻撃し、さらに持っていた槍や剣で接近戦も始める。ドラゴニュートの全身を覆っているうろこは硬く物理攻撃が効きにくいので、兵士達は魔法を使って戦っている。


「ウオオオオオオン!」

「盾を構えろ! 隊列を乱すな!」

「おお!」


 ワーウルフは超高速で移動し兵士達に鋭い爪で襲い掛かるが、フルーレ国の兵士達は数の多さを生かして互角以上に戦っている。


「シャーーーーーッ!」

「うわっ! こっちに来るぞ!」

「逃げろ!」


 ヨルムンガンドは破壊された城壁のそばで暴れていて、兵士達は何もできず逃げるしかなかった。


「これはまずい、いくら兵力で勝っていても勝てるかどうかわからない」

「……撤退だ。ここは撤退する。俺と神竜の牙がしんがりを務める。頼めるか?」

「では俺達はあのでかい蛇を足止めします」

「わかった。気を付けろよ。俺はグレーターデーモンと戦う」


 アーサーはヨルムンガンドに向かい、途中でエルフ、ドワーフ、人間の三人の仲間と合流してから戦いを開始する。城壁の上の兵士と街の中の兵士達はアイン将軍の命令で戦いながら撤退を始めている。


「ちっ、あの蛇だ。あの蛇のせいで……」


 アイン将軍が暴れているヨルムンガンドを見てそうつぶやく。城門と城壁を破壊され、フルーレ国軍は城壁を使った戦い方ができなくなっていた。


「ちっちっちっ、違うな。ヨルムンガンドがお前達の敗因ではない」


 グレーターデーモンはそう言いながらアイン将軍に近づき、空中で停止して全身から魔力を放出する。


「はあああああ!」

「なっ、バカな! 何だ? その魔力は!」


 アイン将軍は、グレーターデーモンから常識を越えた強大な魔力を感じ取り恐怖する。


「フハハハ! 恐れるがいい! お前達の敗因は俺がここにいたことだ!」

(だ、駄目だ、とても勝てる気がしない……そういえばこの感覚、そうだ。銀の竜殺しと戦った時と同じか)


 アイン将軍が京也との戦いのことを思い出していると、グレーターデーモンは全身から放出した魔力を大量の闇に変換する。


「まずい!」

(あんなのを受けたら終わりだ)


 アイン将軍は城門から飛び降りて大量の闇から逃れようとする。


「カオスフレア!」


 グレーターデーモンは体の周囲の大量の闇を広範囲に放った。その瞬間、突然、空中から大量の光が放たれ、グレーターデーモンの闇系最上級魔法が消滅する。


「何っ! 誰だ?」


 グレーターデーモンが光が放たれた方を見ると、全身に豪華な鎧を身に着け、槍を持った美しい女性が空中に浮いていた。その女性は全身にグレーターデーモンを越える魔力をまとっていた。


「私の名はパラスアテナ! グレーターデーモン、お前の相手は私だ!」



 次回 戦神パラスアテナ に続く

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