第八十七話 褐色の少女
「神炎の剣ねぇ」
「それも結構、中二病的よね」
「カーナの火と俺の剣を合わせた名前なんだけど」
京也達がパーティ名を話し合っていると、窓からニャオウと精霊状態のハクレイが入ってきた。
「ニャ? カーナニャ!」
「元気になったんですね」
「えっ? ハクレイ……よね」
精霊状態のハクレイを見てカーナが驚く。精霊状態のハクレイは普通の人には見えないのだが、キョウヤの仲間になったカーナはその姿を見ることが出来た。
「ああ、ハクレイは精霊化のスキルでこの姿になれるんだ。いつもの姿だと部屋の中に入れないからな」
「可愛い……キョウヤ! 私もエアリアルユニコーン欲しい……」
「欲しいと言われてもハクレイはやれないぞ。そういえばハクレイはほかのエアリアルユニコーンのいる場所は知ってるのか?」
「知らないですよ。私以外のエアリアルユニコーンに会ったことがありませんし」
「そうか」
「それは残念……と、その話は置いといて、ニャオウ、ハクレイ。不死迷宮では助けてくれてありがとう」
「そんなこと気にしなくていいニャ!」
「そうですよ。カーナ」
「あとカーナが私達の仲間になることが決まったから」
アンナがニャオウとハクレイにこれまでの経緯を話す。
「やったニャ! これからはカーナと一緒ニャ!」
「カーナがいれば心強いですね。というかキョウヤとカーナが組んだら、もう誰も勝てないと思うのですが」
「私もそう思う。これはもうズルいよね」
「いいじゃないか。この力のおかげで、モンスターがいる危険な世界でも安全に暮らせるんだし」
「今はそれよりパーティ名の話でしょ。それでどうするの?」
脱線した会話をカーナが元に戻す。
「私はキョウヤの神炎の剣でいいよ。ほかに何も浮かばないし」
「私は何でもいいです」
「パーティの名前なんて、ニャオウはどうでもいいニャ」
「そうね。私も神炎の剣でいいかな。私の火が入ってるし」
「じゃあ、『神炎の剣』で決まりだな」
『Sランク冒険者パーティ神炎の剣』がこの瞬間、誕生した。
「そうだ。キョウヤの仲間になったんだから、スキルをもらえるのよね」
「ああ、仲間になったらひとつだけ俺のスキルをコピーして渡せる」
「カーナは前、老化無効がうらやましいって言ってたよね」
「うん。ああ、そうだ。キョウヤもスキルドロップシステムでスキルを集めたんでしょ」
「そうだ。もしかしてカーナも?」
「そう、私もよ」
「それじゃあ、これから俺達がモンスターを倒したら、二人でスキルを入手できるってことかな」
「たぶんね。それで老化無効もいいんだけど、私がずっと探してるのは時間停止できる異空間収納なの。不死迷宮に行ったのもそれを探すためだし」
「ふふふ、持ってる。時間停止持ってるぞ」
「えっ? マジで?」
「ああ、ミミックを倒した時、手に入れた」
「やっぱミミックか。私もそうじゃないかと思ってミミックを探してたの」
「じゃあちょうどいいな。カーナに時間停止を渡そう」
「うん、お願い」
こうしてカーナのメニューシステムのアイテム収納に時間停止機能が追加された。
「ありがと、キョウヤ」
「じゃあ、これから冒険者ギルドに登録に行くか」
「登録が終わったら、神炎の剣の最初の依頼を受けるの?」
「いや、あと三日くらいは休もう。カーナも病み上がりだしな」
「何から何まで悪いわね。気を使わせちゃって」
「気にしなくていいぞ。俺ももうちょっとダラダラしたいし」
「それが本音か!」
「まあ、もう一生遊んで暮らせるだけの金はあるし、これからはスローライフを楽しもうぜ」
「ああ、これはスローライフを送れないフラグだわ」
その後、京也達は神炎の剣を登録するため冒険者ギルドに出かけた。
数日後、場面はフルーレ国の邪神の神殿の地下十三階に変わる。ここは以前、京也が邪神ベルを倒した場所である。
「フフフ、いい場所を見つけました」
邪神ベルが封印されていた封印の間に、一体のアークデーモンが立っていた。アークデーモンはAランクモンスターで知能も高く、かなりの強さを持っている。
「ここを私の新たな拠点に……ん? 誰ですか?」
「ここかな……」
アークデーモンがいた封印の間に、一人の少女が入ってきた。その少女は年齢が八歳くらいで肌は褐色で黒いローブを身に着けている。
「おやっ、可愛いお客さんですね」
(このダンジョンは人間の少女がひとりで来れるような所ではない。見た目にはだまされんぞ)
アークデーモンは褐色の少女を警戒する。
「それでここに何か用でしょうか? お嬢さん」
「お前……ベルか?」
「ん? ベルというのは邪神ベルのことでしょうか? そんなわけないでしょう」
「違う。お前、ベルじゃない……でもここから、かすかにベルの魔力を感じる」
「それは邪神ベルがここに封印されていたので当然ですよ。もういないですが」
「いない?」
「私がここに来た時には邪神の封印は解かれていて、ここには誰もいませんでした」
「……」
褐色の少女はアークデーモンの言葉を聞いて何かを考えている。
「それで話を戻しますが、お嬢さんは何の用でここに来たのでしょうか?」
「ベルに会いに来た」
「ほう、邪神にですか」
その時、アークデーモンは褐色の少女が隠している強大な魔力に気付く。
「ほう、お嬢さん。かなりの魔力を持っているようですね。隠しててもわかりますよ」
「……」
褐色の少女はアークデーモンから敵意を感じ取る。
「その魔力、私がいただきます!」
アークデーモンはいきなり褐色の少女に突撃し、首を掴もうと右手を突き出す。
「ラアアアアアア!」
それに対し褐色の少女は口から破滅のブレスを吐き出した。その破滅のブレスが突撃してきたアークデーモンを飲み込む。
「ぐはっ」
(か、体が……!)
破滅のブレスに飲み込まれたアークデーモンの体がボロボロになり、さらに力を失い膝をつく。
「ぐっ、このブレ……ス……は……」
ボロボロになったアークデーモンは意識を失ってそのまま倒れ、何も残さず消滅した。
「ここにベルはいない……」
褐色の少女はここに邪神ベルがいないことを知り、この場を後にした。
場面はフルーレ国の南部にある古城が見える森の中に変わる。ここにBランク冒険者パーティが潜んでいて、南の古城の様子をうかがっている。彼等はこの南の古城に危険なモンスターの群れが住み着いたという情報を確かめるために、ここに来ていた。
「どういうことだ?」
「ああ、古城が修復されている」
この南の古城は放置されてから何十年も経ち、劣化してボロボロだった。それが所々が修復されていたのである。
「誰かが修復してるのか?」
「わからん。よし、もう少し近づくぞ」
冒険者達は気配を消しながら森の中を進み、南の古城の周囲がよく見える場所まできた。
「あれは……」
「ああ、間違いないドラゴニュートだ。何体いるんだ?」
冒険者達は南の古城の周囲に複数のドラゴニュートの姿を確認した。ドラゴニュートとは、全身が硬い緑色のうろこで覆われていて、頭がドラゴン、体が人間の姿で、背中に二枚の翼があるBランクモンスターである。
「百体はいないか?」
「ああ、あれだけのドラゴニュートの群れに襲われたら、街一つくらい簡単に消し飛ぶぞ」
「急いでギルドに報告に戻ろう」
冒険者達はモンスターに見つかる前に、この場から素早く撤退した。
次回 ディザストーム軍 に続く




