第〇〇八話 最下層の戦い
京也は全身から魔力を放出して、それを大量の雷に変換する。
「サンダーストーム!」
放たれた大量の雷が嵐のように広範囲に拡散して洞窟内に放たれる。
「ギャーーーッ!」
「ギギャーーッ!」
洞窟内に広範囲に放たれた雷をジャイアントバットは避けることができず、六体すべてに命中して次々と地面に落下して動かなくなった。
「うーん、暗い場所での雷魔法は目に悪いな」
一応、光球で自分の周りだけ明るくしているが、周囲は暗いので光を放つ雷魔法は目に刺激が強かった。
「まあ、倒せたからいいか」
京也は地面に落ちている六体のジャイアントバットを回収し解体する。
ジャイアントバットの羽×12
ジャイアントバットの牙×12
「これでよし、あとはスキルを」
京也はスキル画面を確認する。
聴覚強化
聴覚が強化される
常時発動スキル オンオフ設定可能
「ほお、聴覚強化か。これはゲームにはなかったけど、何かに使えそうだな。試しに使ってみるか」
京也が耳に意識を集中させる。すると聴覚強化スキルが発動する。
「きゃーーっ!」
「うわっ!」
洞窟の奥のほうから複数の女性の叫び声が聞こえてきた。
「何かやばそうだ。急ぐか!」
京也は急いで洞窟を走っていく。洞窟内は暗く、まっすぐな道ではないので全力で走れなかったが、彼は可能な限り速く進む。そして洞窟の最下層の広い場所に到着する。そこでは三人の女性の冒険者のパーティーがマンティコアと戦っていた。
マンティコアは体長四メートルくらいで、ライオンの体で背中に翼があり、頭が人のような姿のモンスターである。そしてマンティコアは人の言葉を発して魔法を唱えることができるCランクモンスターだった。
「つ、強い!」
「このマンティコア、普通の奴より強いぞ!」
「コールドストーム!」
マンティコアは三人の女性の冒険者に向かって広範囲に極寒の冷気を放った。
「キャーッ!」
「もう駄目だ!」
その時、京也がこの場に現れて三人の女性の冒険者を両手と肩に抱えて走り、マンティコアの氷系上級魔法を回避した。
「なっ!」
「ち、ちょっと! どこ触ってるの!」
「降ろして、もらえます?」
京也は抱えていた三人の女性の冒険者を地面に降ろし、腰のラグナヴァリスを抜いてマンティコアに向けて構える。
「こいつがこの洞窟のボスのマンティコアだな」
「ガルルルル」
マンティコアと京也がにらみ合う。
「俺が奴を倒していいか?」
「いいけど、あいつ、異様に強いのよ」
「そうよ! 普通じゃないわ!」
「問題ない、オーラブレード!」
京也は猛スピードで突撃しマンティコアの体をラグナヴァリスで切り裂いた。
「ギャーーーーッ」
体を斬られ致命傷を負ったマンティコアが地面に倒れる。京也は地面に横たわったマンティコアを回収する。
「すごっ!」
「あのマンティコアを一撃かよ」
「今の超速い動き、私には見えなかった」
三人の女性冒険者が、京也の戦いを見て驚いている。その京也はアイテム画面を確認している。
マンティコアの魔石×1
マンティコアの爪×8
マンティコアの毛皮×1
「よし、これで討伐完了だ。あとは……」
京也はスキル画面を確認する。レジェンドワールドではボスを倒した時のスキルの習得率が百パーセントなので、何かのスキルを習得しているはずと彼は考えていた。
魔法強化
魔法の威力が二倍になる
常時発動スキル オンオフ設定可能
「おお、これはゲームにもあった優秀なスキルだ」
「あ、あのー」
京也がスキル画面を確認していると三人の女性冒険者が話しかけてくる。
「ありがとうござ……」
「あれ、あなた、どこかで……」
「あっ、この人、銀の竜殺しだ!」
「銀の竜殺し?」
三人の女性冒険者は、昨日のモンスターの軍団との戦いにも参加していて、京也がレッドドラゴンを倒したことを知っていた。そして銀の鎧の京也がドラゴンを倒したことから、ほかの冒険者達から銀の竜殺しという通り名を付けられたのである。
「私達はCランクパーティの赤き烈風よ。あなたは?」
「おれはキョウヤ。Cランクの冒険者だ」
「え? Cランク? でもレッドドラゴンを倒してたよね」
「ああ、それでDランクからCランクに上がったんだ」
「あの強さでCランク……」
彼女達は、京也が自分達と同じCランクということが信じられなかった。
「俺はまだ冒険者ギルドに登録したばかりだからな」
「あー、冒険者になる前にすでに強かったのか」
「まあ、そういうこと……ん?」
京也は気配感知でモンスターの気配を感知する。
「何か来る」
「え?!」
京也は腰のラグナヴァリスを抜いて構える。その構えた方向から一体のモンスターが現れた。
「おやっ、このあたりに実験中のマンティコアがいたはずですが、あなた達が倒したんですか?」
丁寧な言葉で話しているが、そのモンスターは強烈なプレッシャーを放ちながら近づいてくる。
「あ、あいつは!」
「アークデーモンだ!」
京也は現れたモンスターの名前を知っていた。アークデーモンはレジェンドワールドにも登場する闇属性のモンスターである。全身が黒紫色で人のような姿をしていて、頭には二本の角があり、背中には二枚のこうもりのような翼を持っている。
「あ、アークデーモンってAランクパーティが相手するモンスターだよ!」
「なんでCランクの洞窟にアークデーモンが……」
赤き烈風の女性冒険者達が、強敵の出現に動揺している。
「私が強化実験していたマンティコアを、君達が倒したんですか?」
この場にいたマンティコアが普通より強かったのは、アークデーモンの強化実験のせいだったようだ。
「マンティコアは俺が倒した」
京也はラグナヴァリスを構えながらアークデーモンに接近する。その行動は女性冒険者達が戦いに巻き込まれないようにするためだった。
「なら私の実験の邪魔をしたあなたに罰を与えましょう」
近づいてきた京也と戦うため、アークデーモンは全身に強大な魔力を身にまとう。
「ダークスマッシャー!」
アークデーモンが全身にまとう大量の魔力を体の前で集中させ、直径一メートル程度の闇の球を作り出し、京也に向けて放つ。
「はっ!」
それに対し京也はラグナヴァリスの剣身に光をまとわせ、その闇の球を切り裂く。その光の斬撃によって闇の球が真っ二つに割れながら消滅する。
「むっ、光の魔法剣ですか」
アークデーモンはその言葉が最後の言葉になった。京也の持つ剣が光の魔法剣だと認識した瞬間、
「オーラブレード!」
「ギャーーーッ!」
京也は一瞬でアークデーモンに接近し、光の斬撃を放ってアークデーモンの体を一刀両断にして倒した。
「す、すごい!」
「アークデーモンを一撃で!」
「そりゃレッドドラゴンを一人で倒してるんだから当然か!」
(人型のモンスターを斬るのは、まだ慣れないな。でも回収はしとくか。Aランクモンスターの素材は貴重そうだし)
京也はアイテム画面を開き、倒れたアークデーモンを回収して解体する。
アークデーモンの魔石×1
アークデーモンの角×2
闇の指輪×1
「おっ、装飾品もドロップしたか。じゃあ、スキルのほうは……」
エナジードレイン
相手の経験値とスキルを奪い自分の物にする
連続使用不可 使用者と同種族にのみ有効
スキルを奪う時 対象が複数の場合 同時に奪えるのは三つまで
消費MP 100
「イヤイヤイヤ。これ、おかしいだろ。俺が知ってるゲームで一番えげつないエナジードレインは相手のレベルを下げるという効果だが、これはそれ以上のぶっ壊れスキルだ」
エナジードレインの能力を見て、京也はこのスキルの危険性を感じた。レジェンドワールドのエナジードレインは相手のHPを吸収するスキルだが、京也が習得したエナジードレインはその効果が変わっていた。
「彼は何をしてるのかしら」
「さあ」
女性冒険者達には京也のメニュー画面が見えないので、彼が何をしているのかわからなかった。
「ん? 俺のメニュー画面は彼女達には見えないのか。ならこのくらいにして」
京也はメニュー画面を閉じて、赤き烈風の皆がいる場所に戻る。その時、女性冒険者の一人が京也に話しかける。
「ねえ、キョウヤ。よかったら私達のパーティーに入らない?」
次回 神界の女神 に続く




