第七十六話 優勝者への褒美
アイン将軍の猛烈な勢いの火と、アーサーのドラゴンの力が宿る赤いオーラが舞台の中央でぶつかり、衝撃波が辺りに拡散する。
「おおおお!」
「すげーー!」
「なんて技だ!」
その衝撃波を感じた観客達が興奮している。二人は舞台の中央で、またつばぜり合いの恰好になった。
「うおおおおおおお!」
「うおおおおおおお!」
二人の最強の必殺技が激突し、その衝撃でお互いの体にまとっている防御魔法にヒビが入る。
「うおりゃああああ!」
アイン将軍がさらに気合を入れると彼の必殺技の勢いがわずかに優り、アーサーの体を守っていた防御魔法が砕け散った。その後すぐ、アイン将軍の防御魔法も砕け散った。
「勝者! アイン将軍!」
「ウオオオオオ!」
「凄い試合だった!」
「アイン! アイン!」
白熱した戦いを見た観客達が、声を上げて騒いでいる。
「ギリギリの勝利だった。俺が負けてもおかしくなかった」
「いえ、これが今の俺の実力です。ですが俺はもっと強くなりますよ」
「ああ、その時を楽しみにしてるよ」
アイン将軍とアーサーは舞台の中央で握手をかわし、観客達はそれを見て拍手している。
「手に汗握る、いい試合だったな」
王族専用の観戦席にいるエトワール王子は、立ち上がって二人に拍手している。
「うらやましい。俺もカッコイイ必殺技が欲しい」
一方の京也は椅子に座って冷静に拍手していた。
「キョウヤにはオーラブレードがあるじゃない」
「うーん。オーラブレードは剣士の基本的な技だからなあ。一応、スパイラルクラッシュはあるけど、あれは神槍ブリューナク前提の技で、剣で使ったら手元に戻って来ないんだよな」
「それニャら、キョウヤにニャオウのドラゴンテイルを教えてやるニャ!」
「キョウヤにはしっぽがないので、それは無理ですね」
「あー、人間は不便だニャー」
京也達がそんな話をしてると、闘技場の舞台の上では表彰式が始まろうとしていた。
「見事な戦いだった。アイン将軍!」
「はっ、お褒めにあずかり光栄です」
表彰式でエトワール王子が王族専用の観戦席から優勝者であるアイン将軍に労いの言葉をかける。
「恐れながら殿下にお願いがあります」
「願い?」
「はっ、優勝者への褒美として、ひとつ願いを聞いて欲しいのです」
「ふむ。いいだろう。俺にできることなら聞いてやろう」
「ではこの場で銀の竜殺しと戦わせてください」
「は?」
アイン将軍とエトワール王子のやりとりを椅子に座って聞いていた京也は思わず声が出た。
「おお! 銀の竜殺しか!」
「あのエンシェントドラゴンを倒したSランク冒険者か!」
「アイン将軍と銀の竜殺しの戦い! 俺も見たい!」
「俺も!」
アイン将軍の話を聞いた観客達が盛り上がっている。
「だそうだ。どうする? キョウヤ殿?」
「ええと……」
京也は即答できず悩んでいる。目立つのは嫌だったが、盛り上がってる観客達の空気を読んだ方がいいのかと迷っていた。
「できたら俺も二人の戦いを見てみたいがどうかな?」
「キョウヤなら楽勝でしょ!」
「そうニャ! とっとと倒してくるニャ!」
「そうです。キョウヤなら絶対勝てます」
(それが問題なんだよなー)
エトワール王子、アンナ、ニャオウ、ハクレイも戦いを望んでいたが、京也には心配ごとがあった。軍最強のアイン将軍を簡単に倒してしまっては、軍の信頼がなくなってしまうのではないかと考えたのである。
「エトワール殿下。俺が勝っても大丈夫ですか? その……軍の信頼とか」
「何だ? そんなこと考えていたのか。問題ない。一方的な戦いになっても大丈夫だ。勝てればの話だが」
「……わかりました。では戦います」
「よし! アイン将軍の願いを聞き入れ、これから特別試合を始める。アイン将軍、すぐに戦えるか?」
「はい! 今すぐにでも!」
「では、キョウヤ殿」
「わかりました」
京也は立ち上がり観戦席の一番前まで歩く。
「キョウヤ! 頑張って!」
「応援するニャ!」
「ご武運を!」
「おう!」
アンナ、ニャオウ、ハクレイの応援の言葉を聞いた京也は、跳躍のスキルを使い闘技場の舞台の上に着地する。
「おおおお!」
「あれが銀の竜殺しか!」
「思ってたより若いな!」
「かっこいいかも!」
京也の姿を初めて見た王都の人々がわいている。
「すまんな。キョウヤ。武人としての俺がどうしてもお前と戦いたがってな」
「こうなってはしょうがないですね。受けて立ちますよ」
「ふふふ、そうこなくっちゃな。燃えるいい試合をしようぜ」
アイン将軍は腕をまわして肩慣らししている。
「ではお二人に防御魔法をかけます」
舞台に上に神官が現れ、アイン将軍と京也に防御魔法をかける。
「というか、この防御魔法、凄くないですか? どんな攻撃でも一度だけ無効化するとか」
「いや、こいつには色々制約があってな。例えばこの防御魔法はこの舞台の上でしか効果がない。だから戦場では使えない」
「ああ、なるほど」
「それに一定以上の攻撃力を越えてしまうとダメージの無効化はできない。例えばエンシェントドラゴンの攻撃とかは防げないだろうな。まあエンシェントドラゴン級の攻撃力を持つ人間などいないから、どんな攻撃でも無効って言われてるんだよ」
(それはまずい。俺が攻撃したらアイン将軍が死んでしまう。これはうかつに攻撃できない)
京也はアイン将軍とどうやって戦うか作戦を考えている。
「では特別試合を開始します。ルールはこれまでと同じです。お二人とも、準備はいいですか?」
「俺はいつでもいいぜ」
「ええと、はい」
アイン将軍と京也は腰の剣を抜いて構える。
「では試合開始!」
「うおりゃあ!」
アイン将軍はいきなり京也に斬りかかる。それを京也は剣で弾いて防ぐ。アイン将軍はさらに連続で斬りかかるが、京也は剣で弾いたり斬撃をかわしたりしている。
「どうした! 攻撃してこないのか!」
「……」
「そんなんじゃ、俺は満足できないぞ! 早く本気を出せ!」
「……」
アイン将軍の猛攻に京也は反撃せず防戦一方だった。
「すごい勢いだ! さすが軍最強だ!」
「アイン様! かっこいい!」
「いいぞ! いけー!」
(これは参った。剣を弾くだけでも手加減が難しい。うかつに攻撃したらアイン将軍が死んでしまう)
京也はどうやったらアイン将軍を傷つけずに満足させ、さらに観客達の期待を裏切らずに戦うにはどうすればいいか考えていた。
(しかたない。アイン将軍のことはあきらめるか)
次回 銀の竜殺し VS アイン将軍 に続く




