第七十〇話 戦利品
京也は青く輝くラグナヴァリスを頭上から接近してきた戦神アレスに向かって突き出し、自分の魔力とニャオウの魔力をさらに注ぎ込む。
「ウオオオオオオ!」
「うおおおおおお!」
戦神アレスが近距離から放ったジェノサイド・ドラゴンフレアの赤い光線と、青く輝く京也のルミナスブレードが衝突した瞬間、青く輝く魔力が巨大化して戦神アレスの赤い光線を貫き、赤いオーラが飛び散って消滅した。
「バ、バカな!」
(俺の捨て身の魔力が負け……)
戦神アレスが赤い光線が消滅したことを認識した瞬間、巨大化した青く輝く光が戦神アレスの体を飲み込む。
「がああああああ!」
京也とニャオウが作り出した青く輝く光は、触れるものを消滅させる青い光となっていた。その消滅の力はエンシェントドラゴンの魂と融合した戦神アレスでも防げないほど強力だった。
「俺の……負けか……」
(ふん、結局、勝てなかったか……)
青く輝く光に飲み込まれた戦神アレスとエンシェントドラゴンは、何も残さず完全に消滅した。
「はぁ、はぁ、はぁ……やった……勝った」
「そうニャ! ニャオウ達の勝利ニャ!」
戦いの緊張から解放された京也は、邪神化を解きニャオウの頭の上でしゃがみ込む。強敵との戦いが終わり勝利を実感した京也は、ラグナヴァリスを腰のさやに納める。
「ニャオウ、とりあえず地上に降りてくれ」
「わかったニャ」
「そうだな。あのエンシェントドラゴンの死体がある場所に降りてくれ」
「あそこかニャ」
ニャオウは京也の指示した場所に着地する。その場所は戦神アレスの猛火のブレスによって焼き払われていたので、巨大なルミナスドラゴンの姿のニャオウでも降りれるスペースがあった。
「よっと」
ニャオウの頭の上にいた京也は地面に着地する。
「ニャオウも元に戻るニャ」
(この姿だと魔力が少しずつなくなってるニャ)
ニャオウは邪神化を解き、闇で出来たルミナスドラゴンの体が拡散し、元の三毛猫の姿に戻る。
「キョウヤー!」
京也達が戦ってた場所から離れた場所にいたハクレイとアンナが、京也とニャオウのいる場所に着地する。ハクレイは口に折れ曲がった神槍ブリューナクをくわえていた。
「ん? それは戦神の槍か?」
「そう、戦利品を拾ってきたよ」
ハクレイはくわえていた神槍ブリューナクを京也に渡す。
「見事に曲がってるな」
「神話級の武器には自動修復機能が付いてると思うから勝手に直ると思うよ」
「そうか。なら手荒く扱ってもいいか」
京也は折れ曲がった神槍ブリューナクをまっすぐに直せないか、力ずく元に戻そうとしている。
「ほっとけば直るんだから、そんなことしなくてもいいのに。それよりエンシェントドラゴンと戦神アレスを倒しちゃうなんて、凄いことだよ。もっと喜ばないと!」
「確かにな。今回だけは勝てるかどうかわからなかった。一つ間違っていたら死んでたかもしれない」
「でもニャオウのおかげで勝てたニャ!」
「ああ。今回はニャオウのおかけで助かった」
「ニャア!」
京也は神槍ブリューナクを直すのをあきらめて、しゃがんでニャオウの頭をなでている。そこへハクレイが今の戦いを見て思ってたことを京也に質問する。
「そういえばキョウヤは人型の敵と剣で戦うのは嫌がってましたよね。克服したんですか?」
「んー、今回はそんなこと考えてる余裕はなかったな」
「でも今回の戦いで慣れたんじゃない?」
「まさか。これからも人とは斬り合いはしたくない」
「まっ、そんなに簡単には慣れないか」
「俺は殺し合いなんて滅多にない平和な国から来たんだ。それだけは慣れないよ」
今回の戦神アレスとの戦いでは、京也は剣では相手にかすり傷くらいしか与えなかったので、トラウマにならずに済んだようだ。
「そんな話より、さっきの邪神化のことだよ。ニャオウがルミナスドラゴンになったことも驚いたけど、キョウヤがやけどから治った後の異常な闇……あれは多分、邪神の闇だと思う」
「邪神の闇? 今までの魔力で作り出した闇とは違うのか?」
「違うよ。邪神の闇は、欲望が大きくなればなるほど強くなる、ヤバい闇なんだから」
「そうなのか。よくわからなかったが」
「キョウヤが倒した邪神ベルも、邪神の闇は使ってなかった。封印が解けたばかりだから使えなかったのか、ほかに理由があったのかはわからないけど」
もし邪神ベルが欲望で強化される邪神の闇を使っていたら、京也はもっと苦戦していただろうとアンナは考える。
「うーん。難しいことは後で考えるとして、とりあえずエンシェントドラゴンの死体を回収しとくか。これだけ大きな物は軍が持って帰るのは大変だろうからな」
京也はアイテム画面を表示してエンシェントドラゴンの体と、折れ曲がった神槍ブリューナクを収納する。
「よし、後はステータスの確認だ。あれだけ苦労したんだから、かなりレベルが上がっただろ」
京也はステータス画面を表示する。
キョウヤ 16歳 人間
称号
竜殺し 魔物使い 邪神殺し 戦神殺し
レベル 315
HP 78561/78561
MP 8348/8348
攻撃力 7845
防御力 7813
魔力 7914
速さ 7894
「おお! レベルが百くらい上がってる! スキルはどうだ?」
魔法発動妨害
一定の範囲内にいる者の魔法の発動を妨害する
オンオフ設定可能
消費MP 効果範囲 効果時間により可変
スパイラルクラッシュ
武器に螺旋状の魔力をまとわせて攻撃する物理スキル
消費MP 80
「間違いなくエンシェントドラゴンと戦神のスキルだな」
「凄いニャ! ニャオウもレベルが281に上がったニャ!」
「私もすっごい上がってる。234って、すごっ!」
「私もレベルが266になってます。……ん? 私は新しいスキルを習得したようです」
「レベルアップでスキルを覚えたのね。それでどんなスキル?」
この世界ではスキルの習得は色々な方法があるが、モンスターはレベルアップでスキルや魔法を習得することが多かった。
「精霊化のスキルです」
「精霊化?」
「後で試してみようと思います。それより、そろそろエリス将軍達の所へ戻った方がいいのでは?」
「うん、たぶん、みんな心配してるかも」
「そうだな。みんなの所に帰るか」
「ニャア!」
京也、ニャオウ、アンナはハクレイに乗り、竜の谷の入り口にいるドラゴン討伐軍のいる場所に向かって空を駆けて行った。
場面はその竜の谷の入り口のドラゴン討伐軍のいる場所に変わる。
「いったい何が起こってるんでしょうか」
「わかりません。銀の竜殺しとエンシェントドラゴンが戦ってるとは思いますが」
エリス将軍とその部下が竜の谷の上空を見ながらそう話している。激しい京也達の戦いの余波がここにも届いていたのである。
(大きな魔力のぶつかり合いが終わった。キョウヤ達は生きてるようだ)
エリス将軍と一緒にいるフェンリルは魔力感知能力が高いので、京也達の戦いの様子がなんとなくわかっていた。
「ん? あれは……キョウヤさん達!」
エリス将軍はハクレイに乗ってこの場に飛んでくる京也達の姿を発見する。
次回 帰還 に続く




