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第〇〇六話 業火のエルフ

 京也が西門に到着してしばらくすると、冒険者達の前に二人の男が前に出て大声で話し始める。


「俺がこの水の街セレスの守備隊長だ」

「俺は冒険者ギルドのギルドマスターだ。よろしく頼む」


 ギルドマスターと守備隊長が今回の戦いの作戦を説明する。


「現在、西から千体を超えるモンスターの軍団がここへ向かってきている。だが心配は無用だ。こちらにはSランク冒険者、業火のエルフがいる」

「まず業火のエルフが広範囲魔法で先制攻撃する。それで敵の大半は倒せるはず。君達は残ったモンスターの掃討を頼む」

「よし、全員、門の前で待機してくれ。業火のエルフの魔法の後、門が開いたら戦闘開始だ」


 冒険者達は西門の前に移動する。ギルドマスター、守備隊長、カーナ、弓を持った兵士達は城門の上に布陣する。


「門が閉まってると外の状況がわからないな」

「外の状況は上の連中が見てるだろう。俺達は門が開いたら業火のエルフの魔法で弱ったモンスターを狩ればいいだけだからな」

(楽観的だな)


 ほかの冒険者達の会話を聞いていた京也は、Sランク冒険者がいても油断してなかった。


(モンスターの軍団ということは、それを指揮してる強い奴がいるはず。俺はそいつを狙う。カーナの魔法の後、そいつが残ってればの話だが)


 京也が戦いの方針を決めた時、西方向からゴブリン、オーク、コボルト、バンデッドウルフなどで構成されたモンスターの軍団が現れた。

 ゴブリンは緑色の皮膚の小型の鬼で、オークは豚の頭と太った体の人型のモンスターである。どちらも鉄の棍棒や木の棍棒を持っている。


「来たぞ!」

「全員、戦闘準備!」


 冒険者達は武器を構えて戦闘態勢になる。城門の上ではカーナが全身から凄まじい魔力を放出して身にまとう。その魔力の波動が渦をまいてカーナの周りを激しく舞っている。


「す、凄い魔力だ」

「信じられん、俺達の常識をはるかに超えている」

「これがSランクの冒険者の力か」


 この場にいるすべての者が、カーナの桁違いの魔力の凄さを近くで感じて驚いている。


(ほんとに凄い。俺も魔力はカンストしてるのに、彼女の魔力には足元にも及ばない)


 京也の魔力は999でカンストしている。レジェンドワールドではレベル99の魔法使い職でも魔力は500程度である。京也はそこから能力アップアイテムをドロップするモンスターを狩り続けて能力値をカンストさせたのである。

 だがカーナの魔力は京也の魔力を遥かに超えていて、能力値の限界を突破していた。その魔力はなんと65535だった。さらにカーナの最大MPも65535だった。まさしく桁が違っていたのである。


(千体くらいなら全力じゃなくてもいいわね。もし全力で魔法を使ったら、周りの自然に影響がでるかもしれないし)


 カーナは手加減して魔法を発動する。だがそれでも彼女の魔力が桁違いなのは変わらなかった。


「バーストフレア!」


 カーナは魔力を大量の火に変換して巨大な火の鳥を作り出し、モンスター軍団に向けて放った。その火の鳥がモンスター達を次々と飲み込んで燃やし、さらにモンスター軍団の中心部まで到達すると爆発して広範囲に火が拡散した。

 彼女の使った魔法は火系上級魔法だが、桁違いの魔力で放たれた魔法は、常識を超えた威力と範囲だった。


「グアアアアッ!」

「ギャーーーッ!」

「ゴアーーーーッ!」


 千体以上いたモンスターが次々と火に飲み込まれ倒れていく。生き残ったモンスターは、火に飲まれるのを免れた五十体程度だった。


「よし! ここからは俺達の番だ!」

「おお!」


 城門の扉が開かれ、冒険者達が、残っているモンスターに向かって突撃していく。


「ま、待て! 何か飛んでくるぞ!」

「あれは……」


 城門の外に出た冒険者達は、背中に二枚の翼を持ち赤く巨大なモンスターが、飛行しながらこの場に向かってくるのを発見した。


「あれはドラゴンだ!」

「まさか……レ、レッドドラゴン!」

「レッドドラゴンだと!」


 そのモンスターはレッドドラゴンだった。レッドドラゴンは、体長が十五メートル以上あり巨大な翼を持ち、全身が赤い竜のうろこでおおわれていた。


「ギャオーーーーーン!」


 レッドドラゴンが地面に着地して、大気が震えるほどの咆哮をあげる。すると冒険者達は恐怖で足がすくんでしまう。


「私が相手するしかないか」


 カーナがレッドドラゴンと戦うため、全身に魔力をまとい飛行魔法を発動する。


「フライ!」


 カーナの体が空中に浮いてレッドドラゴンがいる場所へ向かおうと飛び立つ。その時、カーナは地上を猛スピードで走る男を見た。


「速っ!」


 その男は京也だった。彼は加速スキルを使い高速でレッドドラゴンに接近する。


「跳躍!」


 京也はレッドドラゴンに接近すると腰のラグナヴァリスを抜いてジャンプする。


「オーラブレード!」


 続いてラグナヴァリスに魔力をまとわせ攻撃力を強化して、レッドドラゴンの首を狙って下から上へ振り上げる。


「ギャーーーッ!」


 その一撃でレッドドラゴンの首が斬り落とされた。レッドドラゴンの頭が地面に落ちて残った体が崩れ落ちる。


「な、何だ?」

「レッドドラゴンが倒れたぞ」

「業火のエルフの魔法か?」

「いや、近くに誰かいる」


 冒険者達はレッドドラゴンのそばにいる京也を見つける。魔力を帯びた剣を持つ京也の姿を見て、この男がレッドドラゴンを倒したのだと推測する。


「あいつか? あいつが倒したのか」

「わからん。俺には何が起きたのか、まったく見えなかった」

「おい! 残敵がこっちへ来るぞ! まず奴等を始末してからだ!」


 城壁の上のギルドマスターの声で、冒険者達は残ったモンスターと戦いを開始する。


「普通ドラゴンを倒すにはAランクのパーティーが複数必要なのに、彼一人で倒したということは、実力はSランクかもしれない」


 空中から京也がレッドドラゴンを倒したところを見ていたカーナは、彼の力に気付いたようだ。


「レジェンドワールドでは、ボスを倒した時のスキル習得率は百パーセントだった。ということは……」


 京也は残敵の掃討には加わらず、スキル画面を確認する。


 限界突破 

 累積経験値999999以上

 レベルが99以上 ステータスが999以上になる

 常時発動スキル


「これは……よっしゃー! これでまた経験値稼ぎができる!」


 京也は激しく喜んでいる。限界突破はレジェンドワールドに存在しないスキルだった。この世界に来てすでに経験値がカンストしていた京也は、敵を倒しても経験値がもらえなかったが、これからは経験値がもらえて、さらに成長できるのである。


「後は魔法だな。あとで魔法屋に行って魔法書を買おう。今回の討伐でかなりの金が稼げたはずだ」


 京也はレッドドラゴンを倒し、さらにその素材も売ることができる。それによって大金を手にするができるのである。


「うっしゃーー! 倒したー!」


 冒険者が残っていた最後のモンスターを倒し、この戦いが終わり緊急クエストが完了した。

 

「何とかなったな。だがどうしてこの街にモンスターの群れが襲ってきたんだ?」

「あのレッドドラゴンがモンスター共を率いていたんだろうが、目的はわからん」

「モンスターの習性で人間を襲ってきたのか、何者かの意思が存在してるのか」


 ギルドマスターと守備隊長が今回のモンスター軍団襲来の理由を色々推測してみたが、正しい答えはわからなかった。 



 後日、京也は今回の緊急クエストの報酬をもらうため冒険者ギルドにやって来た。


「キョウヤさんがレッドドラゴンを倒したんですよね」


 京也の冒険者ギルドカードの討伐情報を受付嬢が確認する。京也がレッドドラゴンを一人で倒したことはギルド内でも噂になっていた。


「まあな」

「ならキョウヤさんのカードに竜殺しの称号が追加されます!」

(ああ、そういえばゲームにも称号があった)


 京也の冒険者ギルドカードに竜殺しの称号が追加された。京也は確認していないが、彼のステータス画面にも竜殺しの称号が追加されていた。


「それでレッドドラゴンの素材はどうされますか?」

「魔石以外は買い取ってくれ」

「わかりました。手続きをするので、少々お待ちください」


 京也はギルド内の椅子に座りしばらく待っていると、受付嬢に名前を呼ばれ再びカウンターへ向かう。


「魔石以外のレッドドラゴンの素材を現金化すると、今回のキョウヤさんの緊急クエストの報酬は、全部で80000ゴールド(八百万円)です」


 受付嬢は、白金貨八十枚とレッドドラゴンの魔石をカウンターに取り出した。



 次回 原初の洞窟へ に続く

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