第五十一話 銀の竜殺し VS ブラックドラゴン
「ギャオオオオオオオンンン!」
ブラックドラゴンは咆哮をあげながらフルーレ国軍に向かって飛行してくる。
「うわわわわわ! ドラゴンだーーっ!」
「あれはブラックドラゴンだ! Aランクのモンスターでも最上位のやつだぞ!」
「駄目だ! ブラックドラゴンなんて勝てるわけない!」
ブラックドラゴンの姿を見たフルーレ国軍の兵士達が驚き動揺している。
「アイン将軍! 撤退しましょう! ドラゴンのブレスを受けたら軍が壊滅します!」
「逃げたら、奴は王都に向かうだろう。王都には対ドラゴン用兵器があるが、住民達に被害がでてしまうかもしれない」
「ならどうすれば……」
アイン将軍達がどうすればいいのか迷っている。普通、ドラゴンと戦う時は少数精鋭の部隊で対ドラゴン用兵器を用意して戦うのだが、今回フルーレ国軍はドラゴンとの戦闘の準備はしてなかった。
「みんな落ち着いて! 大丈夫よ! こっちには銀の竜殺しがいるんだから!」
第二軍団の兵士達もブラックドラゴンの姿を見て動揺していたが、エリス将軍が皆を落ち着かせる。
「銀の竜殺しか!」
「そりゃ、竜殺しだもんな。名前通り、奴なら倒せるかもしれない」
エリス将軍の声を聴いた兵士達が落ち着きを取り戻す。
「やっぱり俺が奴を倒す流れだよな」
「上位のドラゴンといってもキョウヤなら倒せるよ。邪神も魔王も倒したんだし」
「キョウヤが倒せないニャら、ニャオウが倒すかニャ?」
「いや、俺がやる。ハクレイ。地上に降りてくれ。不慣れな空中戦では分が悪い。地上で戦ったほうがいいだろう」
「了解です」
ハクレイはフルーレ国軍がいる場所の少し前に降りる。そして京也はハクレイから降りて腰のラグナヴァリスを抜く。
「みんなは少し離れて待機しててくれ。俺がピンチになったら助太刀を頼む」
「わかったニャ! キョウヤが倒せない時はニャオウが倒すニャ!」
「大丈夫でしょ。いざとなったら邪神化があるし」
「なるべく邪神化は人前では使いたくないんだけどな」
「では私達はエリス将軍の所まで下がります」
「ああ」
ニャオウとアンナを乗せたハクレイは、第二軍団のエリス将軍のいる場所に向かって走り出す。
「ギャオオオオオオオンンンンンン!」
ブラックドラゴンが咆哮を上げながら、京也に近づいて来る。
「ん? まずい!」
京也はブラックドラゴンの目線が自分ではなく、フルーレ国軍の方を向いているのに気付く。
「加速!」
京也は急いでフルーレ国軍の最前列まで移動する。
「ブフアアァァァァッ!」
ブラックドラゴンが空中からフルーレ国軍に向かって口から大量の火を吐き出した。
「火のブレスだ!」
「うわわわわわ!」
「魔法障壁展開!」
京也は巨大な魔法障壁を壁状に展開しブラックドラゴンの火の息を防いだ。その後、馬に乗ったエリス将軍が京也がいる場所まで来る。その近くにはニャオウとアンナを乗せたハクレイもいた。
「助かりました。キョウヤさん」
「エリス将軍、お久しぶりです」
「ギャオオオンン!」
ブラックドラゴンは上昇して高度の高い場所に移動し、フルーレ国軍の上空を旋回するように飛んでいる。
「降りてこないな」
「ブフアアァァァァッ!」
ブラックドラゴンは今度はフルーレ国軍の頭上から火の息を吐きだした。
「はっ!」
京也は今度はフルーレ国軍の頭上に水平に魔法障壁を展開して火の息を防ぐ。
「ギャオオオンン!」
二度も火の息を防がれたブラックドラゴンは、空中を旋回してフルーレ国軍の様子をうかがっている。
「やっぱり降りてこない。あいつ安全な空からしか攻撃しないつもりか!」
ブラックドラゴンは空の高い場所を飛んでいたので、人間の魔法ではここまで届かないだろうと考えていた。
「降りてこないなら落としてやるだけだ」
京也は全身から魔力を放出してそれを大量の雷に変換し、空に向かって解き放つ。
「サンダーストーム!」
「ギャアアアアア!」
空中に向かって広範囲に放たれた京也の雷魔法がブラックドラゴンに命中する。京也は広範囲に雷魔法を放ったので威力は弱まっていたが、そのおかげでブラックドラゴンに逃げ場はなかった。
「よし、当たった!」
全身が感電し大ダメージを受けたブラックドラゴンは、ふらふらになりながら落下して地面に着地する。
「ギャオオオンン!」
大ダメージを負ったブラックドラゴンだったが、すぐに立ち上がり咆哮をあげる。するとブラックドラゴンの全身が赤いオーラに包まれた。
「あれはドラゴンオーラ! 能力強化スキルよ!」
「それではあのドラゴンはもっと強くなるんですか?」
博識のアンナがエリス将軍にブラックドラゴンのスキルの解説をする。
「そうよ、あれは上位のドラゴン族だけが使える、すべての能力を強力するスキルなのよ」
「それではキョウヤさんがピンチなのでは……」
「大丈夫ニャ! 京也にも、じゃ……もぐもぐ」
ニャオウが邪神化のことを話しそうになり、アンナがすぐに口をふさぐ。
「どうしたの?」
「なんでもないの。それよりキョウヤでしょ」
「そうでした」
アンナとエリス将軍が京也を見る。
(邪神化とディメンションカッターは人前では使うのは止めておこう。となるとここは……)
「サンダーブレイズ!」
京也はラグナヴァリスに膨大な雷をまとわせた。それは京也が全力の魔力で作り出した特殊な雷だった。
(うおっ! 全力だとこんなになるのか)
剣身にまとっている雷が、十メートルを超えるくらいの雷のやいばになっていた。
「す、凄い魔力だ!」
「あんな雷、見たことない!」
「あれが銀の竜殺しの力か!」
京也の雷魔法を見たフルーレ国軍の兵士達が驚いている。
「グルルル……」
赤いオーラをまとってドヤ顔していたブラックドラゴンは、京也の雷とその魔力を見て後ずさりする。
「加速!」
京也は加速スキルを発動し一瞬でブラックドラゴンに接近する。
「うおりゃああああ!」
京也が十メートルを超える雷をまとったラグナヴァリスを振るい、それがブラックドラゴンに命中する。
「ギャアアアアアア!」
零夜の雷系最上級魔法によってブラックドラゴンは全身が感電し、さらに魂にも即死級のダメージを受ける。
「ガハッ!」
感電したブラックドラゴンは意識を失い、そのまま横に倒れて動かなくなった。
「やった!」
「すげーー!」
「ブラックドラゴンを一人で倒した!」
「しかも無傷で圧倒して倒したぞ!」
「銀の竜殺しの討伐履歴に、また新たなドラゴンが加わったわけだ」
京也の戦いを見ていた兵士達がわいている。京也はラグナヴァリスを鞘に戻してエリス将軍やハクレイ達がいる場所に戻る。
「お疲れさまでした。キョウヤさん。あと指名依頼を受けてもらってありがとうごさいます」
「指名依頼を出してくれれば駆け付けると約束しましたからね」
「それにしても京也さんは強いですね。前に会った時よりも強くなってるような」
「俺は強くなることが目的なんで、今日も指名依頼を出してもらって良かったですよ。今の戦いでまた強くなれます」
京也はエリス将軍と話しながらハクレイに乗る。
「お前が銀の竜殺しか」
京也とエリス将軍が会話してると、第一軍団を指揮していたアイン将軍が馬に乗ってやって来た。
次回 女神降臨 に続く




