第〇〇五話 モンスター軍団襲来
(私に冒険者ギルドの場所を聞くとは……ほかの国から来たのかな)
「私も今から冒険者ギルドに行くので、一緒に行きます?」
「いいのか?」
「ええ、一緒に行きましょう」
京也はエルフの女性と一緒に冒険者ギルドに向かって歩いていく。
(それにしても凄い鎧ね。私でも見たことがない)
エルフの女性は京也の装備品が気になっているようだ。
「あれが冒険者ギルドです。近かったでしょ」
「そうだな。あっ、ちょっと聞きたいんだけど、君は冒険者だよね」
「そうですけど」
「冒険者は丁寧語を話してるとなめられるから、ため口で話したほうがいいって何かで見たんだが」
「ああ、よく言われますね。でも私の場合、初対面の人にため口で話すのはちょっとできなくて」
「それで、ほかの冒険者に因縁をつけられたりしなかったのか?」
「名前が知られてない時は、そう言う奴もいましたけど、そういうのは再起不能にしてやりました」
「……」
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。私を襲おうとしないなら、私からは何もしません」
女性のエルフは微笑みながら京也にそう話す。
(笑顔が逆に怖い……)
そんな会話をしていると、二人は冒険者ギルドの入り口に到着する。
「さあ、入りましょう」
二人は冒険者ギルドに入る。水の街セレスの冒険者ギルドは出張所とは違って中が広く、たくさんの冒険者がいた。中は大きな掲示板と複数のカウンターと複数の椅子が配置されていた。
「ん? 想像してたのと少し違うな。ギルドの中にはバーがあると思ってたが」
「ああ、ギルドの中にバーがあると、酔っ払いのもめごとがおきるから、なくなりました。酔っ払いが新人を煽ったりすることがよくあったので」
「なるほどな」
京也がギルド内をキョロキョロしていると、ほかの冒険者達の言葉が聞こえてくる。
「おい、業火のエルフが来てるぞ」
「ほんとだ、Sランクが来るなんて珍しいな」
「一緒にいる男は誰だ? 業火のエルフはソロだろ」
エルフの女性を見て、ほかの冒険者達がざわついている。
「Sランク? 君、Sランクの冒険者だったのか。しかも通り名持ちとか」
(やっと私の凄さに気付いたか)
エルフの女性は得意げな表情になる。
(でもあまり動揺してないわね)
京也はSランクと聞いても、あまり気おくれしなかった。彼自身がすでにSランククラスの戦闘力を持っているからである。
「そういえば名前を聞いてなかった。おれはキョウヤだ。君は?」
「カーナです」
「じゃあ、カーナ、案内してくれて助かったよ。ありがとう」
「いえ、どういたしまして」
京也はカーナと別れカウンターへ歩いていく。カーナも別のカウンターへ向かって歩いていく。
「モンスターの討伐報酬を頼む」
「はい。ギルドカードを提示してください」
カウンターの受付嬢に冒険者ギルドカードを渡す。受付嬢は魔法の水晶の玉にカードをかざす。すると水晶の玉に討伐情報が表示された。
「ランクアップポイントがたまってますね。おめでとうございます! キョウヤ様は今日からDランクです!」
「もうランクアップか。意外と早かったな」
魔法の水晶にかざした冒険者ギルドカードの色が茶色から緑色に変化した。
「はい。こちらが討伐報酬320ゴールドです」
受付嬢は冒険者ギルドカードと共に金貨三枚と銀貨二枚を京也に渡す。
「モンスターの素材の買い取りもしてますので、その時はあちらのカウンターでお願いしますね」
受付嬢は左方向の大きなカウンターを指してそう話す。
「わかった」
京也は素材買い取りカウンターへ向かい、道中で狩った素材をアイテム画面を開いて取り出す。
「収納スキル持ちか。ほう、状態がいいのばかりだな」
買い取りカウンターの男の職員が素材の査定をする。
「キリがいいとこで全部で600ゴールドでどうだ」
「それで頼む」
「よし」
男の職員が京也に金貨六枚を渡す。京也はそれを収納してカウンターを離れる。
「さて、何か依頼でも受けてみるか。掲示板にたくさん依頼が貼ってあるし」
京也は巨大な掲示板の前に立つ。そこにはほかの冒険者も何人もいて依頼を探している。
「盗賊討伐のクエストもあるのか。平和のためには盗賊討伐クエストも受けたほうがいいんだろうけど、人相手に斬り合いをするのはなあ」
京也の武器は剣なので、それで戦う場合、盗賊を斬らなければならない。京也は元は平和な日本で生活していた普通の人間なので、人の血が飛び散る光景をリアルで見たいとは思わなかった。突きや蹴りで戦う手もあるが、攻撃力が999の京也の攻撃だと相手がどうなるか、あまり想像したくなかった。手加減して戦うとしても、その調節が難しかった。
「盗賊を殺すのは、もう仕方がない。もし見逃してしまうとさらに被害が出る可能性が高いし。だが、盗賊と戦うのは魔法を使えるようになってからだな。氷系で凍らせれば血を見ないで済むし、雷系で感電させるくらいなら大丈夫かもしれない」
京也は対人戦の場合、なるべく酷いことにならないような戦い方を考えている。
「火系と風系は駄目だ。想像してみるとけっこう……」
盗賊を火で焼くのと風で切り刻むのは止めておこうと京也は考える。彼がそんなことを考えている時、
「緊急クエストです! この街にモンスターの群れが向かって来ています! 冒険者の皆さんは可能な限り参加してください! 緊急クエストにはランク制限はありません。誰でも参加できます!」
冒険者ギルドの受付嬢が大声でそう叫んでいる。
「モンスターの群れってマジかよ!」
「この街、大丈夫なのか」
「心配ないだろ、この街には業火のエルフがいるんだぜ」
「そうだ! 俺達にはSランク冒険者、業火のエルフがいるんだ」
「俺達は、業火のエルフが討ち漏らした奴を掃討すればいいんだ」
「業火のエルフの魔法を受けてダメージを負った奴を倒すだけなら、俺でもできる。これはおいしい!」
ギルド内にいる冒険者が次々と緊急クエストに参加する。
「何か大変なことになってるようだ。俺も参加するか」
京也もクエスト受付カウンターへ向かい緊急クエストに登録する。そして受付嬢から詳しい説明を聞く。
「作戦の内容は戦う前にギルドマスターから指示されると思うので、それに従ってください」
「うむ」
「それと戦闘中に倒したモンスターの素材の回収はしないでください。倒したモンスターはギルドカードに登録されるので、戦いの後で倒した分の素材が分配されます」
「なるほど、乱戦の中、倒したモンスターを回収してる暇なんてないというわけか」
「はい。でも倒したモンスターの損傷が激しくて素材を回収できない時は、討伐数で貢献度が決まって、その割合で配分されます。それともうひとつ、止めを刺した者に討伐数が記録されるので注意してください」
「だいたいわかった」
「では西門へ向かってください。そこでギルドマスターから作戦の説明があります」
京也は冒険者ギルドを出て西の門へ向かう。街の中は大騒ぎになっていて、この街から脱出するため東門の方へ移動していく人がたくさんいた。
「これはゲームの防衛イベントのようだ。不謹慎だが、ちょっとワクワクしてしまうな」
そんなことを考えながら京也が西門へ到着すると、そこにはたくさんの冒険者と街の守備兵が集まっていた。
次回 業火のエルフ に続く




