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最強エルフとスキルを失った冒険者  作者: 霧野夜星


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第四十一話 神狼フェンリル

「冒険者が俺を仲間にだと!」


 京也の言葉を聞いてフェンリルは彼をにらむ。


(いきなりで怒らせたか……)

「今までこの地に来た冒険者は、皆、俺を倒すのが目的だったが、まさかそんなことを言う奴が来るとはな」

「それで俺がお前より強いことを示せば、仲間になってくれるんだよな」

「……」


 フェンリルは黙っている。


「お前達が俺より強いことはすでにわかっている。とくにそっちのエルフの魔力は俺では足元にも及ばない」

「ふふふ、さすが伝説のフェンリルは言うことが違うわね」


 フェンリルに強さを認められ、カーナは嬉しそうにしている。


「そっちの男もかなりの強さだ。それに……邪神化だと!」

「俺の持ってるスキルがわかるのか?」

「そうだ。俺の『ステータス鑑定』のスキルでな」


 ステータス鑑定は、相手の能力値と所持スキルを知ることかできるスキルである。ちなみにこの世界にはアイテム鑑定、土地鑑定など複数の鑑定スキルが存在する。


「邪神化って……」


 フェンリルと京也の会話を聞いていたカーナが邪神化という言葉に驚く。


「ああ、邪神ベルって奴を倒した時に手に入れたスキルだ。邪神化すると専用スキルが発動して、さらに能力値も上昇するらしい」

「らしいって、まだ使ったことないの?」

「ああ、邪神化して、もし心も邪神みたいになったらまずいかなって思って」

「ああ、確かにそれはありそうね」

「キョウヤ、今はスキルの話をしてる場合じゃなくて」


 話が脱線したのでアンナがそう指摘する。


「そうだ。フェンリルが仲間になるかどうかって話だった」

「うむ。恐らくお前が邪神化のスキルを使えば、俺に勝ち目はないだろう」

「ほう、邪神化ってそんなに凄いスキルなのか」

「当たり前だ。それは神の力を使うスキルだ。普通の人間が持つスキルではない」

「なら俺の強さも合格ってことでいいよな」

「ああ、強さは認めよう」

「それじゃあ……」


 京也は期待の目でフェンリルを見る。


「だが仲間になることはできない」

「えっ? 何で?」

「お前は冒険者だろう。なら色々な場所へ行くはずだ」

「まあ、そうだな」

「だからだ。俺は出歩くのが嫌いなんだよ」

「はっ?」

「俺はこの山に住み着いてから一度も山の外に出たことがない。自分のなわばりを出るのが嫌なんだよ」

(出歩くのが嫌って引きこもりか? 引きこもりのフェンリルか?)


 フェンリルの意外な性格に京也は驚く。


「ならちょうどいいわね」


 京也とフェンリルの会話にアンナが加わる。


「キョウヤはフェンリルに家を守ってもらいたいんでしょ。ならずっとキョウヤの家に住んでもらえばいいじゃない」

「おお、なるほど」

「俺に人間の家に住めだと?」


 フェンリルの表情がこわばる。


(人の家には住みたくないのか? また怒らせてしまったか)

「いいだろう」

「そうだよな。ずっと山に住んでたのなら人間の家になんて」

「俺はいいって言ったんだ」

「えっ?」


 京也はフェンリルが簡単に人間の家に住むと言うわけがないと思い込んでいた。


「俺は別に山が好きなわけじゃない。あちこち出歩くのが嫌いなんだ。だからお前の家を新たななわばりにすれば問題ない」

「じゃあ、俺の仲間になってくれるのか?」

「お前の家にずっと居ていいならな」

「おお、いつまででも居ていいぞ」


 フェンリルが仲間になることになり、アンナが口を開く。


「そうだ。キョウヤの従魔になるのなら名前をつけないと」

「名ならもうある。俺の名はフェンリルだ」

「フェンリルって種族名じゃないの?」

「俺の種族は神狼だ。フェンリルという名の神狼は俺だけだ」

「そうなのか。ならこれからよろしく頼むぞ、フェンリル」

「うむ」


 フェンリルの名が上書きされ、Sランクモンスターフェンリルが正式に京也の従魔になった。


「よかったわね。フェンリルが仲間になって」

「ああ、てっきりフェンリルと戦うことになると思ってたんだけどな」

「邪神化のスキルは使用者の能力が数倍に上昇する。そんな化け物と戦ってられるか」

「邪神化って、そこまで凄かったのか」

「当然だ。それに邪神化を使っても心までは変わらない。スキルの説明に書いてある以上のことは起こらないはずだ」


 京也はスキル画面を開いて確認する。


 邪神化

 邪神の力を得る 任意で解除可能

 邪神化することでステータスが上昇し神族の領域が発動する

 消費MP 一時間 1000


「確かに危ないことは書いてないな。なら後で試してみるか」

「フェンリル探しでニャオウは疲れたニャ、そろそろ帰るニャ」

「お前は何もしてないだろ。まあ、目的は達成したし、帰るか。ああ、そうだ。俺達はハクレイに乗って空を走って帰るけど、フェンリルは空は飛べないよな」

「空は飛べないが、地上を走ることは誰にも負けん。お前達がそっちのエアリアルユニコーンで空を走っても余裕でついていける」


 フェンリルは得意そうにそう話す。


(引きこもりなのに走るのが得意なのか。よくわからん奴だな)


 京也達がハクレイに乗り、水の街セレスに帰ろうとした時、カーナが思いついたことをフェンリルに質問する。


「そういえば、これから山の外に行くことになるけどいいの?」

「キョウヤの家まで行くのは我慢しよう。その代わり、家についたら絶対に出かけないからな」

(筋金入りの引きこもりね)


 こうして京也は新たにフェンリルを仲間にし、白狼神山を後にした。



 場所は水の街セレスの城門の前に変わる。そこで空を走ってきた京也達は、地上を走ってきたフェンリルと合流する。するとその様子を見ていた門番達が騒いでいる。


「そ、そいつは、まさかフェンリルか!」

「そうだ。俺の仲間になった」

「また銀の竜殺しか。今度はSランクモンスターを連れてくるとはさすがだな」

「ちゃんと従魔登録するから街の中に入っていいよな」

「ああ、従魔なら問題ない……よな」

「たぶん……」


 京也達は城門をくぐり水の街セレスに入る。するとSランクモンスターフェンリルと一緒にいる京也達を見て、街の住人達がざわついている。


「目立ってるわね」

「いつものことだ」


 水の街セレスの住人の注目を浴びながら、京也達は冒険者ギルドに行ってフェンリルの従魔登録をする。その後、京也の自宅に戻ってきた。


「ハクレイのようにフェンリル専用の部屋と扉が必要だな」

「それができるまで時間がかかるのだろ」

「まあ、すぐにはできないな」

「ならそれが完成するまで、俺は庭で寝ることにしよう。結構寝心地がよさそうだ」


 フェンリルは京也の家の庭の木陰の芝生に移動して横になる。


「カーナ、魔王ヘルロードの件はどうする?」

「まずはフェンリルの部屋を作ったらどう? その後、フェンリルに留守番してもらって、私達で魔族国アスラに行ってヘルロードを倒すってことで」

「わかった。それでいこう」

「じゃあ、キョウヤの錬金術、近くで見せてもらっていい?」

「それは構わないが、たぶんつまらないぞ」

「そんなことないよ。錬金術っていうのに興味があるし」

「じゃあ、私は部屋で休んでるね」

「ニャオウも疲れたニャ。お昼寝するニャ」

「私も部屋に戻ります」


 アンナ、ニャオウ、ハクレイは、京也の家の中に入っていく。


「さて、まずは大きなフェンリルが通れるドアを作るか。部屋は一階の西側でいいか」


 京也の家の一階の東側には、すでにハクレイの部屋があるので、その反対側にフェンリルの部屋を作ることにした。


「まずは買い物だな。材料を買ってきて、それで俺の錬金術のスキルでドアを作るんだ」

「ふーん。買い物か。なら私も付き合ってあげる」

「いいのか? アンナ達と一緒に部屋で休んでてもいいんだぞ」

「別に疲れてないし、買い物くらい付き合ってあげるわよ」

「そうか」


 京也はカーナと一緒に水の街セレスの繁華街に買い物に出かけることになった。


(これってデート……じゃないか。でも買い物が終わったら、喫茶店でお茶するくらいはいいはず)


 京也は少し期待しながらカーナと買い物に出かけた。



 次回 魔族国アスラへ に続く

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