第三十四話 オーガキング VS 銀の竜殺し
歩兵部隊にいる弓を持った兵士達が、向かってくる魔獣軍団に一斉に矢を放つ。その矢は、動きの速いバンデッドウルフにはなかなか当たらなかったが、体の大きなバトルボアには命中して、何本も矢が刺さったバトルボアは次々と倒れていく。
「歩兵部隊、冒険者部隊、戦闘開始!」
「おお!」
「行くぞ!」
バンデッドウルフとバトルボア、歩兵部隊と冒険者部隊の接近戦が始まった。
「バンデッドウルフ狩りなら任せろ!」
「バトルボアはこっちでやる!」
冒険者達はバンデッドウルフやバトルボアとは戦い慣れているので、有利に戦いを進め、次々と倒していく。それに加え、数で優っているフルーレ国軍なので、魔獣軍団はすぐに劣勢になった。
場面はゼウス共和国軍側に変わる。魔獣軍団がフルーレ国軍に向かうと、その後をヘイムダル副官率いるゼウス共和国軍が続いて進軍する。この動きは砦内にいるハイン王国軍を誘い出すための動きで、デルタ砦から兵が出てきたらすぐに反転して、ハイン王国軍に攻めかかる作戦だった。
「ヘイムダル様。魔獣軍団が劣勢のようです」
「このままではまずい。いや、まだオーガキングがいる。魔獣軍団長はうまくオーガキングを誘導してるようだ」
いつもは魔獣軍団の魔物使い達の言うことを聞かないオーガキングだったが、今回はおとなしくフルーレ国軍に向かって移動していた。オーガキングの後方に魔獣軍団の魔物使い達がいたが、彼らが何も命令しなくてもオーガキングは自らフルーレ国軍に向かっていた。
場面はフルーレ国軍側に戻る。魔獣軍団のバンデッドウルフとバトルボアはほぼ壊滅し、残るはデススネークとオーガキングだけになった。エリス将軍は作戦を考え、次の指示を出す。
「騎馬部隊は敵の後方にいるゼウス共和国軍に向かいます。歩兵部隊と冒険者部隊は、残る魔獣軍団の相手をお願いします。キョウヤさん達は……」
「俺達はオーガキングの相手ですね」
「はい。オーガキングと戦えるのはキョウヤさんだけです」
「わかりました。こっちはまかせてください」
歩兵部隊と冒険者部隊の左右に布陣していた騎馬部隊は、その機動力を使い後方のゼウス共和国軍に向かって走り出す。一方、京也はハクレイに乗ってオーガキングに向かう。
「ハクレイ、このままオーガキングに近づいてくれ」
「了解です、キョウヤ」
「ニャオウとアンナは魔法で邪魔な周りの奴等を頼む」
「まかせるニャ!」
「わかったよ」
ニャオウとアンナは、前方にいるデススネークを狙って魔法を放つ。
「フロストエッジニャ!」
ニャオウは複数の氷のやいばを作り出し、進路の邪魔なデススネークを狙って放つ。
「私もいくわよ! フラッシュレイ!」
アンナもデススネークを狙って、直径三十センチくらいの光線を次々と放つ。ニャオウとアンナの魔法のおかげで、オーガキングがいる場所まで魔獣軍団に邪魔されず、京也達は進んでいく。
「グオアアアアア!」
その時、オーガキングが咆哮する。それは周囲の空気が揺れるほどの声量だった。
「俺を待っていたのか? オーガキング!」
オーガキングはこの戦場に強者の気配を感じ取っていた。戦闘に貪欲なオーガキングは強者と戦うことが喜びなので、京也がいるフルーレ国軍に自分から向かっていたのである。
「いいだろう。その勝負、受けた!」
京也はハクレイに乗りながら全身から魔力を放出して魔法を発動する。
「サンダーブレイズ!」
京也は腰のラグナヴァリスを抜いて特殊な雷を剣身にまとわせる。
「ハクレイ! 奴の隣を全力で通り過ぎてくれ!」
「了解!」
ハクレイは猛スピードでオーガキングに向かって走る。ニャオウとアンナはハクレイの首元の上で身をひそめている。
「グルルルル」
ハクレイが走ってくるのを見て、オーガキングは持っていた巨大な鋼鉄の棍棒を振り上げて構える。
「グオアアアアア!」
オーガキングが猛烈な勢いで鋼鉄の棍棒を振り下ろしたが、ハクレイの高速の走りにその攻撃は空を斬る。
「うおりゃあああ!」
一方の京也は、ハクレイがオーガキングの横を駆け抜けるのと同時に、ラグナヴァリスを水平に振るって雷を放つ。
「ギギャアアアアア!」
オーガキングはその雷を受けて全身が感電する。それはオーガキングの魂をも感電させるほどの雷だった。京也はハクレイに乗ったまま、オーガキングから離れていく。
「グオオオオ!」
オーガキングは雷系最上級魔法を受けても倒れず、京也達がいる方向を向いて、闘志をむき出しにして咆哮する。
「サンダーブレイズの一撃に耐えたか。それにしても神速の腕輪の効果が発動しなかったな」
京也が装備している神速の腕輪は一撃で敵を倒せなかった場合、瞬時に再攻撃できる能力を持っている。だがその再攻撃が発動する前に高速で対象から離れてしまったので、その効果が発動しなかったのである。
「グオアアアアア!」
オーガキングが雄たけびを上げる。それ聞いたフルーレ国軍の兵士や冒険者達は震えあがっている。
(アイツは強敵のようだ。慣れない馬上での戦いより、地上で戦った方がいいか)
そう考え、京也はハクレイから降りる。
「みんなは奴から少し離れててくれ。俺が奴と戦う」
「一人で大丈夫なのかニャ?」
「邪神ベルをひとりで倒したキョウヤなら大丈夫でしょ」
「そうですね。私達は戦いの邪魔にならないようにしましょう」
「わかったニャ」
ハクレイ達は京也から離れて周りに敵がいない場所へ移動する。
「さあ、ここからは一対一の戦いだ。お前もそれを望んでいたんだろ」
「グオオオオオオ!」
オーガキングが咆哮をあげると全身が赤いオーラのようなものに包まれ、オーガキングの攻撃力が上昇した。これはパワーブーストというスキルの効果だった。
「奴から凄い力を感じる。ならこっちは……加速!」
一方、京也は加速スキルを使い、速さを強化する。
「はっ!」
京也は超高速の動きでオーガキングに接近する。それに対しオーガキングは京也に向かって全力で鋼鉄の棍棒を振り回す。その攻撃を京也は素早い動きで避け、同時にラグナヴァリスの剣身に雷をまとわせる。
「雷迅剣!」
次回 決着 に続く




