第三十二話 挟み撃ち
「風塵乱舞斬!」
エリス将軍がゼウス共和国軍の兵士達を狙って風の魔法剣を放つ。魔力で作られた複数の風のやいばが兵士達に次々と襲いかかる。
「ぐあああ!」
「ギャアアアアア!」
「あ、あいつは黄金の嵐だ!」
「フルーレ国の将軍か!」
黄金の鎧を身に着けたエリス将軍の風の魔法剣を見た兵士達が、その姿に恐怖し戦意を失い森の中を逃げまどう。
「逃げろ!」
「うわわわわわ!」
「突撃!」
「おお!」
エリス将軍と精鋭兵百人がゼウス共和国軍に突撃していく。彼女達はその圧倒的な力で、次々とゼウス共和国軍の兵士達を蹴散らしていく。
エリス将軍と共にいる精鋭兵百人は、フルーレ国全軍から選ばれた強者である。彼等は、ゼウス共和国軍のゼウス騎士団に引けを取らないほどの戦闘能力を持っていた。
「あれが我が国の黄金の嵐か! 俺達も負けてられないぞ」
「おお!」
エリス将軍の活躍を見た冒険者部隊も、剣技や魔法を使いながらゼウス共和国軍の兵士達に向かっていく。
一方のゼウス共和国軍は、まさか森の中での戦闘になるとは考えていなかったので、組織的な動きができず混乱状態だった。
「うーん。木が邪魔で、戦いの様子がよく見えないな」
「森なんだから当たり前でしょ」
森の上空でハクレイに乗って移動している京也達が、両軍の戦いを見ている。
「それでどうしますか? どこかに降りますか?」
「そうだな……」
京也は着地する場所を探す。
「両軍の中心に降りたら、敵味方入り乱れる危険な戦いになるから、敵軍の後方辺りに降りたほうがいいな」
「エリス将軍の所に行かないのかニャ?」
「俺達は敵の後方から攻撃して、エリス将軍と挟み撃ちするというのはどうだ?」
「敵がやろうとしてた挟み撃ちを私達がするのね。それはいい考えかもね」
「だろ。よし、ハクレイ。あの辺りに降りてくれ」
「了解」
京也はゼウス共和国軍の後方の兵士達を狙うため、目的の場所を推測して、それをハクレイに指示する。
その場所に着地すると、京也はハクレイから降りる。
「よし、俺が前衛で敵と戦う。ハクレイとニャオウとアンナは、俺の後からついてきてくれ。俺の背後に敵が回り込まないように援護を頼む」
「それだと、キョウヤが一人でほとんどの敵と戦うことになるんじゃないの?」
「問題ない。いざという時は、加速スキルを使ってお前達と合流して空に逃げるからな」
「わかりました。いつでも空を走れるようにしておきます」
「逃げ道を考えておくなんて、準備がいいわね」
「ニャオウはいつでも魔法を放てるように準備しておくニャ」
「ああ、頼んだぞ」
京也は腰のラグナヴァリスを抜いて、全身から膨大な魔力を放出してそれを雷に変換し、雷系最上級魔法を発動する。
「サンダーブレイズ!」
京也はラグナヴァリスの剣身に、自由に操れる特殊な雷をまとわせる。
「それって最上級魔法よね。普通の人間相手に使うの?」
「まあ、色々事情があるんだよ」
(この雷を使えば、直接、敵を斬らないで済むからな)
京也はまだ人を剣で斬るのに抵抗があった。
「よし、行くぞ!」
京也は森にいる敵兵に向かって走っていく。
「うりゃ!」
「ギャアアアアア!」
「ガアアアアア!」
京也がラグナヴァリスを一振りすると、兵士達数人に剣身の雷が飛んで、それが命中した兵士達が感電して倒れていく。
(雷魔法をいちいち使うより、こっちのほうが速くていい)
「て、敵だー!」
「後ろから敵が来たぞ!」
「後ろからだと!」
ゼウス共和国軍は、まさか京也ひとりで攻めてくるとは思わなかったので、後方から敵軍が来て挟撃されたと勘違いしてしまう。
「うおりゃああ!」
「ギャーーーッ!」
「ぐああああ!」
京也は森の中で敵兵を見つけては突撃し、雷を放って感電させて倒していく。
「もう駄目だ!」
「うわわわわわ!」
「俺は逃げるぞ!」
「おい! 待て!」
挟撃されたと考えたゼウス共和国軍の後方にいた兵士達は、混乱し逃げ出す者も現れた。敵兵の中には木の陰に隠れて京也に襲い掛かろうとした者達もいたが、気配察知のスキルを持っている京也に奇襲は成功せず、彼等は返り討ちにあった。
数十分後、統制の取れてないゼウス共和国軍は、何もできずに壊滅した。
「エリス将軍!」
「キョウヤさん」
戦う敵兵がいなくなり、京也達はエリス将軍と合流した。京也は、森の中で自分達以外で一番強い魔力の持ち主を探して、エリス将軍を見つけたのである。
「無事でしたか。よかったです」
「エリス将軍も無事みたいで安心しました」
「それで正面の敵軍は?」
「エナジードレインと攻撃魔法で、大半を倒せました。生き残った者は逃げていきました」
「大半を倒した?」
一万人はいたゼウス共和国軍を京也達だけで倒したと聞いて、エリス将軍は驚く。
「あっ、その顔は信じてないわね!」
「い、いえ。驚いてはいますが、疑ってはいません」
アンナの言葉にエリス将軍はそう答える。京也達とエリス将軍がそんな会話をしていると、数人の伝令兵が走ってくる。
「エリス将軍、敵軍はほぼ壊滅しました。我が軍の勝利です」
「ご苦労様です。では全軍、森から出て、こちらの被害の確認と怪我人の治療をしましょう」
「はっ」
伝令兵達は各部隊へエリス将軍の言葉を伝えに行く。
「私達も森を出ましょう」
「はい」
「私は馬を止めた場所に戻ってから行きます」
「では俺達は先に森を出てますね」
京也達はエリス将軍と別れ、森の中を歩いていく。
「よし、さっきの成果を確認をするか」
京也はスキル画面を開く。
雷迅剣
剣に雷をまとわせて攻撃する魔法剣
消費MP 25
望遠眼
遮蔽物のない距離の離れた場所を拡大して見ることができるスキル
消費MP 10
鉄壁
使用者の防御力と物理障壁の強度を上昇させる
常時発動スキル オンオフ設定可能
「雷迅剣! これはサンダーブレイズのかわりに使えるかもしれない。後で性能を試してみるか」
「あっ! やった! 私、レベルが91になった!」
アンナは自分のステータス画面を見てレベルを確認する。
「ニャオウは149になったニャ!」
「私は114です」
「皆レベルが上がったか。俺のレベルは……」
京也が自分のステータス画面を確認する。
キョウヤ 16歳 人間
称号
竜殺し 魔物使い 邪神殺し
レベル 187
HP 31150/31150
MP 2954/3287
攻撃力 2824
防御力 2747
魔力 2943
速さ 2924
「187だな」
「凄いニャ。エナジードレインって、こんなにレベルが上がるのかニャ!」
「まあ、たくさんの人から経験値を奪ったからな。奪った経験値が仲間にも分配されるようだし、ホント凄いスキルだよ」
京也達は全員がレベルが上がったことに喜びながら、森を出てまたエリス将軍と合流する。
(キョウヤさん達は、とてつもない力を持っています。まるでカーナさんの再来のようです。これは王族が黙ってるはずがありませんね)
カーナの存在がフルーレ国の王族に知られた時、何としても味方に引き入れるため、王子との婚姻や貴族との養子縁組など色々な手を使っていた。それで婚約者のいない第二王女セレナが、京也のことを狙って動くかもしれないとエリス将軍は推測した。
ちなみにカーナは、婚姻や養子縁組の勧誘はすべて断っていた。
次回 魔獣軍団戦 に続く




