第〇〇三話 モンスター狩り
京也は村の入り口まで歩いてきた。
「何だ。もう村を出るのか?」
「ちょっとモンスターを狩りにな」
「それは助かる。モンスターを狩ってくれれば、それだけ村が安全になるからな」
「それでバンデッドウルフってどの辺りに出現するか知ってるか?」
「それなら村の西の森付近だな」
「わかった。では行ってくる」
京也は村の西の森へ到着後、周りを警戒しながら歩いていると、前方にいる狼のモンスターを発見する。その狼は体長一メートル程度の鋭い牙をもったモンスターだった。
「見つけた。こいつか」
「ワオーーン!」
狼の魔物がいきなり京也に襲い掛かった。
「危なっ」
京也はとっさに身をかわしてその攻撃を回避する。それは速さ999の能力のおかげだった。彼は霧の鎧を装備してるので物理攻撃を無効にできるのだが、この時はそのことを忘れていた。
京也は腰のラグナヴァリスを慌てて抜いて構える。
「ワオーン!」
バンデッドウルフは再び京也を狙って飛びかかる。
「はっ!」
京也はその攻撃から身をかわしつつ、剣を水平に振るいバンデッドウルフの体を切り裂いた。
「グオーーーン!」
バンデッドウルフは断末魔の叫びをあげながら、その一撃で地面に倒れた。
「よし、上手く立ち回れた」
今日まで実戦経験のなかった京也だが、モンスターとの戦闘を難なくこなしていた。
「こいつも収納しておこう」
京也はアイテム画面を開きバンデッドウルフを収納して解体する。するとアイテム画面に
バンデッドウルフの牙×2
バンデッドウルフの毛皮×1
バンデッドウルフの肉×1
と表示されていた。
「スキルはどうかな?」
アイテム画面からスキル画面に移動してみたが、そこには跳躍のスキルしか表示されてなかった。
「何も入手してないな。スキルドロップシステムがゲームと同じなら一定確率で入手だから、数をこなしてみるか」
その後、京也は西の森でオニウサギやバンデッドウルフを狩り続けた。その甲斐あって六匹目のバンデッドウルフを倒した時、新たなスキルを入手した。
加速
移動スピードや攻撃スピードが上昇する
消費MP 12
「加速か。これはゲームにあった。五ターンの間、速さを上げるスキルだったかな。使ってみよう」
京也はまた体の力を抜き、手加減してスキルの名前を叫ぶ。
「加速!」
そう言いながら京也が走り出すと超高速で移動できるようになっていた。京也の全身が魔力をまとっていて、その魔力のおかげで速い動きが可能になっていた。
「うおっ! 危なっ!」
加速スキルのあまりの速さに京也は動きが制御ができず、森の木にぶつかりそうになる。
「やはりこれも全力で使わないほうがいいな。それに森の中や狭い場所では使いづらい」
京也は身にまとう魔力を消して加速スキルを解除する。
「バンデッドウルフの素材も結構集まったし村へ帰るか」
目的を達成した京也は、西の森を抜けようと歩いて行く。すると目の前に全身鎧と剣を装備したモンスターが現れた。
「あれは……リビングアーマーか」
リビングアーマーとは鎧に死んだ人の魂が宿り、勝手に動く闇系のモンスターである。その鎧の中身は何もなく全身が闇の力で満ちている。
「グオオオオー」
リビングアーマーが剣を振り上げながら京也に襲い掛かる。
「はっ!」
京也は、リビングアーマーに突撃して、攻撃される前に先に剣を振るい、鎧を真っ二つに切り裂いた。光の魔法剣であるラグナヴァリスは、闇系のモンスターに大ダメージを与えることができる。よってリビングアーマーを一撃で倒すことに成功した。地面にはリビングアーマーの剣と鎧が散乱している。
「壊しちゃったけど、これは売れるのか」
地面に落ちた切り裂かれた鎧と剣を京也は回収してアイテム画面で確認する。
リビングアーマーの魔石×1
鋼鉄の剣×1
壊れた鋼鉄の鎧×1
「おっ、魔石か。強いモンスターは魔石がドロップするんだった」
魔石とはモンスターがこの世界で活動するために必要な物で、魔法の力を秘めている石である。魔石は魔法の道具の動力になるので、強力な魔力を秘めた魔石は高額で取引されている。
ちなみに魔石は、弱いモンスターからはドロップしない。弱いモンスターの魔石は秘めた魔力があまりに小さく、そのモンスターが死んだら魔石の魔力も消滅してしまうからである。
「ん?」
ついでにスキル画面を見てみると新たなスキルを入手していた。
オーラブレード
剣身に魔力をまとわせて攻撃する剣技
消費MP 15
「ああ、ゲームにもあった剣の技だな。剣に魔力をまとわせて攻撃力の二倍のダメージを与えるスキルだ。これは当たりスキルじゃないか」
京也はさっそく新たなスキルを試してみる。
「オーラブレード!」
ラグナヴァリスの剣身が強力な魔力で包まれる。それを振るって素振りしてみた。
「おお! こいつは使えそうだ。強敵と遭遇したら使ってみよう」
ラグナヴァリスは光の魔法剣なので、元々光の魔力を剣身にまとわせることができるのだが、このスキルによってその魔力が強化され、攻撃力が上がるのである。
京也は新たな剣技スキルを入手し、西の森を後にした。
場面は村の道具屋に変わる。そこで西の森から帰ってきた京也が、森で狩ったモンスターの素材を売っていた。
「これはリビングアーマーの装備かい?」
「ああ、真っ二つにしたから売れないかな?」
「いや、鉄は再利用できるから買い取れるよ。そうだね……全部で420ゴールドでどうだい?」
「それで頼む」
京也は金貨四枚と銀貨二枚を受け取る。
(金貨が100ゴールド、銀貨が10ゴールド、銅貨が1ゴールドか。これならわかりやすい)
金貨のコインは純金ではなく、金の純度が低い金属で作られている。銀貨も銅貨も同様だった。
「お客さん、冒険者ギルドに登録したんだろ。ならギルドに行って討伐報酬とポイントをもらったかい?」
「いや、まだだ。この後、行ってみるよ。その前に生活魔法の魔法書を買いたいんだが」
「はいよ。三種類全部買うのかい?」
「ああ」
「なら300ゴールドね」
京也は300ゴールド渡し、点火と結界と光球の魔法書を手に入れた。
(これでスキルがまた増える……ん? そういえばこれはどうやって使うんだ? 不用意に開いていいのか?)
京也は手に取った生活魔法の魔法書をじっと見ている。レジェンドワールドにも魔法書があるが、ゲームではただアイテム画面で決定ボタンを押せば魔法を習得できた。だからこの世界での使い方がわからなかった。
「お兄さん、もしかして魔法書使うの初めてかい?」
「ん? ま、まあ、そうなるかな」
「何も難しいことないよ。ただ魔法書を開けばいいだけだよ」
(開くだけ?)
京也は光球の魔法書を開いてみる。すると魔法書から魔力があふれ、彼の体に吸い込まれていく。魔法書は魔力を持つ者は開くだけでその魔法を習得できるのである。
「お、おお!」
「ほら、簡単だろ。もう光球の魔法が使えるはずだよ」
「ためしてみるか。光球!」
京也が光球の生活魔法を発動する。すると頭上に光の玉のようなものが出現し光を放っている。京也は光球を発動したまま店の中を歩いてみる。すると京也と一緒に動いてついてきた。
「なるほど。暗いダンジョンとか夜道とかでも、これで歩けるのか」
「便利だろう。お兄さん、いい買い物したよ」
(残りの魔法を試すのは宿屋に行ってからにするか)
京也は残りの魔法書をアイテム画面を開いて収納する。
「あと冒険者の心得みたいな本はあるか?」
「ああ、ちょっと待ってな」
道具屋の店員は一冊の本を京也の前に取り出す。
「この本には、この世界の地図や、戦いに役立つスキルの解説が載ってるよ。こいつは10ゴールドだ」
「では、それももらおう」
「はいよ」
京也は10ゴールドを渡し、冒険者の心得を買う。
「では、俺はこれで」
「またどうぞ」
京也は道具屋を出て冒険者ギルドの出張所に向かい討伐報酬200ゴールドとランクアップポイントをもらう。その後、村にひとつしかない宿屋に向かう。その宿屋に入ると中年の男とその娘がカウンターにいた。
次回 水の街セレスへ に続く




