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神域の元英雄と終焉戦争  作者: 暁 虎鉄
金色の聖女
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プロローグ

初めまして、処女作です。拙いところがあると思いますがよろしくお願いします。

遥か昔、一部の傲慢な神々が自らの娯楽のために世界を創り出し、『箱庭』と名付けた。彼らはその『箱庭』の中に人を創造し、その後、人と敵対する魔物も創造した。人の中には稀に英雄と呼ばれる存在が生まれたが彼らは例外なく神々の娯楽のために強敵と戦うこととなり、その命を落としていった。

だが、神々の娯楽のために強敵と戦い、仲間を失った英雄によって傲慢な神々は滅ぼされ、『箱庭』も破壊された。

その英雄は神々に『神域の英雄』と呼ばれ、恐れられた。



「あのクソ神どもが死んだせいで各世界で暴れてた邪神や悪神どもは倒したし、漸くやることが終わった」


白い空間が永遠と続く世界の狭間に存在する、空中に浮いている小島の上に彼は立っていた。黒い外套を着ていて、フードを深く被っているため口元以外顔はよく見えないがその口元からは若い印象を受ける。


「ああ、やっと俺もお前らのところに行けそうだ……まあ、行ったところで合わせる顔がないだろうがな」


そう虚空に話し掛ける彼はどこか哀しそうな雰囲気をしていたが、すぐにその雰囲気はなくなり、辺りを見回した。


「それにしても、この島も小さくなったもんだな」

『そうじゃの、知らないものが見れば元は『箱庭』にあった大陸だとは信じまい』

「まあ、そうだろうな」


彼の頭の中に直接響いてくる女性のものと思われる高い声が独り言に答える。彼が驚かないのは、その発生源が自分の腰に差してある刀だと知っており、尚且つ日常的なことで馴れているからだ。

刀の声に頷きつつ、彼はこの島のかつての姿を思い描く。かつては破壊された『箱庭』に存在していた大陸の中でも1、2位を争う大きさがあり、険しい山脈や広大な平原、砂漠、その他にも多くの秘境や魔境が存在し、人や魔物をはじめとした様々な動植物存在した。だが、この世界の狭間に放り出されてから徐々に端から崩れていき、かつての面影はなかった。

他にも多くの世界の欠片、陸地があったが、見る限りはこの島以外には存在しない。おそらく、既に消滅してしまったのだろう。


「流石に『箱庭』を壊すのはやり過ぎたか?」

『いや、そんなことはあるまい。あれは元々、英雄が最終的に戦いで死ぬようにプログラミングされたシステムが使用されていた。あれが最善じゃ。それに生き残っていた者たちは全て別の世界に移したんじゃから、大丈夫じゃろ……』

「……そんなものか。ところで、『ぷろぐらみんぐ』と『しすてむ』って何だ?」


意味のわからない謎の言葉に彼は首を傾げるが、『気にせんで良い』と言われてしまい、これ以上聞いても答えないことは長年の付き合いで分かっているので大人しく諦めることにした。


『まあ、そんなことより、主殿よ。本当にあれをやるのか?もう少し考えてみる気はないのかのぅ……?』

「いや、すまんがないな」


頭の中に響いてくる声がどこか心配そうな声音に変わる。刀の言う『あれ』について彼は即座に理解する。そもそも、彼がこの島に来た理由はその『あれ』を実行するためなのだから。


「もう特にはやることもないんだ。……そろそろ潮時だろう」

『主殿はあれほどの偉業をなしたのだぞ?あとはのんびりと人生を楽しんでも、誰も文句は言えまい。言うような輩がいれば、儂が地獄を見せてやろうぞ!』

「地獄か、大分過激だな。まあ、世界を滅ぼした俺が言えた話じゃないな……。俺は人生に満足してる。無謀な目的を時間がかかったけど達成できた。それにもう数万年は生きてるんだ文句の付けようがないだろう?」


何とか思い止まらせようとする刀の過激な言葉には彼は苦笑する。


『主殿は基本的に戦ってしかおらぬじゃろうて………。それで長生きしたからといって、人生に満足したというのはちと、主殿の常識を疑うぞ?』

「酷い言われようだな……。人には人それぞれの価値観があるだろ」

『そうじゃの、そして、その中でも奇抜なものが非常識と呼ばれるのじゃろ』

「ぐっ……。」


彼はボロクソに言われ反論したが、一瞬で一刀両断にされてしまう。結果、本来はなかったはずの追撃まで喰らい、完全に論破され、沈黙した。


『まあ、良い。ここでどんなに儂が騒いだところで主殿が意思を変えることはないじゃろう』

「ああ、ありがとう。……じゃあ、投げるぞ。『は?』はあっ!」


渋々、といった様子の声音でを止めることを諦めた刀に感謝して------彼は、刀を投げた。全力で全身の筋肉という筋肉を利用して、それまでの経験から導きだした最適なフォームと手を離すタイミングで、投げた。その投擲の速度は彼の人生の集大成の一つと言えるものであろう。ある意味技術の無駄遣いだった。


『なにィィィィイイイイイイイイイイ!!!』

「ふぅ、巻き込むわけにはいかないからな。さて、始めるか」


刀から発せられる大音量の驚愕の叫びが頭の中に聞こえているはずだが、彼はやりきった非常に清々しい表情をしていた。これから行うことに長年共に戦った相棒を巻き込むつもりは毛頭ない。


「世界よ、あらゆる存在たちに終焉の訪れを告げよ、神の傲慢は打ち砕かれ、人は逃げ惑い逃れきれず死に、世界に蔓延る黒き邪悪は白よりも白い純白に塗り潰される、全ての善行、悪行、功罪は等しく無へと還る、終焉は終息し、終焉去りし世界は虚無となる、されど虚無は虚無故に長く留まることはできず、虚無もまた消え去るは道理なり、残りしものなど在る訳もなし---------」


彼の口からは淡々と詠唱が紡がれ、その詠唱に呼応して青く光輝くいくつもの魔方陣が彼を中心に現れ、交差する。遠くから見れば巨大な球体に見えるほどの密度になったそれは、さらに強く輝いていく。


「“無常なる終焉(エンド・カタストロフ)”」


発動の鍵となる言葉が紡がれた瞬間、轟音とともに発せられた光は彼と小島を包み込むまで拡がると、今度は時間を巻き戻すかのように縮んでいき消えたが、そこには小島はなく、彼の姿もなかった。まるで最初から何もなかったかのような静寂が漂うだけだった。


『………すまぬ、すまぬ。……主殿よ、儂にはどうしても許容出来なかったのじゃ……。どの様な存在も成し遂げることの出来なかった偉業を………あれほどの偉業をなした主殿があのまま死ぬなど、あまりにも報われぬ。どうか、主殿の来世に幸あらんことを………』


主の死を見届けた刀の謝罪と願いの言葉は誰にも伝わることなく、静寂の中に溶けて消えていった。


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