招かれざる客は、当然やって来る。デカイ面して。
大王国に、500年ぶりとなる女王が誕生することになった。大王国には、権力を手にしている4公と呼ばれる大貴族らがおり、全ての家が即位に賛同。国民の人気も高い。何より、大王国において、最も力を持つとされる女性を後ろ盾とし、その寵愛を受けている。
その次期女王となる少女は、もちろん、自身の能力も高く、文武両道のみならず、美しさも持ち合わせた傑物中の傑物である。
その少女は、即位の式典やお披露目のパーティを一週間後に控え、何をしているのかと言えば
「ほえー。母様と私が実の親子ではないかだってさー。」
椅子の上に、胡座をかき、鼻を掘りながら、タブロイド紙を見ていた。間の抜けた声に、女王になろうとしている者の片鱗は一切感じられない。
「鼻掘るのやめなさい。女の子なんだから。」
少女の真向かいに座った女性が、呆れ顔で注意する。
少女に、母様と呼ばれるには、随分若作りで、何歳も年の離れていない姉ように見える。
「男だったら、いいわけ?」
「多少はね。」
「この男女平等の世において、古いわ、その考え。」
「古風な女なの、私は。」
「古風ね…。」
少女は、新聞から、目の前の女性に目を移す。
背筋を伸ばし、姿勢に一切の乱れがない。白銀の髪を真っ直ぐにのばし、最高級の絹糸のように腰まで流れている。顔造形は、整い過ぎるが故に、やや冷たさを感じるものの、誰が評しても美しいという他ない。
「古風なんて枠組に収まらないと思うけど。」
「あら、古風をあなたは、どう定義しているのかしら。」
「1世紀前でギリギリかな。ギリギリアウトかもだけど。」
「つい最近のことじゃない。」
「この国に、その時代の生き残りは二桁もいないわ。」