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風の巻

「う……、嘘だろ?とてもじゃないが信じられん……」

「でも、言っていることはあの時の出来事と合ってますよ……」

「そういや、あの時こいつは食いモンに当たって死んじまったのに、死体が消えち

まったんだよな?」

「ふむ、それにこんなに流暢に喋ることができるオークなんて……」


 ようやく落ち着いた皆を前に、俺は前回からの経緯を説明していた。


 コミュニティの皆は半信半疑だが、それでもだんだんと、俺の言っていることが

正しいという流れになってきた。

 あと一息だ。何か決定的な証拠があればいいのだが……。


「いや、俺は間違いないと信じている」


 その時、オッさんから力強い言葉が発せられた。


 おお!さすがオッさん。やっぱ頼りになるリーダーだぜ!


「こいつの顔を良く見てみな」


 言われた皆が、恐る恐る俺に近付き、顔を覗き込む。


「あ……!」

「な!間違いないだろ?」


 何だ?俺の顔にいったい何が付いてるというんだ?


「オークのいかつさに気を取られていたが、力を抜いた顔はあいつのまんまじゃな

いか」

「確かに、あいつに違いない!」

「なんだ。ビビッて気付かなかっただけで、良く見りゃお前じゃないか」


 その場の空気が弛緩し、笑い声がこだまする。


 …………。


 ありがとう……。


 ちょっと暴れだしそうになる自分を抑える。


 何だよ。ちょい豚さん顔のブサメンってことは自覚してたけど、ガチで異世界の

豚さん顔だったのかよ。


 いや、彼らに悪気はないのはわかっている。俺にとって、前回の転生時に大恩の

ある人たちだし、それに、今後の俺の計画のためには彼らの力が必要だ。


 とりあえず気持ちを落ち着かせ、本題に入ることにした。




「なっ……!」

「ば、馬鹿な!何てことを……」

「無理に決まっているだろう!」

 

 口々に反対の声が上がる中、リーダーであるオッさんが口を開く。


「ダメだ!俺達は自分がどうやってこの世に生を受けたか知っている。自分の父が

何をしたのかも……。これ以上人間や獣人に迷惑をかけるわけにはいかん」


 オッさんの声に、皆がうなずく。


 しかし、俺も諦めるわけにはいかない。それに、話を聞いて瞳の中に何やら不穏

なモノを醸しだした者もいるのを、俺は見逃さなかった。


 いや、実際には俺にそんな眼力はないから、そんな気がしただけなんだけどね。


 しかし、俺とて無駄に社畜人生を生き抜いてきたわけではない。


 俺は知っている。人をつき動かすのは、義理でも人情でもやりがいでもない。欲

望だ!

 具体的には、彼らの欲望を刺激し、満たしてやることだ。一般的には、衣食住を

得るための金や、今の境遇から抜け出すための地位だろう。


 しかし、ここまで質素な生活に慣れきった彼らが、急にそんなものを欲しがると

は思わない。

 そう、俺は知っている。一部の者たちが、夜な夜なコミュニティから抜け出し、

物陰でこっそりと自家発電していることを。エレクチオンである。エレクトリック

ファイヤーだ。

 俺が前回食中毒で死んだのは、その手で触った食べ物を出したからではないかと

密かに疑っているのだが……。


 まあ、ようするに彼らを堕とすのに一番手っ取り早い方法は……。


『女』


 である。


 おそらくは性に免疫の無い、童貞野郎どもをその気にさせればうまく行くはずで

ある。


「なるほど。オッさんの理念は素晴らしいと思います。しかし……、その理念に皆

を付き合わせ、一生女も知らず、子孫も作れない人生を強要する気ですか?」

「う……、それは……、すまないとは思っている。しかし、我々の父がしたことを

思えば……」


 女という単語を出したとたん、幾人かの目つきが変わったのを俺は見逃さなかっ

た。

 

 イケる!あと一押しだ。


「どうやら、オッさんもゴブりんさんも、皆さんも何か勘違いされているようです

ね」

「どういうことだ?」


 俺は、偶然にもエルフに渡さずに、スマホを持っていた幸運に感謝した。

 

 異世界のテクノロジーに驚く皆の前でそれを操作し、俺の秘蔵の画像フォルダを

開く。


「なっ……!!」


 そこには、モンスター達が美少女を蹂躙する画像がぎっしりと収められていた。


 俺の秘蔵の、異○姦二次エロ画像である。


 皆は我を忘れたかのように、顔が潰れるんじゃないかと言うくらいくっつきなが

らスマホの小さな画面を見つめている。


 目を見開きヨダレを垂らし、中には股間の衣類に染みを作っている者もいる。


 気の早い者などは、この場を離れて物陰に向かおうとしている。

 

 だが、ここで賢者モードになってもらっては困る。ここぞとばかりに俺はたたみ

かける。


「どうです?こんなことをしてみたくありませんか?」

「ば……、馬鹿な!こんなことは許されることではない!こんなことをしてしまっ

たら、我々は憎むべき父たちと同じだ!」


 それまで食い入るように画面を見つめていたオッさんが、ハッと我に返ったよう

に言った。

 もちろん、その言葉は想定の範囲内だ。


 俺はここで、切り札を出す。


「オッさん。あなたの高潔な志は素晴らしいものです。もちろん俺だって、嫌がる

女性に無理にこのようなことをするのはいけないことだと思います。しかし……、

相手がそれを望んでいるのだとしたら?」

「な!……に?どういうことだ!?」

「もう一度、その画像を良く見てください。特に女性の表情を」


 そう。俺は二次エロ画像を見せることで、彼らの欲望を引き出すつもりであった

が、意図的にもう一つの罠を張り巡らせていた。


「こっ、こんな不快なものを見せられても……」


 言いながらも、オッさんの股間はテントを張っている。うん、俺には及ばないま

でも、結構デカいぞ。

 そして嫌々見るような素振りを見せながら、しばらく画面をみていたが、


「これは……!」


 どうやら、俺の言わんとすることに気付いたようだ。


「よっ、喜んでいる!?」


 そう、俺は異○姦モノの中でも、敢えて『ア○顔』『完堕ち』の画像を選んで見

せたのだ。

 ○ヘ顔を見せることで、強○ではなく和○と見せるために。


「そうです。女性というものは、口では嫌がりながらも、実はモンスターの持つ、

巨大な男性器を待ち望んでいるのです。人間の小さなモノでは味わえない快楽を得

るために」


 ゴクリと、唾を飲む音が聞こえる。


「そうそう。俺のいた世界では、こんな諺があります。特に女性に対して使うので

すが、『嫌よ嫌よも好きのうち』とね」


 静かだったコミュニティが、ザワザワとしだす。


 俺は、ここぞとばかりにたたみかける。


「タウリンさん!」

「はっ、はい」


 俺は、ハーフミノタウロスのタウリンさんの耳元でそっと囁く。


「この中で一番巨大で立派なモノを持つタウリンさんに貫かれた女性は、いったい

どんな喜びの声を上げるのでしょうねぇ?」

「ぼ、僕が……、女の人を……、よっ、喜ばせる……?」

「そうです。いったいどれだけの女の人が、あなたの立派なモノを待ちわびている

のでしょう」


 タウリンは言葉を無くし、スマホの画像を見つめている。俺はその目に宿る欲望

の炎(多分)を見逃さなかった。

 ふっ。堕ちたな!


「さあ、この世界の女の人は、人間なんかのさびしん棒で欲求不満になっているは

ずです。皆さんの暴れん棒で救ってあげようじゃありませんか!」


 俺はまるで、新興宗教の教祖のように語り掛ける。


 強いて言うなら『暴れん棒教』だろうか。


 ヤバい。これは結構快感かもしれない。


 そんな俺の興奮が伝わったのか、皆の目が熱を帯びている。


「や、やるぞ!お、俺達は悪いことをするんじゃない!人間や獣人の貧相なモノし

か知らない、本当の快楽を知らない女の子を救い出すんだ!俺達の父親は正しかっ

たんだ!!」


『ウォォォォォォォォォォォォォ!! 』


 夜空に、ダンボールコミュニティの住人達の雄叫びがこだまする。


 それは、俺の軍団が完成した瞬間だった。

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