人の巻
「すっご~い。信じられないくらい大っきい!」
「あ~、ずる~い。その暴れん棒はあたしのなんだからぁ!」
「いや、待て、その男は私に暴れん棒を入れてくれると言ったのだぞ!」
「ち、ちがうもん!お兄ちゃんは、お兄ちゃんの、お……、暴れん棒はあたしだけ
のものだもん!」
異世界に転生した俺は、早速女の子に囲まれていた。
元の世界で言えば、まだ女子高生くらいの、金髪をツインテールに結った美少女
と、こちらも10代くらいの、栗色の髪の頭頂部から生えた狐耳と、ふわふわした
尻尾が愛らしい獣人の少女。
二人と比べるとやや年上だが、それでも二十歳過ぎくらいの、和服に似た衣装を
身にまとい、長い黒髪をポニーテールのように束ねた凛々しい剣士風の女性。
それになんと、まだ小学生くらいのロ○ータもいるではないか!銀色のショート
カットに褐色の肌をし、つつくとプニプニという音がしそうな可愛らしい子だ。
こっちの犯罪基準年齢はわからないが、向こうから積極的に来てるし、周りの娘
たちも自然に受け入れてるってことは、全然OKなんじゃね!?
Oh!異世界万歳!!
俺は、そんな暴れん棒を取り合って争う彼女たちに、優しく声をかける。
「はっはっは。可愛い女の子たちが、俺のために争うなんてやめてくれ。心配しな
くても、俺の愛は皆に平等さ。二人や三人に愛を与えたくらいで、俺の暴れん棒は
萎れはしないさ!」
「や~ん、素敵ぃ!」
「だっ……、抱いてください!」
そんな俺のセリフに、目をハートマークにした彼女達は、一斉に俺にのしかかっ
て来る。
「はっはっは。望むところさ。みんな可愛がってあげるよ」
そして俺は、伝家の宝刀暴れん棒を抜き放ち……。
「ブヒッ、ブホホッ、ブフフフフ……」
自分の笑い声で目の覚めた俺は、気付くと見覚えのある森の中に倒れていた。
ああ、やっぱ夢だったか。
そりゃそうだよな。いきなりそんな都合のいい展開があるわきゃないし。
前回の件で懲りている俺は、冷静に自分の体をチェックする。
何だコレ?着ている服が所々破れるほど、妙にパッツンパッツンになっているん
だが……。
なんだか全体に、ずいぶんと太った気がする。
いや、冷静に見てみれば、確かにお腹は以前の俺よりもでっぷりとしており、脂
肪も多くついてはいるが、ずいぶんと筋肉質になっているのがわかる。
二の腕なんか曲げてみると、大きな力瘤が出来るほどだ。
それに肌の色も赤銅色で、体毛も薄くなっている。
え?俺、相撲取りにでも転生したの!?
間違いなく、金髪美少年に転生したのではないことだけはわかる。
じゃあ、チート魔法を手に入れたのかと、以前エルフに教わった魔法を使おうと
してみるが、うんともすんとも言わない。
一抹の不安を覚えるが、まあ、とりあえず腕力は有りそうだし……。
そして何より、まだ一番大事なことを確認していない。
俺はパツンパツンのズボンを何とか下ろして、下半身の暴れん棒を確認する。
「なっ!なんじゃあこりゃぁぁぁぁ!!」
興奮のあまり、松田○作ばりに叫んでしまった。
で、デカい!
そこには、以前の『さびしん棒』とは比べ物にならないくらい、巨大なモノが付
いていた。
それは、もはや暴れん棒将軍どころではない、黒船……、いや、戦艦、ドレッド
ノートと呼んでもいいものが付いている。
いや、やるじゃん神様!
まあ、実際にやったのは違う神様なんだろうけど、それでもこのスキルを選んだ
ことは見直したよ。
もはや俺は、当初の目的である金髪美少年に変身し、チート能力を身にまとい、
モテモテで萌え萌えでハーレム状態で俺TUEEEEE!で夜は暴れん棒を振りか
ざすという、当初の目的をすっかり忘れていた。
いや、それくらいチ○コがでかいって素晴らしいことだよ。
出来ることなら今すぐ銭湯に行って、前を隠さずに堂々と見せびらかしたいよ。
あんな、堂々と暖簾をくぐって行ける人に憧れてたんだよ。
まあ、この世界に銭湯があるのかはわからないが。
それから俺は、相変わらず時おり出てくる虫にビビりながらも森を彷徨い、見覚
えのある湖にたどり着いた。
そして、湖面に自分の顔を映してみる。
そこに映し出されたのは……、
「オークじゃん……」
まあ、なんとなくは想像してたんだけど、やはりそこに金髪美少年の姿はなかっ
た。
映っているのは、以前の俺とあまり変わらない顔つきの、豚さん顔。
完全にハーレムの夢が絶たれた瞬間だったが、まあ仕方ないか。
体つきを見た時点で諦めはついていたし、以前ほどのショックは無い。
まあ、オークならば人間の頃よりスペックは高いはずだし、力でのし上がってい
けるんじゃね?
早々にハーレムの夢は諦めたが、それでもオークならば戦闘力はあるはずだ。
こうなれば力で頂点に立ち、『くっ殺』と巨大戦艦で女の子をひれ伏せさせる
コースで行くしかないか。
とりあえず、前向きに考え直す。
しかし、自分にいったいどれほどの力があるのか……?
とりあえずはこの恵まれた肉体だ。やはり基本は肉弾戦を挑むのがカッコいいだ
ろう。
そしてやはり戦う以上は、厨二心を躍らせる必殺技っぽいものは必要だろう。
あれこれ考えてみるが、この丸太のような腕だ。やはり男なら一度は憧れる、
『アレ』がいいだろう。
そして、以前にこの場所で水棲スライムに襲われたことを思い出し、リベンジを
兼ねて腕試しを試みることにした。
湖のほとりに立ち、自分自身をエサにしたスライム釣りを開始する。
そして待つこと数分。湖面に映る豚さんの顔がグニャりと歪む。
来た!
湖面から浮かび上がり、大口を開けて襲い掛かろうとするスライムに、俺は丸太
のような左腕を振りかざし、必殺の豪腕『ウ○スタン・ラリアット』をぶち込む。
『スパァァァァァン!!』
俺の必殺の一撃は、プールの飛び込み授業で腹から着水した時のような衝撃と、
乾いた音を立てながらスライムを飛散させた。
「ウィィィィィィー!!」
俺は左腕を天に突き出し、勝利の雄たけびをあげる。頭の中に流れるBGMは、
もちろん『サン○イズ』だ。
そして俺は、後ろを向いてその場を去ろうとしたのだが……、
「ムッ……、ムゴゴゴォォォォ!?」
飛散したかに思えたスライムは、一瞬の後に逆再生のごとく体をくっつけた。
その際に、俺の上半身を丸呑みにしながら。
「フ、フガッ、ウゴゴッ」
ヤバイ、何このスライム?粘液にくるまれて息が出来ないし、俺の皮膚がちょっ
と溶け始めてるんだけど。
死んじゃう死んじゃう!マジでシャレにならねえよ!
必死に脱出を試みるが、何せ動かせるのは足くらいである。なんか体もどんどん
火傷っぽくなってくし、もうダメかもしれない。
ああ、死ぬ前に股間の巨大戦艦を使いたかった……。
酸欠でぼんやりする意識の中で、そんなことを考えていた時、
「あっ!あぢぢぢぢぢぢぃぃぃぃ!!」
衝撃とともに突然体が軽くなったかと思うと、今度は猛烈な熱さが体を襲った。
「な、なんじゃこりゃ!!痛でででで!!」
ふと気付けば、自分の体を飲み込んでいたはずのスライムはおらず、飲み込まれ
ていない下半身も含め火傷を負っている。
なんだ?これはいったいどういう状況なんだ?
「なんだ?水棲スライムに襲われている者がいるから助けてみれば……。オークと
はな。それにしてもオークがスライムごときに負けるとは、どんな状況なんだ?
まあいい。魔物ならば一緒に片付けるまでだ」
聞き覚えのある声に振り帰ると、そこには見覚えのあるオッパ……、ではなく、
人物が立っていた。
「エッ、エルフさぁぁぁぁぁん!」
背後に立っていたのは、前回の転生時にスライムに襲われていた時に助けてくれ
た、あのエルフであった。